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二人の魔女と機晶姫 最終話~姉妹の絆と夜明け~

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二人の魔女と機晶姫 最終話~姉妹の絆と夜明け~

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■デイブレイカーを制圧せよ
 デイブレイカー内、火器管制室。ここを制圧することにより、機動要塞に備え付けられたほぼ全ての武装を制することが可能となる。
 ……とはいえ、外部の武装はほとんど破壊してしまっているので、ここの制圧目的は主に隠された武装があった場合の機能制限などを行うためだろう。
「武装のシステムを直してるのは自分ですからね。きっかりと後始末はつけておきたいかなー、と」
 なにより、ここの修繕を担当した葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)が自分なりにこの火器管制室に始末をつけたいという思いから、パートナーであるセイレム・ホーネット(せいれむ・ほーねっと)鋼鉄 二十二号(くろがね・にじゅうにごう)が、そして毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)プリムローズ・アレックス(ぷりむろーず・あれっくす)の二人も同行して火器管制室へと向かっていた。
 敵を避けながら進みたいと思っている吹雪ではあったが、思った以上の敵の壁に阻まれていく。だが、毒島とプリムローズの二人が突出しない程度に先陣を切り、敵機晶姫に攻撃を仕掛けていく。
「――この程度じゃ無理だよ。ウゲンもエリュシオンも鏖殺寺院の連中ももっと強かった……これじゃ、私たちを止められない」
 毒島の一撃が、確実な命の終焉として主に遠距離型の敵機晶姫一人一人に刻み込まれる。『分身』と『行動予測』で正面から攻撃を回避と切り払いをしながら接近、距離を見極めて《煙玉》を投げ込んで《忍法呪い影》を突っ込ませ攪乱。その隙を突いて敵の武器や手足を破壊しつつ、『手刀』で強化された貫手で機晶石を抉り出す――一連の動きはまさに暗殺者というべきものだった。
 しかし、数が多いためそれでも取りこぼしという物が出てくる。その場合は適当に武器や手足を破壊しておきながら前進、すぐ後ろを続くプリムローズに任せていく。
「そっちは任せた!」
「任された、大ちゃん!」
 毒島の嵐によって乱れた敵陣営に突撃するプリムローズ。周囲を《氷雪比翼》で凍結させて敵機晶姫たちの動きを制限させていくと、その動けないところへ『乱撃ソニックブレード』や『歴戦の武術』で一気に粉砕、一網打尽にする。並大抵ではない頑丈さと『リジェネレーション』を組み合わせた突貫戦法で盾にもなったりし、獅子奮迅の活躍を見せつけていた。
 ――そんな二人の突貫援護を受けながら、ようやくたどり着いた火器管制室。入り口を守る敵機晶姫がいたため、セイレムと二十二号が敵を引きつけている隙を狙い、《ベルフラマント》と『カモフラージュ』を使いすぐさま吹雪が侵入すると、室内に《機晶爆弾》を仕掛けてすぐに離脱していく。
 優勢なので制圧でもいいのであるが、外部の武装はすでにほとんど破壊してしまっているため制圧のメリットが少ない。それならば破壊したほうがいい、という判断に至ったようだ。
「まったく、人使いが荒い……だが、邪魔はさせん!」
「まぁお仕事だし、しかたないよ。……あと、人ってカテゴリでいいの?」
 セイレムたちの前に立ち、盾となりながら《六連ミサイルポッド》2基や《機関銃》を撃ちまくり敵の動きを牽制させる二十二号と、その後方で魔法を使ってサポートしているセイレム。
 と、吹雪が火器管制室から出てきてすぐに退避するよう号令。それを受け、すぐにその場を離れると――火器管制室の《機晶爆弾》が爆音をたて、炸裂していった!
