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【神劇の旋律】旋律と戦慄と

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【神劇の旋律】旋律と戦慄と

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     ◆

 廊下を一人、ラナロックが歩いている。
既にリビングにいた彼等は、一足先に楽器の保管してある階まで登っており、片づけ終えた彼女がその後を追っている形となっていた。
と、彼女の足が止まり、徐に両脇に下げてある銃に手を掛けた。
恐らく人の気配を感じとったから、だろう。
「ああ、待ってくださいよ。俺です、唯斗ですよ」
 腕を組んでいたのだろう。両手を挙げながら廊下の陰から現れた彼、紫月 唯斗(しづき・ゆいと)がラナロックの前に現れ、再び腕を組む。
「ウォウル、消えたんですか」
「はい」
 手を離し、にっこりと笑顔で返すラナロック。
「今は落ち着いてるんですね」
「真偽が定かではない今の状況では、ただただ彼を信じて待つしか、ありませんから」
「……全く。あいつも良く人に迷惑をかける男ですね。困り者だ」
「そうでもないですわよ」
 ふふふ、と笑い、唯斗の隣に立ったラナロックが、壁と自身の間に両手を挟む。
「皆様と引き合わせてくださったのはウォウルさんですわ。私はその事に感謝をしています。神の巡り合せ、よりも確かな物があるからこそ、私はウォウルさんや皆様に感謝をしていますわ」
「確かにそれは明確ですね。あいつに巻き込まれ、でも、縁は伸びる」
「ええ」
 だったら――と。唯斗は笑う。
「いない間は俺があいつの代わりをしましょう。悪者になろうが、何であろうが、俺が、ね」
「ありがとうございます。私にはどうにも、荷が重いと思ってましたわ」
「ははは。それは俺も同じですよ。俺だって荷が重い。それこそ、あいつ一人がそれを背負っている事を本当に馬鹿だと思う程に」
 皮肉ってはいるが、彼は本当にウォウルの事を思った発言をしている、と、ラナロックにはわかっている。だからこそ、笑ってその言葉を聞いていた。
「あいつがいつの日か、本当にみんなに心を許せたら、この重荷は消えるんですかね」
「さあ、どうでしょう。それでも彼はきっと、そんな事構う事無く背負うんですよ。そしてずっと笑っている」
「……ふふ、あり得そうな話だ。全く以て、あいつは」
 唯斗は寄りかかっていた壁から剥がれ、ラナロックの前に立って手を向ける。進行方向へと。
「行きましょうか。俺たちも行かないと。言い出しが不在じゃあ示しがつかない」
「まぁ……! ふふふ、そうですわね」
「と、あいつは思っているでしょうから」
 表情などはわからない。でも、確かに唯斗は笑っている。シニカルでもなく、穏やかに笑っている。