蒼空学園へ

イルミンスール魔法学校

校長室

シャンバラ教導団へ

イコプラ戦機

リアクション公開中!

イコプラ戦機

リアクション


■決戦、コームラント型改
 ――中央制御室、奥。モータルの前には数名のイコプラプレイヤーたちが対峙していた。それを見て、モータルの口元は軽く歪む。
「ふふっ……これはすごい。イコプラバトルで有名になったプレイヤーがより取り見取りじゃないか。だが……勝つのはこの僕だ! 勝って、僕だけの最強のイコプラをここで作る!」
 モータルがそう宣言すると、コームラント型改と取り巻きらしき数機のヴァラヌス型改がイコプラプレイヤーたちのイコプラの前へ姿を見せる。
「いくよ、グラディウス!」
 先陣切って襲いかかるヴァラヌス型改に対し、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は愛機であるイーグリットアサルト型のグラディウスが持つダブルビームサーベルで斬り裂き、機能停止まで追い込む。改造に改造を重ねた機体と、歴戦のイコプラプレイヤーたるテクニックが、一撃KOを生み出したのだろう。
 そしてグラディウスはそのヴァラヌス型改の残骸を掴むとそれを盾にし、コームラント型改へ突進、切迫していく。
「残骸で攻撃を防げると――思うなっ!」
 だがコームラント型改は改造された大型ビームキャノンを構えると、残骸もろともグラディウスを撃ち抜かんとする。――規格外ともいえる太さのビームを撃ち出し、残骸をあっという間に消滅させていってしまった。
 しかしグラディウスは寸でのところで横に回避してビームを避けると、一気にコームラント型改の懐へ潜り込み――掴む!
「イコプラはみんなで楽しむものだよ。それを自分勝手な理由で悪用して――絶対に許さない!」
 美羽のその言葉と共に、グラディウスの腕部に仕込まれた火炎放射ギミックによって拳に炎が宿る。そして、その爆炎の一撃をコームラント型改にしっかりとぶつけていった!
「くっ! だがその程度で落ちる僕のイコプラじゃない! 僕のイコプラは究極こそではないがとっておきの逸品だ!」
 素早くグラディウスを振り払うが、その時にはすでに次の攻撃が来ていた。……飛行形態で突入してきた、ジヴァの操るフィーニクス型だ。
「テストパイロットの腕、見せてやろうじゃない!」
 ヴァラヌス型改を地上掃射で牽制して動きを封じながら、コームラント型改に飛びつくようにして変形。人型形態に戻るとそのままコームラント型改に食らいついていく。
「それがお主のとっておきと言うのならば――わらわもとっておきを出すとしよう。――行け、ゼノガイスト・アルクオン!」
 アレーティアが《ぽいぽいカプセル》より出したのは、三体目の相棒――ゼノガイスト・アルクオン。フィーニクス型がコームラント型改に食らいついているその隙を突き、ビームシールドを展開しながら一気に間を詰めて攻撃を仕掛けようとする!
「コームラント型ならばその戦闘仕様は砲戦型……! 接近戦に持ち込めば分はある、幾度の戦闘を潜り抜けたわらわとわらわのイコプラの力、見せてくれるわ!」
「――それ、凡才の考え方だよね。……リアクティブサンダー!」
 瞬間、コームラント型改の全身が淡く光り出し――全身に電撃が瞬時に纏われていく!
「なにっ!?」
「なんじゃとっ!?」
 思わぬ攻撃に、食らいついていたフィーニクス型と攻撃を仕掛けようとしたゼノガイスト・アルクオンはダメージを受けながら吹き飛ばされる。ゼノガイスト・アルクオンはのほうはビームシールドを展開していたためにそこまでのダメージではなかったが、コームラント型改とほぼ零距離だったフィーニクス型はところどころに大きなダメージを負ってしまっている。
「――全身の装甲に電撃が発生するよう仕込んでおったのか。まさか接近戦用にそのようなものを用意するとは……」
「原理としては電撃殺虫灯のようなものさ。高電圧を纏い、バリアー代わりとして接近戦を防ぐ……これが僕のコームラント型改だよ!」
 電撃による防御策を用いたコームラント型改。これではむやみに接近戦へ持ち込めそうにない……そんな考えが過ぎろうとしていた。だが、その程度であきらめるほどのイコプラプレイヤーたちではない。
「なら……遠距離から攻める! ――《アクセルギア》、発動!」
 ジヴァは『超人的肉体』を駆使し、《アクセルギア》で体感時間を一気に引き伸ばして認識力と反応速度を高めていく。
 近距離がダメなら遠距離からレーザーライフルで狙う――その考えの下、高速でプロポを操作し、フィーニクス型を動かそうとする……が。
『――処理速度が限界値を越えました。緊急停止します』
「えっ!?」
 ……超高速で動けるのはあくまでも《アクセルギア》使用した自身のみ。超高速の世界での操作速度に耐え切れなかったのか、イコプラ側が処理しきれずにその動きを停止させてしまったのだ。
「結構改造されてたみたいだったけど、処理速度までは高まってなかったみたいだね……!」
 遠慮なくフィーニクス型へ大型ビームキャノンの銃口を向ける操作をするモータル。そしてなすすべなく、収束エネルギーがフィーニクス型に向けて放たれた――!!