「――こちら葛城。火器管制室の無力化に成功しました」
 ……爆破後、室内の様子を再確認した吹雪はすぐにルカルカへ報告。火器管制室の破壊、および制圧に成功したことを知らせていったのであった。


 ――このデイブレイカーに、どうやらヴィゼルの屋敷で使われていた資料などが持ち込まれているようであり、ある一室がその資料を収める部屋として使われている。
 その情報を聞き、すぐにその資料室へと向かったのは鵜飼 衛(うかい・まもる)メイスン・ドットハック(めいすん・どっとはっく)ルドウィク・プリン著 『妖蛆の秘密』(るどうぃくぷりんちょ・ようしゅのひみつ)の三人だった。
「……なるほど、事前にもらっておいた地図の通りじゃな。ここが資料保管室じゃ」
 道中の敵機晶姫を衛の《ルーン召喚術式:麒麟》による電撃とレーザーやメイスンの《機甲砲剣ブリューナグ》による一掃、妖蛆の秘密の『歴戦の魔術』による援護で蹴散らしつつ、この資料保管室前に来ている。悠々と中に入ると、すぐに衛と妖蛆の秘密は作業を開始した。
「敵の掃討は後回しにするとして、まずは“依頼”を完遂するぞ。妖蛆、さっそくで悪いが依頼主の資料を検索してくれ。メイスンは外の警戒を頼む、だれであっても入れてはならぬぞ」
「わかりましたわ」
 『資料検索』を駆使し、衛に言われた資料を探し始める妖蛆の秘密。衛もそれに加わろうとしていると、唯一現状を理解できていないメイスンが衛に問いかける。
「衛、お前何やっとるんじゃ? 敵も倒さずにこんな所で資料漁りなぞしちょってに」
「……おお、そういえばお主には説明しておらんかったのう。――実はな、数日前にわしらはさる権力者から依頼を受けたんじゃ。その権力者、今回の首謀者であるヴィゼルの計画をある程度知っておっての。もしヴィゼルの逮捕が濃厚になった場合に備え、国軍によるデイブレイカーの徹底捜査や金 鋭峰の追及から免れるために、ヴィゼルとの繋がりを消してもらいたい……というわけじゃ」
「なんじゃ、権力の豚共の尻拭いか。つまらんのー」
 衛から語られた依頼内容に思わず呆れ果てるメイスン。とはいえ、食い扶持には違いないので止めるようなことはせず、言われたとおりに室外の警戒を怠ることなく行う。
「ちょうどわたくしたちが依頼を受けていた時、メイスン様はお好み焼き屋台の営業中でその場にいませんでしたから、知らないのも無理ありませんわね」
「……じゃがなんでこの部屋ごと処分せんのじゃ? わざわざ一人分だけ探すなんぞ、面倒な気がするんじゃが」
「全部燃やしてしまったら不自然じゃろう? 一人分ならばそうそう怪しまれん」
 ……さっき聞こえた爆音から、全部やっても問題ないような気がしないでもないが、そこは誰も突っ込む者はいない。……と、そうしている内にどうやら妖蛆の秘密が資料を全て集め終えたようだ。
「衛様、資料を全て集め終りました。思ったより少ないようでしたけど、その分内容は濃密ですわ。――さ、メイスン様。今回の一番重要なお仕事です」
「ん……? プリン、この資料を自分に渡してどうしろというんじゃ?」
 突然、仕事を回されたメイスンは再び首を傾げる。わかっていない様子のメイスンに、妖蛆の秘密は小さく一笑する。
「何のために《メモリープロジェクター》を搭載してきたと思っているので?」
 それを聞いて、メイスンはすぐ理解することができた。……この資料の内容を全て自身のメモリーに記憶させ、プロジェクターでいつでも投影できるようにするつもりなのだ。――そして、その先のことも理解できたようである。
「なるほど、そういうことか。しかし、考えることがあくどいのー」
「カッカッカ、そういうことじゃな。依頼主が節義を守ればそれでよし、破れば国軍なりしかるところなりに情報を売る。それだけの話じゃ」
 ヴィゼルとの繋がりを知る者がいれば、その権力者もどのような手に出るかわからないだろう。こうやって情報を持つということは、裏切りを防ぐことにもなり、命の保険にもなる。
 衛たちはそこまでのことを考えながら、該当資料をメイスンに記憶させたのちに資料を焼却。課せられた“依頼”を済ませると、敵機晶姫たちの掃討へとその行動をシフトさせていったのだった。

 ――当然のことながら、このデイブレイカーにも厨房というものがある。こういった機動要塞などには欠かせない、食の殿堂ともいえる場所だろう。
