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リアクション
第二章
二日目。
朝食の時間が終わり、皆が移動した後にも食堂に残る姿があった。
涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)とクレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)が並び、テーブルを挟んで向かいに座っているのが赤城 花音(あかぎ・かのん)とリュート・アコーディア(りゅーと・あこーでぃあ)。
四人のテーブルから少し離れた場所でくつろいでいるのが芦原 郁乃(あはら・いくの)と秋月 桃花(あきづき・とうか)、アンタル・アタテュルク(あんたる・あたてゅるく)だった。
「一、二、三……七人! 凄い、サポート班にこれだけ居れば、村の人たちに手伝ってもらわなくても、ボクたちだけでこなしていけそうだね」
笑顔を見せる花音に、そうですね、と郁乃が微笑みながら同意する。
二人のやりとりに食堂の雰囲気が和らぎ、皆の表情はくつろいだものになっていた。
「人数が多いので、私がまとめてもいいだろうか?」
涼介の提案に皆が同意する。それを確認した涼介がメモを取り出した。
「それじゃあ、まずは担当分けをする前に皆の得意な作業を聞いておきたい。専門的な知識があればベストだが、これがやりたいっていうのがあればどんどん言ってほしい。私とクレアは料理も出来るし、怪我人が出たら治療も可能だ」
「よろしくお願いします」
涼介の横に座るクレアが笑顔でお辞儀をする。
「えーと、ボクはお料理、リュート兄さんが力仕事を出来ます! それでね、豚汁作りたいんだけど……食材は村の人が提供してくれるものなんだっけ?」
「そうらしいね。豚肉があるかわからないけれど、たぶん大丈夫だと思うよ、花音。あ、僕は力仕事とは別に、食事の時に緑茶を淹れさせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか? ちゃんとした淹れ方で飲む緑茶はとても美味しいんで、是非とも皆さんに飲んでいただきたくて……」
涼介は花音とリュートに頷くと、郁乃たちの方へ顔を向けた。
「掃除洗濯はわたし、お料理は桃花、その他の雑用や力仕事はアンタルが出来るよ」
「お料理の他にも、裁縫や応急手当ぐらいでしたら桃花が対応いたします」
郁乃の説明に桃花が補足を付け加える。
「郁乃らは室内、俺は外のサポート全般って感じかな。力仕事は任せてくれ」
歯を見せて笑いながら、アンタルが自分の胸を叩く。
「よし、それじゃあまとめていこうか。……食事の支度は幸いにも料理を作れる人が多いので、朝食を私とクレアが、昼食を花音さん、夕食を桃花さんという具合に分担したい。そして、食後のお茶はリュートさん」
「オッケー、豚汁作れると良いなぁ!」
「承知しました。一汁三菜、ご用意いたします」
「緑茶なら任せてください」
花音と桃花、リュートの了承を確認し、涼介が言葉を続けていく。
「医療は主に私が担当しよう。忙しいときは桃花さんにも手伝ってもらうと思う。掃除と洗濯は郁乃さん、あなたに全部任せてしまって構わないかな。人手が足りない場合は皆が助っ人に回る感じでどうだろう」
「大丈夫! 掃除も洗濯も全力投入で頑張るよ!」
郁乃は腕まくりの真似をすると、はりきっているポーズをとった。
「あとはその他雑用だ。ほとんど力仕事なので、リュートさんとアンタルさんにお願いしたい。防衛班から要請がきたら、そっちも手伝ってもらう。……とりあえずこんな形でやってみよう」
皆が納得した顔で立ち上がり、それぞれの場所へと動き出した。
食堂の様子を眺めてアーミアは、題名サポート班のミーティング、と呟きながらその光景をカメラに収めていた。
第三章
長原 淳二(ながはら・じゅんじ)とミーナ・ナナティア(みーな・ななてぃあ)、騎沙良 詩穂(きさら・しほ)はオレンジを保管していた建物の前に立っていた。
