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決戦! 秘密結社オリュンポスVSヒーロー戦隊

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決戦! 秘密結社オリュンポスVSヒーロー戦隊
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リアクション

 ラトスたちが救出した人質たち、そことはまた別の人質室。
「まったく、どうしてこんなことに……」
 そこに捕まっていたのは宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)、キーキーと言う怪人たちにここに連れてこられてしまっていたのだ。
「女性を多人数で囲み拉致して、こんな部屋に監禁するなんて、なんて非道なのかしら」
 祥子以外にも同じように囚われている人がいる。女性だけではなく、男性もいた。
「でもこれだけの数を集めてどうしようと言うのかしら。多ければ多いほど押さえ込むのが難しいと思うのだけれど」
「……お答えしよう」
 そう言って陰から現れた人物。黒ぶちをかけ、暑い中白衣を着こなす、恐らく実家は墨田区あたりにあり本名は高天原 御雷の日本人である、自称悪の天才科学者。
「あなたは、ドクター・ハデ」
「ストーップ! あともう少しで出番だからそこでストーップ!」
「……」
 まだ正体を隠しきれていると思っているの? という言葉を飲み込んだ祥子。そこには下手なことを言えば何をされるかわからない、というのと少しの優しさ。
「フーハッハハハハッ! この謎のドクターであるハーデスに恐れ戦いているようだな! 無理もない」
「……ここにいる人たち、そして私をどうするつもり?」
「無論、改造する」
「!?」
「ここはもう落ちる、その前に戦力を補強しようと思ってな! まずはお前からだ!」
「戦力補強のために見ず知らずの他人を牙にかけるの? そんなこと、あってはならないことだわ」
「世界征服のためだ! さあ大人しく改造されてもらうぞ!」
 祥子の手を取る謎ハデス、それに必死の抵抗を試みる。
「離して!」
「こ、こら暴れるとバランスが崩れて」
「あっ!?」
 案の定二人のバランスは見事に崩れて、祥子の足が振りあがる。
 ハデスの股座へと。
「がぁああ……!?」
「あっ、えっと、む、報いよ! 非道な行いに対する報い! そうよ、わからないけどきっとそう」
「お、己ー! もういい! お前はここで大人しくしていろ! そのうちヒーローでもなんでも助けに来るだろう!」
「えっ? 悪の親玉であるあなたがどうしてそんなことを……」
 祥子の疑問を無視して次の人質の元へ歩を進める謎ハデス。内股で。
「次は、お前だ!」
「あー涼しい……まるで天国だわ……。えっ、なに?」
 謎ハデスに声をかけられたのは綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)だ。
 真夏の酷暑日、どうしても行かなきゃならない用事があったさゆみ。
 炎天下の中を半ば脳味噌を蕩けさせつつ歩いてたら、「涼しい所へ行かない」と声をかけられて条件反射でついて行く。
 その声をかけた人物が怪人であるとは働いていない脳味噌では考え付かず、ここに来ていたというわけだ。
 オリュンポス・パレスの人質室だけは涼しくなっていて、そこに幽閉されていた。
「あなた誰? それにどうして手を縛られているのかしら? う、ううん?」
 冷却され動き出し脳内に様々なことが駆け巡る。そして導き出された答え。
「……もしかして、攫われたの?」
「もしかしなくてもそうだ、そして今からお前は改造を施されるのだ!」
「改造って、何? コスプレのこと?」
 完全に目覚めているわけではなく、まだ少しだけ脳の処理が遅くなっているようだ。
「いや、そうではなくて」
「そう、ここの雰囲気ちょっとおかしいと思っていたけどなるほど。ここはコスプレ広場的なところなのね。
 涼しさでメイクが落ちないように配慮するなんて、なかなか素敵な場所じゃない!」
 事態を理解していそうでしていないさゆみ。しかし、事はそのまま進行していく。
「なら少しアドバイスしてあげる。そこの人! ちょっとこの縄ほどいてくれない?」
「あっいや、だけど」
「お願い?」
「は、はいっ!」
 そこらへんにいたモブ怪人がさゆめの縄をほどく。自由になったさゆみだが逃げようとはしない。
「んー、そのカラーリングじゃちょっと弱そうに見えるわね」
「いえ、これが一応規定の色で」
「規定に沿うのは大前提だけど、その中でどれだけにりきれるか。大切なことだと思うの」
「は、はぁ」
「こら! このハーデスを無視して話を進めるな!」
 思わず叫んでしまうハーデスに振り返るさゆみ。
「あなた、悪の幹部になりきっているようだけど、何か決めポーズとかあるの?」
「むっ? いつもはこの態勢だが」
 両手を斜め下に広げて背筋を伸ばす。すかさず、さゆみがダメ出しをする。
「あー、そうじゃない! もっと顎を引いて目は上から目線でないと全然世界征服を狙う組織の幹部には見えないわよっ!」
「え、ああ、こうか?」
「惜しい! そっちはこうして、ああ! ここはキープして! そうしたらここの角度を……」
 熱心に『世界征服を狙う組織の幹部』の決めポーズをレクチャーし始めるさゆみ。コスプレイヤーの悲しい性が優しさと共に現れていたのだ。
「こ、こうか?」
「そうそう! こっちのほうがいいと思うわ! でも決めポーズはいくつかもっていたほうがいいと思うわ。今の人たちは欲張りだからね……」
 ため息混じりにそう言うさゆみ。その言葉の端からは実際に何かあったような雰囲気が感じ取れる。
「フーッハッハハハ! これで威圧感もまして、世界征服した時も安心だな! 感謝するぞ!」
「どういたしまして。……あれ、私って攫われたんだっけ?」
 攫われてしまったのか、コスプレの演技指導に来たのか自分でもわからなくなるさゆみ。そこへ現れるヒーローが三人。
「ここが人質室だね!」
「まさか部屋の名前が書いてあるとは思わなかったわ……」
「わかりやすくていいじゃない。それに、親玉さんもいるみたいよ」
「あら、ホントね。ついでに成敗しちゃいましょう」
「よーし、頑張るよー!」
 セレン、セレアナ、恵が人質室へと駆けつけた。
「くっ、もう来てしまったのか。足の速いヒーローたちだ!」
「ヒーロー? ……助けて、水着ヒーローと美少女ヒーロー! こいつの弱点は、えーっと、股座よ!」
「股座は男なら誰でも弱点だ!」
「……水着ヒーローって私たちのことかしら?」
「そうでしょうね」
「僕は少女じゃなくて、少年だよ!」
「おのれ! よくも叫んでくれたな!」
「いや、ついお約束とかと思って」
「くっ! ヒーローたちよ! また後で会おう!」
 そう言って煙幕弾を叩きつけて逃げ去ってしまう謎ハデス。
「逃げ足だけは速いわね」
「いいんじゃない? それよりも人質を助けましょう」
「さあみんな! 一緒に逃げよう!」
 人質を解放していく三人、その中に意外な人物がいた。
「……ぷはっ。た、助けてくれてありがとうございます! 更に厚かましいお願いになるとは思いますが、兄も、兄も助けてあげてください!」
「あら、あなた咲耶ちゃんじゃない。どうしてここに?」
 セレンに助けられたのは高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)だった。どうして人質として捕らえられていたのかはわからないが、何か事情があるようだ。
「兄は今、普通じゃないんです!」
「正直な話いつも普通じゃないと思うけど、細かいことは脱出してからよ!」
「そうね。詳しい話は置いときましょう」