 その厨房へ、かまどの神様の異名を持つ佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)熊谷 直実(くまがや・なおざね)、そしてフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)ベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)と共にやってくる。……なぜここにやってきたのか。その理由は、“兵糧攻め”にあった。
 いくら機晶姫だらけだといっても、ヴィゼルを始め生身の人間が何人かいるだろう。そこを狙い、弥十郎たちは厨房や兵糧を制圧し、心理的なダメージを与えようという魂胆であった。
「な、お前らはっ!?」
「すまないが、ここを制圧させてもらおう。戦は兵糧が大事だしな」
「く……そう簡単には落とさせはせん!」
 厨房の内外から防衛機晶姫が数体ほど姿を現す。だが、その前にフレンディスとベルクの二人が立ちふさがっていく。
「これはまた盛大な歓迎ですね……致し方ありませぬ。弥十郎さんと直実さんは厨房の制圧を、ここは僭越ながら私たちがお相手します」
「――うん、任せたよぉ」
 敵機晶姫の相手をフレンディスたちに一任すると、弥十郎たちは厨房の奥へ押し入り、作業員などに猿ぐつわを噛ませるなどして一気に制圧していく。その間にも、フレンディスとベルクは敵機晶姫たちに対し、果敢に攻め入っていた。
「大変申し訳ありませんが――ここで全員お休みになっていただきます」
 ……影が、動く。忍びとして後ろに控えていた《下忍・下忍野仁さん(仮名)》と《下忍・下山忍さん(偽名)》の二人がフレンディスの戦いをサポートするように素早く動き、敵を攪乱させていく。そして、その隙を突いてフレンディスが《忍刀・霞月》と《忍刀・影法師》の二刀を振るい、次々と敵機晶姫たちを斬り裂いていった。
「こっちが色々と苦労したのに、それがおじゃんになったら元もこうもないからな!」
 ベルクもまた、『エンドレス・ナイトメア』などの魔法攻撃でフレンディスをサポートしていく。すっかりサポート体質が身についてしまっているようだが、これらが全て終わったら待望のデートが待ち構えているため、その気合の入りようはかなりのものだ。何より、この作戦がうまくいかないとフレンディスが責任感じて行方不明になりかねなさそうなので、それだけは防ぎたいと思っているらしい。
 ……そんな、二人+αの活躍によって、忍刀に秘められた力を発揮する前に片が付いたようだった。
 ――厨房を制圧後、弥十郎は室内を見渡して何か考えているようだった。
「弥十郎、どうした?」
「いやね、おっさん。厨房がある、ってことはここで作った食事をヴィゼルに運ぶルートがあるってことだよね?」
 弥十郎の言うことももっともである。直実やフレンディスたちはうんうんと頷くと、弥十郎は縛った状態の作業員に近づき、その猿ぐつわを外し――『ヒプノシス』と『コールドリーディング』を使い、尋問していった。
「――やぁ、久しぶり。ボスに食事を持っていくように言われたんだけど、ちょっとド忘れしちゃってさ。一緒に案内してもらえないかなぁ。……あ、そうそう。ついでにボスが脱出ルートを確認してほしいって話があったんだけど……そっちも一緒に教えてもらえるかい?」
 尋問を始めた弥十郎に一瞬訝しげな表情を浮かべる直実だったが、どうやらルートを訪ねていることを知って、なるほどと心の中で唸る。そして、作業員から返答は……。
「……ヴィゼル様、今は制御ブリッジにいたっけか。持っていくのは構わないが、脱出ルートのほうは知らない。噂では、そんなルートは存在しないとも言われてるらしいけど……」
 ……脱出ルートが存在しない。その言葉に、思わず首を傾げる弥十郎たち。
「どういうことだ? 普通、こういった機動要塞とかには脱出用の非常ルートとかを用意しておくはずだろう」
 思わずベルクも疑問を投げかける。どうやら、ヴィゼルには脱出しない“覚悟”か何かを持っている、ということなのだろうか……?
「ともあれ、ブリッジまでの道はわかったし……みんなに連絡して突入してもらおうか」
 弥十郎の言うように、ブリッジまでの道筋は確認できた。すぐに他の突入班メンバーにも連絡を入れ、四人も一足先にブリッジへと向かうことにしたのであった……。