籐で出来た籠が散乱し、幾度の襲撃で壁は破壊され、柱も折れている。
今にも倒壊してしまいそうな状態だ。
「村の防衛班は三人なんだね。リースちゃんの調査では、オレンジ目当てに襲ってきたモンスターは大きなイノシシらしいけど、抑え切れるかなあ」
半壊した建物をしげしげと眺める詩穂に、淳二が頷き、
「とりあえずは壊れた柵を作り直して、ほかの動物が紛れ込まないようにしましょう。このままだとモンスターや野生動物が入り放題ですからね」
と、村の東側で放置された柵の残骸を指し示す。
「それから改めて、対モンスター用の防衛柵を設置しようと思います」
「正面からぶつかったら、ぽーんと吹き飛ばされちゃよね。モンスターに学習能力があるとしたら、またここを目当てに襲ってくるだろうし……とするとこの辺りで塞き止める感じかな☆」
淳二の提案に、詩穂はとんとんとんと移動して地面を指差す。
「はい、迎撃するならそこがベストなんですよね。上手く止まってもらえると助かるんですが」
苦笑する淳二が伝えたいことをミーナは理解した。
「イノシシは突進力に優れていると聞きます。問題なのは……柵の強度ですよね?」
「そうなんですよミーナ。普通サイズのイノシシでも、勢いがついていたら大人二人ぐらいじゃ抑えきれません」
もちろんこれは膂力だけの話で、スキルを使えばまた別ですが……、と断りを入れる。
「ましてや今回の相手は生半可な大きさでは無いですからね。それなりにしっかりとしたものを作る必要があります」
淳二の説明にミーナは、巨大なイノシシがまた村にやってきたら、と想像する。
今まではイノシシの襲撃に対して、村人は抵抗せずに家屋へ避難していただけだったのだろう。邪魔をされなかったイノシシはオレンジを食べ続け、満足して帰っていったに違いない。
だが、今度は淳二や詩穂、そしてミーナが攻撃を行う。もしそれで仕留められなかったなら……怒ったイノシシが無差別に暴れまわり、どれぐらいの被害が村に及ぶか分からない。
厄介ですね、と崩壊寸前の保管庫を見ながらミーナは思う。村の中での戦闘は逆に被害を大きくしてしまうかもしれない。
横に目を向けると、詩穂も同じような表情で建物を眺めていた。
「村に入る前に迎撃はできませんか?」
そう提案してみるが、淳二はかぶりを振る。
「難しいでしょうね。村全体を堅強な柵で囲うには、時間も人数も足りません。イノシシが使っていたルートにだけ設置しても、迂回されて脆い部分から侵入されてしまうと思います」
そうなったら村で迎撃するのと同じ結果になるだろう。
淳二とミーナが二人唸っていると、詩穂がこちらを向いた。
「倒すんじゃなくて、なんとか捕まえて説得できないかな。イノシシだって生きるためにしかたなくやったんだと思うの☆ 例えば……ほらあそこ、使えると思うんだ♪」
詩穂が隣に建っている倉庫を指差す。
よく見ると指は地面の方を向いており、その先には地下室への扉があった。
「そうか、そういうことですか」
「そういうこと♪」
「あの、どういうことでしょうか?」
ミーナが一人分からず戸惑っている。
「えっとね、柵で食い止めるのが難しいなら、単純に罠を仕掛けちゃおうことなの☆ でも今から掘るのは大変だし時間もかかるから、地下室を改造して落とし穴を作ればいいんじゃないかなって。もし暴れても被害が抑えられると思うのね。狙い通りに落ちてくれたら、詩穂が恐れの歌や嫌悪の歌を聞かせて、二度と村に近寄らないようにしてもらうの。どうかな?」
詩穂の説明にミーナが納得し、淳二が賛同する。
「よし、それで行きましょう。村周りの壊れた柵の修理はサポート班にお願いして、俺たちは罠に使える地下室があるか聞きに行きましょう」
「はーい、頑張ろう☆」
保管倉庫を見学にきたアーミアが、オレンジの夢の跡、と呟きながらその光景をカメラに収めた。
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