イルミンスール魔法学校

リアクション

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まずは聞き込み、とセッカは言った。気勢を上げてセッカはアルバイトの面々を引き連れるが、まったく探偵らしからぬことに、聞き込みのアテは特にないという。今回はアルバイトのみんなの力を信じるから、などと澄ました顔で言ってのけるセッカ。そのセッカに視線を突き刺すアーティ。平たく言えば丸投げだった。
「これじゃアルバイトというより、依頼を受けるのと変わらないよ」
　レキはパートナーのチムチム・リー（ちむちむ・りー）を伴って聞き込みをしようとする。
「でも、聞き込みならチムチムのこの姿を活かすことができるアル」
　チムチムが軽く手を広げて自らの着ぐるみ姿を示す。確かにゆる族の着ぐるみ姿なら聞き込みの圧迫感を緩和することも期待できる。
「チムチムがんばるアル」
「そうだよね、あんな怪しい噂が真実なわけないし、それを明らかにするためにはたくさんの人から話を聞かないと。ボクもがんばらなきゃ」
　チムチムの言葉にレキが頷いた。早速聞き込みをする。
「すみませーん、少しお聞きしたいことがあるんです」
「お時間は取らせないアル」
　一人目の学生は女の子と着ぐるみの組み合わせに目を丸くしつつも応じてくれた。これは幸先がいい、と噂話のことを知っているか、ということから質問する。
「ああ、あの噂話のことか。弟と妹を探してるとかなんとかってやつ。それっぽいのには会ったことがあるよ」
　今度はレキとチムチムが目を丸くした。
　いきなりビンゴだった。こうなると幸先がいいと思うよりむしろ不気味である。
　学生の話が続いた。


　犯人を探すにも取っ掛かりがないことには話にならない。その取っ掛かりを見つけ出すために、清泉　北都（いずみ・ほくと）は最初の事件現場付近での聞き込みを行なっていた。
　そうはいっても不躾に事件のことを聞いても上手くいくとも思えない。そこでパートナーの白銀　昶（しろがね・あきら）に首輪をつけて狼形態に。こうすれば飼い犬の散歩をしている飼い主という体裁で、ちょっとした世間話を装っての聞き込みができると考えてのものだった。
「そうそう、この辺でね、弟と妹を探しているんですけど、って」
「若い男が尋ねてきた？」
　結果は上々。今もこうして同じように犬の散歩をしている若い女性から聞き出すことに成功していた。
「そう。それで知らないって答えたら『そうですか』って、すっごく丁寧に頭下げて行っちゃったから、かえってびっくりしちゃった。だから、そういえばあれって噂の通り魔っぽいなあ、って後から気付いたくらいだったよ」
　ふぅん、と北都は首を捻った。
　残念ながらそこから先は紛うことないただの世間話にシフトしてしまい、これ以上の情報は得られないと分かって、折を見て適当なところで切り上げた。
「ええ、そうですね。物騒ですから、お互い気をつけましょう。では」
　その場を離れた。狼に変身した昶は不満そうな顔を向けている。
「話が長ぇよ、北都」
「仕方ないじゃないか。あくまで世間話なんだから、情報を聞くだけじゃ不自然だからねぇ」
　北都は肩をすくめた。
「ま、その甲斐はあったよね」
　実のところ、今のような話を聞くのは三度目である。北都は人から、昶は動物から、昼間から聞き込みを開始して有力な情報を聞き出せたのが三度。この数字に昶は不満を表すが、北都はこの数字に満足している。
「上出来だよ、昶。十分だ。それに、調査をしているのは僕らだけじゃないしね」
　北都が目を向けた先にはやはり同じように聞き込みを行なっているリアトリス・ブルーウォーター（りあとりす・ぶるーうぉーたー）が狼となったスプリングロンド・ヨシュア（すぷりんぐろんど・よしゅあ）を引き連れている姿が見える。
「考えることはみんな同じだね」
　言って、情報交換するために彼らへと近づいていった。

「やっぱり、話が違うよね？」
「うん。聞いた話と噂で違うね」
　リアトリスと北都は互いに聞き込みで得た情報を交わし合って確認し合った。そして考え、やがて共通の感想を口に出した。
　話が違う。噂と実際に遭遇した者の証言には差異があった。
　リアトリスが眉を寄せながら言った。
「噂話では、弟と妹を探して名前を尋ねてその名前だったら殺す、違ったら襲うっていう話だったよね」
　スプリングロンドがふむ、とつぶやく。
「確かに弟と妹を探す男が出没しているという証言は得られた。しかし、その男が人を襲ったとは誰も言っていなかったな」
「えらい腰が低いとかで、聞かれた方も噂話みたいに襲ってくるなんてまるで思わなかったらしいぜ。やっぱ噂は噂でしかないんじゃねぇの？」
　人間姿になった昶の言葉を受けて、スプリングロンドが口にした。
「だが、実際に被害者は出ている」
「そうだね。解決しなきゃいけない事件なのは間違いないよね」
　頷いて、リアトリスが事件解決の意気込みを見せる。
　北都もリアトリスに賛成した。
「ここで唸っていても仕方ない。解決のために僕らができることをしようか。探偵さんや他の人たちにこの情報を伝えることにしよう」
　北都は情報を伝えるため、銃型ＨＣを操作する。