ゴゴゴッ、ゴゴゴゴオオオオオオオオオオンッッ!!

 いよいよ轟音が鳴り響き始めるオリュンポス・パレス。もうもたないのだ。
「早くここから離れよう!」
「とはいっても来た道を戻っても間に合わないわ!」
「こちらから外に通じる脱出路があります! 早く!」
 咲耶の誘導に従い、パレスから脱出する三人と人質たち。
「ああっ、なかなかいいコスプレの広場が……」
「……ウェスタンラリアットしなくてよかった」
 それぞれ感情を吐露しつつ、祥子とさゆみも無事に脱出をするのだった。

「あーっと! 落ちていきます、落ちていきます! 秘密結社オリュンポスの象徴たるオリュンポス・パレスが音を立てて崩れ落ちていきます!! これで態勢は決したのでしょうか! ルカルカさんは、どう思ういますか!?」
「んー、多分あとちょっとじゃないかな? ほら、悪の親玉はなかなかしぶといからね? 今回の相手は特に、ね」
「成る程! さあ、戦いも終盤です! いよいよその姿を現すのは……!? みなさん、見てください! 崩れ落ちたオリュンポス・パレスから更なる城が! あれは一体!?」
 フィーアが指差した先にあったのは、城からでた城のシルエット。
 その城の頂点部に近いところに見える謎の白衣のシルエット。
 戦いは最終局面へと入った。