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少年探偵 CASE OF ISHIN KAWAI 3/3

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少年探偵 CASE OF ISHIN KAWAI 3/3

リアクション

ページ4

4−1

他のメンバーの後について歩をすすめながらも、舞はあなたと話すのをやめない。
いかにも育ちがよく親切そうな彼女としては、このメンバーに同行しているヨソ者のあなたが不安にならないように気をつかっているのだろう。

「栗色の髪の魔術師マントの方がジョゼフィンさんです。
彼女は、私のお友達で、そのう、最近少し落ち込んでいらしたんですけど、もうすっかり元気になって、会いにきて本当によかったです。
あそこで、みなさんに大きな声で指示をだしてる青いドレスの子が私のパートナーのブリジットです。
ブリジットは百合園女学院推理研究会の代表で、ここにいるみんなは、私もふくめてだいたいが推理研のメンバーや協力してくれてる方なんです。
あなたは、推理小説はお好きですか」

事態はまわりにいる人間がなんとかしてくれそうなので、舞と話し続ける→5−9 

舞との話をやめてブリジットに話しかける→6−3

ジョゼフィンに話しかける→3−10 

4−2

「きみたちは、BBと一緒になにをしているんだい」

「オルフェは、BBさんや他のみなさんと、殺人事件の調査をしているのですよ。
しかも、少し前に人質がどうとかいう怖い放送があって、オルフェはそれも解決したいのです。
みんなが幸せで平和なのがオルフェの願いなのです」

「なるほど。で、大事なみんなに料理をするために調理器具を持って調査してるのか」
あなたは、オルフェリアが手にしてるお玉を指さした。

「これは、光条兵器なのです。
こうみえても強いのですよ♪
オルフェは誰も置いていかないカムパネルラなのです」

「カンパなんとかって誰のこと」

「宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をご存知ないのですか」

「知らない。
演劇か、映画かい」

「そのどちらにもなっているとは思うのですけれども、もともとは小説でご本なのです」

タイトルに銀河鉄道とつくからには、ジャパニーズの作家のSF小説かとあなたは考える。
ふわふわとしていてどこか地に足のついていない感じのするオルフェリアには、お似合いなのではないだろうか。

「ギャラクシートレインに乗って旅をする話のようだね」

「題名のままなのですけれど、いちおう、そうなのです。
本当は、死んでしまったお友達と旅をするかなしいお話なのですよ」

「主人公は、カムパネルラなの」

「いいえ、カムパネルラは、死んでしまうお友達の方なのです。
”けれどもほんたうのさいはひは一體何だらう”
“僕わからない”
“僕たちしっかりやらうねぇ”

ジョバンニとカムパネルラは、ほんたうの幸福を求めてどこまでもどこまでも一緒に進んでいこうとするのですけれども、カムパネルラはジョバンニの側から姿を消してしまうのですよ。
だからオルフェは、誰も置いて行かない、ずっとみんなと一緒に幸せを探しにゆくカムパネルラになりたいのです」

彼女の健気さにあなたはつい笑ってしまう。
幸せを探す死者になりたいなんて。

「大変だね。
つらいことばかりの道中になるんじゃないかな。道半ばで力尽きるかもしれない」

「人は誰でもいつかは死んでしまいます。
幸せな気分で最期の時を迎えられたら、その人は幸福ではないのですか」

それは真実かもしれないが。

「じゃ、きみは、いま、幸せかい」

「ええ。みなさんとこうして明るい未来に進んでゆくのは、大変ですけれど、とっても楽しくて、オルフェは幸せなのです」

(つまり、ここで僕がきみを殺しても、きみは幸福なんだね)

あなたは寄りかかるようにして、彼女に体を預けた。

「具合が悪いのですか、大丈夫ですか」

心配したオルフェリアがあなたを抱きとめる。
あなたは隠し持っていたナイフを彼女の首へ。
しろく細い首筋に刃がふれた瞬間、手をとめて、あなたはオルフェリアの表情を眺めた。
幸せな顔をしているか、それとも、刃の冷たさに驚き、直後に訪れる自分の死に怯えているのかをたしかめたかったのだ。
とまどいの瞳をあなたにむけ、彼女はつぶやく。