「そうはさせないのですよ〜?」
 襲いくるビームキャノンの収束エネルギー。このままだとフィーニクス型に直撃してしまう……そう思われた時、エネルギーはドールの操るイコプラ小隊のブルースロート型タイプAによる、強化されたエナジーフィールドによって防がれていった。
「僕の大型ビームキャノンを防いだ……だと……!?」
「まさか、再びこいつの出番があろうとは――モータル、あんたのイコプラでは仲間のイコプラを――そして、自分のSCを倒せないであります!」
 ビームキャノンが防がれたタイミングを見計らい、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)が自身のイコプラであるジェファルコンSCによる狙撃で、コームラント型改の装甲の隙間を撃ち抜き、すぐに高機動パックによる推進を活かした高速移動でその場を離脱する。
「こんのぉぉぉぉぉぉっ!!! これでも喰らえよぉ!」
「――熱源反応! 着弾地点を送信したわ、すぐ回避を!」
 モータルがコマンドを入力すると、背部に取り付けられていたミサイルランチャーを撃ち、面攻撃を仕掛けてくる。だがその攻撃もコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)のイコプラ、ブルースロート改の強化されたセンサーや電子戦にも特化したドールのブルースロート型タイプAによる多重センサーにより着弾位置を解析。イコプラプレイヤーたちはすぐさまその指示に従い、イコプラはミサイルを回避していった。
「さすがは“闇のイコプラバトル”に挑んだ時の相棒であります!」
「……その闇のイコプラバトルの時よりも、吹雪のイコプラの魔改造が進んでるように思えて仕方がないんだけど」
 正確な解析能力に思わずコルセアにサムズアップする吹雪。ジェファルコンSCの魔改造ぶりに思わず突っ込みを入れてしまったコルセアだったが、自身のブルースロート改も負けず劣らずの魔改造っぷりだったりする。

「――よし、今がチャンスだ。これより、超合体を行う!」
 ミサイルの弾道を回避し、イコプラのフォーメーションを組み直した巽 友哉(たつみ・ゆうや)リーゼロッテ・ルーデル(りーぜろって・るーでる)。その後ろではイオン・アクエリアス(いおん・あくえりあす)が二人の活躍をしっかりと見守っている。
「超合体……やるのですね」
 リーゼロッテも、友哉から出てきたその言葉に頷き、了承する。
 ……友哉とリーゼロッテが現在操っている友哉謹製の自作イコプラ、イプシロン・ファランクス・アイギスには三位一体の合体機能が付いている。先ほどまではヴァラヌス型改との戦いで連携を取りながら戦っていたが、敵側に隙ができたのを見計らってその合体機能を使おうということらしい。
「よし、なら話は早い。――超合体、承認!」
 友哉の承認とコマンド入力によって自作イコプラたちの合体が始まる。イプシロンが変形して頭部と胸部になり、ファランクスがパーツ分割の後に、変形したイプシロンパーツと合体、人の形へとその姿を形作る。そして、アイギスが上半身と下半身に分割されるとそれぞれ盾と銃へと変形し――今ここに、超合体が完成した!
「見よ、これぞ驚異の超合体! ――名称はまだ募集中だ!」
 バッチリ合体が決まり、合体イコプラ(仮)は再び戦闘を開始する。標的は残り少なくなったヴァラヌス型改。二体分ほどの大きさとなった合体イコプラ(仮)を前に、ヴァラヌス型改は悠然と立ち向かう。だが、その攻撃もアイギスパーツからなる盾によって防がれ、至近距離からの銃の一撃で撃ち抜かれていく。
 そのパワーは確かなものではあるが、燃費の問題などがこの後の戦いで浮き彫りになっていったようだ。操作するイコプラが合体しているのでやることが無くなってしまったリーゼロッテと絶賛見守り中のイオンは、その結果をしっかりと記憶していくのであった。

