First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last
リアクション
「アウストラリス、ちょっと質問してもいいか?」
「なんですか、鉄心さん?」
端末からの情報収集を待っていた魔法少女アウストラリス(アイリ・ファンブロウ(あいり・ふぁんぶろう))に、イコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)のマスコットパートナーとして狼の姿になった源 鉄心(みなもと・てっしん)が話しかけてきた。
「契約の代償については事前にお答えましたけど……」
「ああ、そうだな」
魔法少女の契約の際、鉄心は『契約の代償』についてアイリに尋ねていた。
『魔法少女として命をかけて戦うこと』
アウストラリスはそう答えた。
それは戦いに赴く者にとって当然のことで、常に胸に抱いておかなくてはならない覚悟だと鉄心は納得していた。
だが、もう一つの答えについてははぐらかされたままだ。
「なぜ戦艦の名前をキミが知っているのかについて、まだ教えてもらってないだろう?」
「そうでしたね」
アイリが苦笑いを浮かべる。
鉄心はその表情をじっと見つめた。
……何か隠しているのか。それはなんだ?
このまま信用してもいいのか。
ついさっき会ったばかりの人間の言葉を信じて、俺はティー達を危険な目に合わせているんじゃないだろうか。
どうする……。
「あ、すいません。
質問にお答えるのはまた後でになりそうです」
「?」
アイリの視線の先、そこには武装した集団が戦艦内部からぞろぞろと出てきていた。
敵に見つかったのである。
――戦艦に取り付けられたスピーカーから男の声が聞こえてくる。
『てめぇら、何で動けるかねぇ。
――まぁ、いいか。他人の土地に勝手に上り込んできたんだぁ。てめぇら。それなりに覚悟は出来てんだろうなぁ?
降伏するなら今のうちだぜぇ?』
癪にさわる笑い声が大音量で響き渡る。
アイリは気にせず声を張り上げて端末前の朋美に話しかける。
「朋美さん、データ抽出はどうですか!?」
「大丈夫。必要な人は機器をこっちに持ってきて!」
ルートごとに数名の生徒が、データを受け取りに朋美の周りに集まる。
「扉の開閉にはIDカード以外に、管理室からの操作が必要みたいですので注意してください」
集団から離れた場所で、アイリと鉄心の視線が交差する。
「質問は後回しでも大丈夫なのか?」
「ええ、夜空に煌めく南極星に誓って」
アイリは胸に手を当てまっすぐに鉄心を見つめると、静かな声で答えた。
鉄心は見つめ返しながら、瞳の奥の真意を探っていた。
「……わかった。信用しよう」
「ありがとうございます」
アイリが嬉しそうに笑っていた。
鉄心はその瞳から嘘はないと感じられたのだった。
――スピーカーから最後の警告が発せられる。
『どうやら死にてぇみたいだな。
しゃあねぇ。てめらぇ全員あの世行きだなぁ!!』
怒声と共に敵が一斉に駆け出した。
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last