「これが、あなたの、幸せ、ですか・・・」

わかってもらえてうれしいよ。
あなたは無言で頷いて、再び、ナイフを。

「させるかっ!」

いきなりの体当たりであなたを突き飛ばしたのは、黒髪の青い和服の少年だった。

「セルマさん。来てくれたのですね」

オルフェリアは、少年、セルマ・アリス(せるま・ありす)の傍らに寄り添うように立ち、和やかな笑みを浮かべた。

「遅くなってごめん。どこにいるのか探すのに手間取って」

「いいえ。こちらこそご迷惑をおかけしてごめんなさいなのですよ」

「オルフェは俺の妻だ。
俺の大切なものを傷つけるやつは、たとえ、何者であっても許さない」

勇ましい騎士の登場で状況は一変してしまったようだ。
やれやれ。
ともかくこの場から逃れようとあなたは周囲を見回そうとしたが、今度は、眼球の数ミリ先に日本刀の切っ先を突きつけられて、首を動かすのをやめた。

「こんなところであなたに会えるとは思っていませんでした。
たぶん、私の直感が間違ってなければ、あなたが、彼なのでしょう。
別に動いても構いませんよ。傷つくのは、あなたの目ですから」

日本刀を持つ、華やかな着物姿の少女は、あなたにどこか不自然な満面の笑みをむけている。
「セル。オルフェリアさん。
彼をよく見てください。
服装、髪型にまどわされないでくださいね。見覚えはありませんか。
おそらく、彼は」

彼女、リンゼイ・アリス(りんぜい・ありす)は、あなたのことを冷静に語りだす。
名前、過去、現在、世間での評判。
あなたは、おとなしくそれを聞きながら、今回の冒険が終わったのを感じていた。

END

4−3

司と呼ばれる青年は、両手で頭を抱え、うずくまっていた。

「どうかしたの」

「ここでは、テレパシーが入り乱れていて、私のチャネルにいろんな思考が飛び込んできてしまってですねぇ。
ロキくんと交流するはずだったんですが、混線がひどくて」

「これ、きみにって」

あなたは顔色の悪い司にビニールを渡す。

「見ず知らずの人にすいません。ん。ぐ。ちょっと、失礼しますね」

司は袋を手にものかげに行ってしまう。
あきらかに・・・している音がする。

(ずいぶん具合が悪そうだな。毒物でも飲んだか)

いつまで経っても司はかえってこない。
手持ちぶさたに壁によりかかって、ぼんやりしているあなたの側に身長170センチぐらいの長身の女性がやってきた。
銀髪のロングウェーブの彼女は、探し物をしているらしく、あたりを見回している。
きちんとした身なりで、あどけない顔をした二十歳前後の女の人だ。

「なにかお探しですか」

「うん。このへんにいるはずのワタシのおもちゃがいないの」

「おもちゃ、ですか」
「ええ。ずいぶん、いじり倒してきたけど、まだ飽きないわね。できは悪いけど、壊れにくいというか」

「なるほど」

彼女は懸命におもちゃを探している。あなたも彼女を手伝うつもりで、床を眺めた。

「大きさは」

「身長180。体重63。外見は黒髪のぼさぼさ頭のぱっとしない、イケてない日本人青年よ。
おもちゃのくせに名前があって、月詠 司(つくよみ・つかさ)っていうの」

「は。誰ですって」

「ワタシはシオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)。魅惑的な女性だけれど、ナンパはお断りよ」