 ――残りのヴァラヌス型改もドールのイコプラ小隊による連携攻撃によって機能停止させ、いよいよ残るは手負いのコームラント型改のみ。現在、コームラント型改と対峙しているのは天空寺 鬼羅(てんくうじ・きら)イコプラ戦士 エクストリーム(いこぷらせんし・えくすとりーむ)の二人であった。
「おいモータル! 愛と勇気と魂を子供から大きなお友達にまで伝えるイコプラを悪用し、さらには自分の得だけ考えてやがるなんて、ぜってぇ許さねぇ! ――さぁいくぜ、エクストリーム! あいつに目にものを見せてやる!」
「愛無き魂無きイコプラでは鬼羅さんと私――そして、仲間の皆さんには勝てません! おとなしく捕まる気がないのならば、成敗します!」
 己の魂を体現したかのようなエクストリームイコプラが武装であるサバイバルナイフを構える。既に敵機の両腕は吹雪のイコプラによる狙撃で関節部分を撃ち抜かれており、大型ビームキャノンを撃つことはできなくなっている。
「やれるものならやってみろ……! リアクティブサンダーでそのイコプラを完膚なきまでに潰す!」
 だがいまだにモータルのプライドは折れきっていない。エクストリームイコプラの武装を見て近距離攻撃のみと判断し、その攻撃を待ち構えていた。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ、エクストリーーームっ!!」
「やぁぁぁぁぁぁっ!!」
 一気に駆け、その距離を詰めていく。そして、サバイバルナイフでコームラント型改に接近戦を挑む!
「無駄ぁっ! リアクティブサンダー起動!」
 その攻撃に対応するかのようにコームラント型改も全身に高電圧を纏うリアクティブサンダーを起動させる。このままではエクストリームイコプラが高電圧に巻き込まれてしまう……!
「――ならば、同じ電気を纏えばいいだけのこと!」
 だがエクストリームはすでに策を講じていた。サバイバルナイフに『ライトニングウェポン』の力を纏わせ、一気にコームラント型改の機体を斬り裂いていった!
「な、なにぃぃぃぃぃっ!?」
「――『ライトニングウェポン』で電撃を纏うことで、電撃同士を相殺させたようじゃの。そして、今の一撃でリアクティブサンダーはエネルギーを失って……効果を失っておる!」
 コームラント型改の後方に、ゼノガイスト・アルクオンの姿があった。その手にはビームサーベルを携えており――光の一閃が、コームラント型改を斜めに引き裂く。
「ここまでじゃ……コームラント型改、討ち取ったぞ」
 力尽きる敵機を見届けながら、アレーティアは勝利宣言を言葉にするのであった……。

「あ、あ、ああああぁぁぁぁ……」
 コームラント型改を失い、イコプラ軍団すらも殲滅させられてしまった。手塩にかけた物全てが破られてしまい、モータルはがっくりと肩を落とす。自身に残っていたプライドは完全に折れてしまったようだ。
「――さーて、覚悟はできているんだろうな?」
 指の骨を鳴らしながら、鬼羅はゆっくりとモータルに近づいていく。反射的にヤバいと察したモータルはその場から逃げだそうとするが……。
「逃がさないわよっ!」
 ルカルカと夏侯淵の二人もこちらへやってきて、“黒の剣”と“黒の盾”の二機で《戦乱の絆》を使い、モータルを絡め取りその動きを封じていく。
「喰らえっ! 怒りと! 粛清と! 楽しみにしていた発売日に発売しなかったイコプラの恨みパーーーーーーーーーーーーーーーーーーンチッ!!」
 動きを封じた瞬間、鬼羅の若干私怨がこもった鉄拳制裁がモータルにヒットし、一気に壁際まで吹っ飛ばす。その先にはベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)がおり、衝撃を抑えるようにしてモータルをキャッチした。
「モータルさん、確かに拘束しました」
「嫌だっ! 嫌だっ!! 僕はここで究極のイコプラを作るんだ!!」
 拘束されてもなお、身を捩って暴れようとするモータル。それを見かねてか、ルカルカは“黒の剣”の脚部側面に付けた《眠りの針》をモータルに刺し、眠りへと誘わせる。
「……すぅ……」
 すぐに寝てしまった。……どうやらこれで、工場を完全に奪還できたようである――。