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対決、狂気かるた!

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対決、狂気かるた!

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「20回戦、海京かるた会 大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)さん対タシガンかるた会 清泉 北都(いずみ・ほくと)さん。前に出て下さい」

 北都は超感覚で反応速度を上げ、ホークアイで全体把握した状態で挑む。

「(タシガンの栄光の為。ミスは美しくないね。それに僕にはフェイクなんて効かないよ)」

 トラッパーで相手に違う札をお手つきさせ、相手にペナルティーを与えると共に発狂を誘発させようとしている剛太郎の策は北都の行動予測によってバレてしまう。

「こぬひと」
「(まつほのうらの ゆーなぎに、でしょ)」

―――スパーン

 博識で先の文を予測し、札を取りに行った北都。

「やくやもしおの みもこがれつつ」

 策を詠まれ、フェイクの札には触りもしない北都に、剛太郎は臨時で入った海京かるた会で習得した技術で挑むことにした。
 しかし、時すでに遅し。巻き返しには時間が足りなかった。

「ちっ。敗者復活に賭けるか」

 敗者復活に賭けた剛太郎はサイコロを振る。
 出目は剛太郎の正気度よりも大きかった。

「な、なにが起きるんだ……はっ!」

 狂気が脳裏まで到達すると、剛太郎はいつの間にはふかふかのソファに座っていた。

「ここ、は ……」

 隣に誰かが座るようにソファが沈み込む。

「剛太郎さまぁ」

 隣を見ると、ナイスバディな美女がいた。
 反対側のソファも沈む気配がする。

「剛太郎さまぁん……」

 首に腕を絡めて来る、これもまた美しい美女。
 後ろから、前から、いろいろなタイプの美女が剛太郎に迫りくる。

 思わず鼻の下を伸ばしてしまう剛太郎。
 絡んで来る美女の行動がだんだんと大胆になっていく。
 それはそれは色っぽい事を。

 現世では剛太郎ただ一人が、一人恍惚の表情を浮かべ、あんなコトやこんなコト、色々したりされたりと、幸せいっぱいな感じをブツブツ呟いている。

「狂気じゃなくて彼には狂喜のようだったねぇ」

 正気を保った北都がだらしない剛太郎を見て呆れている。
 それは観客席で応援していたクナイも同様だった。

「21回戦、イルミンスールかるた会 セシリア・ナートさん対海京かるた会 鵜飼 衛(うかい・まもる)さん。前に出て下さい」

 オルガナート・グリューエント(おるがなーと・ぐりゅーえんと)の魔鎧を纏ったセシリアに憑依した逢魔時 魔理栖(おうまがとき・まりす)が、帽子の下から見える金のゆるい内巻きロールヘアをなびかせながら入って来る。
 首には長いマフラーが巻かれている。
 対する衛も機甲魔剣アロンダイトを手に携えるメイスン・ドットハック(めいすん・どっとはっく)を連れて入って来た。

「なんじゃ? これじゃ視界が狭まってしまうんじゃないのかのぉ」
「平気ですわ。札に集中できますもの」
「そうかそうか。なら遠慮は無用じゃの。では、いざ尋常に勝負!」

 帽子やマフラーで顔の表情が見えないセシリアは持ち前のスピードをもって札を取っていく。
 対する衛は神の目と千眼睨みで動きを緩慢にさせようとするが、セシリアの動きが遅くなることはなかった。

「上手く帽子のつばで遮ったのぉ」
「……あしびき」

―――しゅぱっ

 札を取りに行ったセシリアの手をかいくぐるようにサイコキシネスで札を自分の方へ引き寄せ札を取る衛。

「同じ手が通用すると思っていませんわよね?」
「当然じゃ。連発する気はさらさらないわ」

 札を取りに行くセシリア。

―――バシン!

 札を手にしたセシリアが軽く吹っ飛ぶ。

「かかったのぉ。くっくっく」
「くっ……」
「ちゃんと詠まれて安心したわい」

 セシリアを弾き飛ばしたのは、衛が仕掛けたインビジブルトラップのうちのひとつ。
 衛はサイコキネシスとこのインビジブルトラップで揺さぶりをかけていく。

 そして発狂判定……。

「わたくしは、これで」

 セシリアは屍食教 典儀(ししょくきょう・てんぎ)で発狂回避する。

「わ、わしも妖蛆をつか……」

 衛がルドウィク・プリン著 『妖蛆の秘密』(るどうぃくぷりんちょ・ようしゅのひみつ)を使い狂気を回避する。

「今の、は……」

 襲いかかって来た狂気が去る中、見えたビジョンに胸騒ぎを覚える。

「セシリアさん第二試合進出! 衛さんは敗者復活戦となりま」
「待つのじゃ!」
「ど、どしましたか」
「わしは降りる!」

 敗者復活を蹴る衛。
 加夜はそんな衛に驚くが、エリザベートは止めたい奴は降りても良いと言った為、衛は一回戦敗退となった。

「(今見えたアレ……調べる必要があるよのぉ)」
「どうしたんじゃ、衛の奴?」
「なにやら厳しい顔をしていますけど」

 表情を引き締め、退場していくセシリアの背を見る衛。
 メイスンと妖蛆の秘密は互いに首を傾げるしかなかった。