「あなたじゃなくて、その、おもちゃの方です。彼は、つまり、司のことですか」

「そうとも言うわね。あれ、ワタシの所有物なの。あなた、どこにいったか知ってるの」

あなたは、あきれてシオンを眺めた。

「人間の男性じゃないですか」

「だから、ワタシのおもちゃよ。あら、あなた、よくみれば」

シオンはあなたに急に顔を近づけてきた。驚いたあなたが身を引く。

「こわがらなくていいよ。ワタシは、慣れてるから」

「なにを言っている」

楽しげに唇を歪め、シオンはあなたの顔面に催涙スプレーを発射した。

「うぐぐぐぐ」

床に倒れ、顔をおさえて、あなたはのたうちまわる。

「司のしつけ用にいろいろ持ち歩いているの。
あなたをおびき寄せるなんて、司はエサとしても使えるわね」

シオンは声をあげて笑いながら、あなたの体をロープで拘束した。
ようやく戻ってきた司に、他の仲間たちをここに呼んでくるように命令する。

「僕はいったい」

「はいはい。一言しゃべるたびにスタンガンね。
それでもいいなら、ワタシもあなたとおしゃべりしたいわ」

あなたは口をつぐんだ。

END

4−4

クレアの後を追って部屋をでようとしたあなたへ鮪がしがみついてくる。

「細けぇこたぁいいんだよ。
俺様にパンツを嗅がせろ、この野郎」

クレアも戦部もあなたを助けてはくれず、どこかへ行ってしまった。

「離せ。
僕のパンツなんか嗅いでも意味がないだろ」

「ヒャッハァ〜!甘ぇな。俺ぐらいの天才になるとコンデションを維持するために、常に嗅いどいた方がいいんだよ。
ならしだ。
練習だ。
アーン。タダでプロが嗅いでやるんだから、文句言うんじゃねぇ」

あなたは床に引きずり倒されて、無理矢理ズボンを脱がされかけた。
おいおい。まったく彼は大丈夫なのか。
うまくズボンを下ろせず、ズボンの生地の上からあなたの股間や臀部に鼻を押しつけてくる鮪をあなたは呆れて眺める。
たしかに鮪は匂いを嗅ぐだけで、直接な性的暴行をする気はなさそうだ。

「ほんとうに変わった趣味だね」

「るせー。趣味じゃなくて宿命だぜ。素人は黙ってろ!
俺にパンツを嗅がれたら、おまえはすでに丸裸になったのと同じなんだぜぃ」

はぁ。

ため息をついてしまった。

「思ったのだけれども、きみがここでこうして独自の調査にいそしんでいるってことは、他の人質も開放されるか、逃げだすかしているのかい」

「他のやつのことは知らねぇなァ。
俺の場合は、見張りもいねぇし、人質とは名ばかりだったな。
大石の野郎、俺に恐れをなしたんじゃねぇのか」

それはないだろ。
いや、ある意味、きみはたしかに恐ろしい男ではあるが。

「そうか。なら、他の人もきっと」

「だから、細けぇこたぁいいんだよ。
おまえ、さては、秘密を知られるのがコワくて、俺様を動揺させようとしてやがるな。
ったく、姑息な小心者だなぁ。
へへへへッ。おまえの小細工なんざぁ、俺には通用しねぇ。
ズボンの布越しに俺の鼻をくすぐるパンツの匂い。
しっかり嗅がせてもらったぜ」

「ほう。で、僕の秘密はなんなんだい。
実はここにこうしている以前の記憶を失ってしまっていてね。
きみがそれを教えてくれるなら、僕としてはとてもありがたいよ」

「慌てるなよ。
おまえの過去かぁ。そいつはな」

言いかけて鮪は口をつぐむ。
そのまま、上、下、横、斜めと左右の眼球だけを動かし、まずいもので食べてしまった後のような奇妙な表情を浮かべた。

「どうしたの」

「ははーん」

「見えなかったのかい」

「ヒャッハァ〜! この事件の謎を解くにはこの場に存在する全てのパンツを確かめなければならないぜ! おまえ一人に俺の才能を使ってるヒマはねぇんだよ。
大石鍬次郎(おおいし・くわじろう)のも気になるぜェ。
褌だろうが関係ねぇ」

「だから、僕の」

「お、おまえの秘密は」

「僕の秘密というか過去は」

「古森あまねのパンツを5回は嗅がねぇと教えられねぇな」

・・・。

「古森あまねとは誰だい。
僕はその人を知らないんだが」

「それがおまえの間違いだっ。
おまえの秘密はあまねと密接にからみあってるんだよ。
あまねは俺の愛人になる女だぜ」

「とすると、僕の過去はきみとも深くかかわっていると」

「それはねぇよ。俺とおまえは関係ねぇ。
俺は男は興味ねぇんだ」

鮪の言葉をどこまで信じていいのだろうか。
「とにかく、話を整理すると、きみは僕の、その、下着からはあまり得るものがなくて、他の人の下着の匂いを嗅ぎに行きたいんだろう。
了解したよ。
僕はきみを止めはしない。
どこだろうと好きなところへ行ってくれたまえ」

できる限り紳士的にあなたは、語りかけた。

「ヒャッハァ〜! おまえは重大な間違いを犯してるぜィ。
俺がおまえに言いたいのは、おまえの知りたいことは、俺の未来にあるってことだ。
ようするに、おまえは俺とパンツを狩りに行く運命なんだよ。
そうすれば、おまえの秘密も、ここにいる連中全員の秘密もなにもかも手に入るってわけさ」

