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【第二話】激闘! ツァンダ上空

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【第二話】激闘! ツァンダ上空

リアクション

 友軍各機が漆黒の機体を警戒する中、次に仕掛けたのは真司とヴェルリアのゼノガイストだ。
『ターゲットを捕捉しました。分析を開始します』
『まずは手の内を暴かせて貰う』
 右手に装備したガトリングシールドから銃撃を連射し、ゼノガイストは漆黒の“フリューゲル”を牽制にかかる。漆黒の機体はそれを難なく全弾回避してしまうが、それも真司の予想通りだ。難なく回避しているとはいえ、漆黒の機体も一方的に攻撃されている状況を甘受する気はないらしく、プラズマライフルで応射を開始、ゼノガイストを撃ち落とそうと試みる。
『落とされてやるつもりはない』
 真司はゼノガイストは両肩のビームシールドを展開しつつ歴戦の経験と勘による直感で漆黒の機体からの射撃を予測し、脚部の大型ブースターを使って無理矢理急速回頭、進路変更を行い回避する。なおもプラズマライフルの追撃がゼノガイストを襲うが、真司はそのどれもを紙一重の所で避け続けていた。
 そして真司たちはただ避け続けているわけではない。サブパイロットのヴェルリアの手により、漆黒の“フリューゲル”の攻撃パターンの分析が今も進行中なのだ。一発でも被弾すれば甚大な被害は免れないプラズマライフルの銃撃を危ない所で避けながら、真司は突撃のチャンスを待ち続けた。幾度もの回避の末、遂にヴェルリアからの報告が入る。
『分析終了しました。突撃まで……10、9、8――』
 簡潔な報告ともにカウントダウンを開始するヴェルリア。彼女の刻むカウントダウンがゼロを告げると同時、ゼノガイストは新式ビームサーベル以外の武装を全てパージ。両肩のビームシールドを展開し防御を固めたら、エナジーバーストで相打ち覚悟で漆黒の“フリューゲル”に突撃する。
 突撃してくるゼノガイストを止めようと、プラズマライフルによる迎撃を放つ漆黒の“フリューゲル”。ゼノガイストはその銃撃にすら正面から突っ込んだ。驚くべきことに両肩のビームシールドを展開したゼノガイストはたった一発とはいえ、正面からクリーンヒットしたプラズマライフルの銃撃に耐えた。
『まだだ。ヴェルリア、リミッター解除』
『了解です』
 予想外の防御力を発揮したゼノガイストに思わず体当たりを許した漆黒の機体はその衝撃で後方へと押し出されるが、ゼノガイストの攻撃はこれに留まらない。敵に体当たりしたら更にリミッターを解除し、唯一パージしなかった新式ビームサーベルでを斬りかかる。
 漆黒の機体に向けて新式ビームサーベルの光刃が振り下ろされる。体当たりで姿勢を崩した漆黒の機体は、今までのように急激な超加速は使えまい。このまま行けば新式ビームサーベルの強力な光刃が漆黒の機体を断ち斬る――まさにその時だった。
『……な!』
 真司は驚きのあまり声を漏らした。確かに、漆黒の機体は急激な超加速はしなかった。ただ、背部の飛行ユニットをごく僅かにふかし、機体を微細に動かしただけだ。だが、たったそれだけの動作で漆黒の機体は光刃を文字通りの紙一重――実に数ミリ単位でかわしてみせたのだ。
 漆黒の機体が規格外の圧倒的な機動性を持つことはもはや間違いない。だが、それだけではない。針の穴を通すほどの精密動作性もこの機体は可能としているのだ。正真正銘の絶対的な機動性を持ちながら、決してそれだけに頼らない――どうやらこの漆黒の機体は、形こそ同一のモデルであるが、濃緑の機体とは一味違うらしい。あるいは、パイロットの違いだろうか。
『っとぉ、危なかったぜ。んじゃ、生きてたらまた来りゃいいさ。またな』
 いきなり割り込んでくる音声通信。音声に混じって大音量の音楽が流れているあたり、敵からの通信に違いない。敵は戦いの最中とは思えないほど気さくに言うと、それとは対照的に容赦なく大出力のビームサーベルを振り下ろした。大技の隙をつかれ、胸部を袈裟懸けに斬り裂かれるゼノガイスト。大破こそしなかったものの、ゼノガイストは小さくはないダメージを受けて眼下に広がる平原に緊急着陸する。
 それを追撃しようとプラズマライフルの銃口を下に向ける漆黒の機体。トリガーが引かれようとする瞬間、高速で飛来した機体が刃を振るい、強引に発射を阻止した。