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リアクション
「10回戦、イルミンスールかるた会 カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)さん対ヴァイシャリーかるた会 桐生 円(きりゅう・まどか)さん。前に出て下さい」
特設会場に上って来たカレンは名乗りを上げる。
「ボクはイルミンスールかるた会の一人、カレン・クレスティア! 外なる神は言っている。ここでボク……カレン・クレスティアが負ける運命ではないと!」
「むっヴァイシャリーかるた会としてボクだって負けないよ! あんなちんちくりん達に負けてなるものか!」
名乗りを上げられたカレンに円もそう言い返す。
「ふく」
―――バシン!
記憶術で決まり字を聞くとすぐさまゴッドスピードで動き出す円。
「ふ、と来ればこれしかないよ」
円はこの大会が開催されるまでの間、オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)の手で多種多量のあらゆるクトゥルフ神話の物語を円に体験させられていたのであった。
当の本人は観客として円を応援している。
「(たとえ夢でも死にたかったよ、ホント!! 心理学で精神分析してもらってアフターフォローはばっちりだけどさぁ)」
「むべやまかぜを あらしとゆーらん。……これ」
―――バシン!
「しるもしらぬも おーさかのせき。……おこ」
―――バシン!
次々に札を奪っていく円。
「うきにたへぬわ なみだなりけり。……よお」
―――スパァン!
今まで取られるだけだったカレンは動き出した円を見て、行動予測を用いて札を奪った。
「なにもただ見てるだけ、座ってるだけじゃないんだから」
反撃とばかりに動き出した円を見てから札を奪っていくカレン。
「(そろそろいこうかな♪)」
「……よのな」
―――スパァン!
今まで通り、動き出した円を見てカレンが札を奪った。
「(これってあと出しじゃんけんみたいよね」」
「あまのおぶねの つなでかなしも」
「え?」
良雄の詠まれた唄と自分の取った札が一致していない。
カレンの取った札は『ひとのいのちの おしくもあるかな』。
「ボクはあの札を取ったハズなのに……なんで?」
「(ふふー驚いてる驚いてる♪」」
カレンが首を傾げているが、札は次々と詠まれていく。
なぜ取ったと思った札と違うのかと、悩みながらもカレンは円の動きを行動予測で詠み続ける。
「また……」
取る札取る札ことごとく違う札を取ってしまうカレン。
実はカレンが取る札には円が自分の試合が始まるまでの間、かるたと同じぐらいの大量名刺を用意し、非物質化の対象、描画のフラワシにてかるたを偽造し非物質化したカードを創っていたのだ。
そして、その札たちを始めの札を混ぜている最中に隙を見て仕込みを、かるたに手を重ねた瞬間物質化し、別の種類の偽造かるたをかるたの上に重ねすぐ非物質化するというのを繰り返していた。
その為、カレンが奪っていく札は物質化され別の札となっていたのであった。
それを知るのは円と、それを手伝ったオリヴィアのみ。
そうして試合は円が勝利を収めたのである。
そして発狂判定へ……。
「うわぁぁぁああああ!!」
銃を乱発する円。
円の眼には異次元生物に触られた場所から溶けていく幻覚を見ている。
「き、消えろぉぉおおおおお!!」
異次元生物を滅却しようとする円。
カレンはテオフィラス・ヴェン 『魔術の真理』(ておふぃらすう゛ぇん・まじゅつのしんり)を使って発狂を回避していた。
そこへクトゥルフ神話学科の学生として救護の手伝いをしていたエイボンの書がやって来る。
「これだけSANチェックに失敗される方がいますと回復をするほうも大変ですわ。さぁ、まずは眠りなさい」
子守歌を歌い円を眠らせると、浄化の札を張り付ける。
「ふぅ……あとはこの方を救護室へ運んで」
「久しいな、エイボン」
「あら、テオ。それにルルイエも。大図書館から出るのはいつぶりかしら?」
「全くだ。おかげでカビ臭い。それより、それを貸せ」
魔術の真理は円を救護室の方へ担いでいく。
魔術の真理が自ら運ぶのは善意からではなく、自分の魔道書に記された恐るべき内容を読み聞かせて、さらなる狂気の世界に導いてやる為だが……。
クトゥルフ崇拝の書・ルルイエテキスト(くとぅるふすうはいのしょ・るるいえてきすと)も、親戚であるラヴクラフト系魔道書との数百年ぶりの顔合わせで、余興を楽しもうとついて行った。
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