「僕は他人の下着に興味はないぞ」

しかし、とあなたは考える。
これは、つまり、犯罪への招待というわけだ。
おもしろい、かもしれないな。
下着の収集? 自体はどうでもいいが、このモヒカン男と一味として悪さを働くのは、ヒマ潰しにはなりそうだ。
「本気で全員の下着を狙うのか」

「当たり前だ。俺がナゾ究明しねぇと事件は終わらねぇんだよ」

「なら、作戦を立てよう。効率的に下着を奪うには、どうしたらいいか」

「素直になったじゃねぇか。俺はパンツ探偵の助手としておまえの活躍に期待してるんだぜィ」

「サンキュー、ボス」

手帳をだし、あなたは鮪に尋ねる。

「優先順位を決めるとしょう。
まず、絶対に外せない獲物の名前を教えてくれ」

「へへへへへへ。そいっぁなぁ〜」

舌なめずりをし、よだれをたらしながら、鮪はパンツ狩りの標的たちの名前を口にしだした。
これから、あなたと鮪の捜査が始まろうとしている。

END

☆☆☆☆☆

4−5

「おにいちゃん。郁をよんでくれたよね。☆からおにいちゃんがよぶこえがきこえてきたんだ。
あ。かみさまだ。郁ねぇ。かみさまにあいたかったんだよ。
かみさまがだっこしてるおんなのこはだれ。
きれいなひとだね。おにんぎょうさんみたいだ」

本当にあなたの思いが通じたように柚木郁(ゆのき・いく)と、柚木 貴瀬(ゆのき・たかせ)がこちらにやってきた。

「姿はだいぶ違うけど、天ヶ原だよね。
郁だけでなくて、俺も会いたかったんだ。いきなりでなんだけど、時間もなさそうだし、聞いておくよ。俺ときみは友達だよね。違うのかい」

郁と貴瀬に、赤いドレスの少女を抱きかかえた振袖の人物は黙ってほほ笑む。

「これだいじなものなんでしょう。かみさまにかえすよ。いろんなこえがきこえてきてすごくたのしかったよ」

郁は、☆をさしだした。

「だいぶ育てたね。いろんな人間にこれを渡したけど、ここまでまっすぐに育てたのは、郁がはじめてだ。
郁はいい神様みたいだね。
これだけの思いが満ちた宇宙なら、もしかしたら」

天ヶ原だったものは、☆を手の中の少女の顔のうえにかざし、ぼそぼそとなにかをつぶやく。
と、☆の中心にある宇宙は光で満たされ、そのまぶしいばかりの光を外にも発して、☆そのものが光の塊になって、そして、消えた。
「ん、んん。ここは」

おかっぱ頭の少女が目をさます。

「あ。ご主人様。申し訳ございません。あたしは、いったい」

天ヶ原は少女を床に立たせ、額にキスをした。
少女の顔がたちまち耳まで赤くなる。

「こんなところで、いきなり、はしたないです。
ここはどこなんですか」

「きみを目覚めさせるための物語はまたの機会にだ。
行くよ。Ω。迎えがきている」

「本当に申し訳ありませんでした」

ドレスの少女はしきりと周囲に頭をさげ、っている。

「Ωがこの世界にきてから、数千年はすぎているんだ。知っている人は誰もいないと思う。
それと」

天ヶ原は、貴瀬の顎先をつかむと、顔を自分の方にむけ、いきなり、その唇を奪った。

「友情というのは、よくわからないんだ。
私がΩとここへ戻るのは、ずっとずっと先になるけど、きみさえよかったら、また会ってくれ」

「も、もちろんだよ」

Ωと同じように赤面した貴瀬が、握手を求める手をだした時、すでに天ヶ原たちの姿を消えていた。
廊下にいる全員が、ぽかんとした顔で、天ヶ原たちのいた場所を眺めている。

「散らかしっぱなしで悪いけど、予定を変更して、掃除はせずにこのままいくことにしたよ。
後片付けはよろしく」

「すいません。またよろしくお願いいたします」

天ヶ原とΩの声が、あなたの、いやおそらくここにいる全員の頭の中に響いた。

「僕は別に掃除は好きじゃないよ」

貴瀬のつぶやきにみんなが笑う。
あなたはここでのイベントがまた一つ終わってしまったのに、落胆を感じながら、その場を去った。

11−0へ

4−6

厨房内であなたを待っていたのは、コック帽をかぶり、エプロンをつけ、ワイシャツの袖をまくりあげた初老の紳士だった。
彼以外には、誰もいないようだ。
コンロにかけられた大なべにはスープらしきものがはいっているし、オーブンからはパイを焼いたようないい匂いが漂っている。
にこやかな笑みを浮かべたこの紳士は、シェフなのだろうか。
彼はキッチンで手を洗ってから、あなたに右手をさしだした。

「久しぶりだね。きみにあえてうれしいよ。
おぼえてくれているだろうか、私はスコットランドヤードのクロード・レストレイドだ。
ヤードは辞めて、ここで悠々自適な生活を送らせてもらっている」

「僕は、あなたとは初対面だと思いますが」→5−2 

「またお会いできてうれしいです」→8−2

4−7

眠そうな目をした三つ編みおさげの赤毛の少女は、あなたの手首をつかむと、先に立って歩きはじめた。

「ようするに迷子なんだろう。
それなら俺に任せてくれ。
俺はかれこれ一ヶ月もここにいるんだ。
もちろん罪なんか犯しちゃいないさ。
ただジャ○プを買いにきて、その後、長い長い散歩とほんの少しの休憩をしてただけなんだ。
いまはもうここは俺の庭みたいなものさ」

少女の後を歩きながら、あなたの不安は増してゆく。
たしかに彼女の足取りはしゃんとしている、が、しかし、行き先も聞かずに僕をどこへ連れてゆくつもりだ。

「あの、僕らはどこへ」

「俺は仙 桃(しゃん・たお)
これはジ○ンプだ。
読みながら歩くのはオススメしないが、どうしても読みたいのなら止めはしない。
一ヶ月前の号だが」

「僕が聞きたいのは」

「ふふん。
新規ルートの開拓だな。
会社や学校からの帰り道、ついいつもとは違う道を選んでみたくなる時があるだろ。
それと一緒だ。
俺が、知らない風景の中を歩いているのは事実だが、これは断じて迷ったんじゃないぞ。
わかっているよな。
こちらから質問があるんだが、それで、俺たちはどこへむかっているんだろうな」

あなたは呆れた。
仙 桃(しゃん・たお)は、あなたを連れて一団から離れたあげく、適当に歩いた結果、迷子になってしまったのだ。
あなたは

仕方ないので、仙 桃(しゃん・たお)と歩き続ける→6−2 

4−8

「シャンバラ教導団の三船 敬一(みふね・けいいち)だ。
危ないめに会いたくなければ、俺に近づくな」

警備員服の青年、敬一は、鋭く言い放った。

「ここが危険なのは承知している。きみたち契約者に協力したいんだ」あなたは敬一に言葉を返した→3−5 

4−9

邪魔をするスタッフ、警備員たちを振り払いながら、あなたたちはコリィベル2の砲台までたどりついた。
戦車いや巨大戦艦の主砲を思わせる巨大な砲身が、砲口を外にむけて設置されている。
周囲にいたスタッフをライトニングウェポンをかけたマシンガンの銃床で叩き、失神させると、敬一は、砲のコンソールをしばらく眺めていたが、

「先端テクノロジーと機晶技術じゃ、こいつはコントロールできそうもないな。
時間もないし、仕方ない、砲自体を機晶爆弾で破壊する。
いいか、爆弾を仕掛け終えるまで、俺を援護してくれ。頼むぞ」

砲弾への誘爆を避けるため、敬一は慎重に場所を選んで爆弾を設置しはじめた。
あなたは

敬一を放って別の場所へ→9−1 

ここで敬一を援護する→10−10 

4−10

刹那の判断で、あなたは背中から、後ろにいる戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)に体当たりした。
戦部は、あなたの奇襲をかわしたが、体のバランスを崩し、大石から視線を外してしまい、それが生死をわけた。

「ハッ! 人斬るのに理由なんていらねぇンだよ」

踏み込んだ大石は、戦部を一撃で斬り捨てると、床に倒れたあなたに刀の切っ先をむける。

「てめえ、俺を助けたつもりか」

「いや、それは違う」

大石は言葉以上に、身を持ってあなたの真意を知ることになった。
あなたはさっき戦部とわずかにふれあった隙に、彼の懐から拳銃を奪いとっていたのだ。
そしていま、銃は火を吹き、大石の胸板を貫いた。
二、三発とあなたは引き金を引き続ける。
戦部も大石もおもしろくないやつだった。
もし、犯行の動機を問われればあなたは、そう答えたかもしれない。
大石が戦部の横に倒れる。
あなたが立ち上がろうとすると、床が、いや建物全体が大きく揺れた。
あちこちから悲鳴と爆発音がきこえてくる。
大石の仲間が爆弾のスイッチを押したらしな。

フフフ。

満足気に笑いながら、あなたは、コリィベルでの最期の時を待った。

END

4−11

断続的にきこえるコツコツというかすかな物音が、まるであなたを呼んでいる気がして、あなたは音のでどころを探して、会場内を歩き回った。
これだけたくさんの人がいるのに、あなた以外は誰も音に気づいていないようだ。
幻聴なのだろうか。
陰鬱で物静かな大集会。ステージでは、死んだ魚の目をした白人の男が、大げさなジェスチャーで携帯を振り回しながら、

「みなさん。お知り合いに携帯電話をかけて連絡しましょう。みなさんは無事です。死ぬまではみんな無事なのです」

と意味不明な説明を繰り返している。

(やはり、ここは悪夢の中なのかもな)

酒でも飲みたくなって、あなたはテーブルのうえに置きっぱなしになっていたワインボトルを拝借した。
栓の空いている瓶に直接、口をつけてワインを飲む。安物だが、ないよりはマシだ。
瓶を片手にふらふらと、あなたは、あなたにだけ聞こえているらしい音を追って、壁の前にたどりつく。

トントントン。

音は小さいがたしかにしている。
あなたは壁に耳をつけた。
人の話し声がする、気がする。

「誰かいるのか」

壁ごしあなたが尋ねると、声はやんだ。
むこう側に何者か、人の言葉がわかるものがいるのを確信した。
今度は、あなたも壁を叩いてみた。

とんとん。

トントン。

間を置いて、叩き返してくる。さらに、

「人がいるってこたぁ、この壁をブチ破れば、イレブンの大将がいる大講堂で間違いないんだな。行くぜ。一」

「おいヒゲ。待て。もうちょっと、作戦ってもんが」

「しゃらくせぇぜッ」

男の二人の会話の後、さっきまでとはくらべものにならない、落雷のような轟音が鳴り響き、壁がくだけ散った。

壁の割れ目からこちらに入ってきたのは、イヤホンをつけ、両手に拳銃を持った青年と、途中で折れた翼を背中につけたスーツ姿のヒゲ面の中年の男だ。

「ったく、これじゃぁ、人質が」

「るせー。さっさとイレブンをとめりゃぁ、いいんだろうが」

あ然としているあなたにヒゲ面は、ちらりと目をやり、あなたの手にあるワインの瓶を眺めた。
あなたは、

ワインの瓶をヒゲ面に渡す→9−11

ヒゲ面を無視して逃げる→4−12

4−12

ワインの瓶をいつまでもじっと眺めているヒゲ面に気味悪さをおぼえ、彼らのでてきた割れ目に逃げ込もうとした。
「俺の前から酒を持って逃げんじゃねぇ」

ヒゲ面はあなたを追ってくる。
あなたと彼は掴み合いになった。
あなたは瓶を振り回し、彼の体をところかまわずに叩く。
彼もまたあなたの腹や顔を殴ってきた。

「おい。ヒゲ。なにやってんだ。やばいぞ。イレブンが俺たちに気づいた」

連れの少年の言葉にヒゲ面は、暴れるのをやめ、場内に目をむけた。

「げっ。こいつは」

「イレブンさんは、もう助からない。逃げるしかないな」

ヒゲ面と少年は、あなたから素早く離れ、廊下を走りだす。
一人、残されたあなたは、場内を眺め、異様な光景に気づいた。
会場内にいまや立っているものは誰もいない。
薄い紫がかったもやに包まれた講堂内のいたるところで人が倒れている。

(これは、ガスか。細菌兵器か)

逃げようとしても、あなたの足はすでに動かなくなっていた。
急速に意識も消えてゆく。

(安らかな死か。それも悪くはない)

END