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モンスターの森の街道作り

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モンスターの森の街道作り

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街道作り

「思ったよりも順調だねぇ」
 と清泉 北都(いずみ・ほくと)は自らが切り倒してきた木を眺めながらそう呟く。それほど時間が経過していないが既に50メートルほどの距離の間にある邪魔な木を切り倒していた。これは契約者としての身体能力の高さもあるが、それに加えて計画段階で木が密集していないところを街道を作る場所にしているからだ。
 その理由の一つはこうして切る木の量を抑えて、環境への影響と労働を最小限にすること。そしてもう一つが……。
「うわ、オレが目を離している間にこんなに進んだのか」
 と北都に近づいてくるのはパートナーである白銀 昶(しろがね・あきら)だ。
「あ、昶おかえり。どう? 動物たちは」
「ああ。ちゃんと安全なところまで連れて行ったぜ。もふもふサービスつきで」
 木を切る作業に驚いている動物たちを見つけた昶は狼になり背中に乗せて街道作りに巻き込まれない安全なところまで連れて行っていた。
「動物たちには迷惑かけるねぇ」
「こればっかりはな。だが、もともと人や動物たちが通路として使ってたところだ。住処が奪われるって奴らはそんな多くないはずだぜ」
 もう一つの理由が昶の言ったことだった。いわゆる獣道(人も通るためそれよりは少し大きいが)の近くを住処とする動物はそう多くない。もちろん動物たちは戸惑うだろうが、街道を作ることでの影響は最小限になるだろう。街道作りを終えれば数ヶ月も待たずに馴染むことが出来る。
「それで、この木を杭に加工してそれで区切っていくんだっけ?」
「本当は乾燥させてから木材は使いたいんだけど……仕方ないかなぁ」
 いろいろと理由はあるが切ったばかりの木をそのまま木材として利用するのは好ましくない。水分が抜けていく過程で収縮したり、また乾燥させた木材に比べて腐りやすいといったこともある。
「だったら、オレが村長に良い木材ないか聞いてくるぜ。清泉と白銀は先に木を切り進めといてくれ」
 そう二人に話しかけてきたのは瀬島 壮太(せじま・そうた)だ。
「それは助かるけど……ちゃんとした木材があるなら最初から準備されてるんじゃないかなぁ」
「ま、聞くだけ聞いてみるってやつだ。そんじゃ行ってくる」
 そう言って壮太は村長のもとに向かった。

「乾燥させた木材ですか? ありますよ」
 壮太が事情を説明すると村長からそんな言葉が返ってくる。
「だったらそれを使って……」
「ですが、村に貯蓄してある木材を全て使いきっても街道全てをカバーすることは出来ないんです。それに何があるかわかりませんから木材の貯蓄を全て使い切るのは……」
「……そういうことなら仕方ねぇのか」
 諦めて息をつく壮太。それに対し村長は悩ましげな表情を続けている。
「大丈夫だぞ村長。そんなに悩まなくても。悪かったな。あとはこっちで――」
「――そうだ! 私の家を木材として再利用することは可能でしょうか?」
 壮太の言葉にかぶせるように村長はそう言う。
「出来るか出来ないかで聞かれればそりゃ可能だろうが……」
 今回の街道作りに壮太はガーゴイルを連れてきている。それと村人たちにも手伝ってもらえば家を一つ解体しそこから杭を作るのにもそう時間はかからないだろう。
「ではそれでお願いします。私の家と貯蓄している木材を使えばおそらく足りると思います」
「いいのかよ? 住む所とか大丈夫なのか」
「……私と父の二人だけで住む家には広過ぎますから。新しい家が出来るまでは集会所にでもお世話になります」
 それにと村長は前置き、
「村には直接関係のない冒険者さんがこんなに真剣に考えてくれてるんです。村の者としてそれに答えないわけにはいきません」
「道ができりゃオレらも助かる。依頼もされてるし気にすることじゃねぇよ」
「それでも、ありがとうございます」
「礼はまだ早いぜ。街道出来た後に他の奴らと一緒に言ってくれ」
 そう言って壮太はなんだか悪っぽい、それでいて人好きするような笑みを浮かべる。
「そんじゃ、ありがたく村長の家使わせてもらうぜ」
 そうして壮太は村長の家を解体しに向かった。

「木の杭が出来たみたいだね。どうするテノーリオ。僕達で森と街道を区切っていくか?」
 壮太のガーゴイルと村人たちによって加工された木の杭が運ばれているのを見てトマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)はパートナーであり土木建築の技術のあるテノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)にそう聞く。
「いや、そっちは向こうの二人に任せて大丈夫だろう」
 と言うテノーリオの視線の先には北都と昶が協力している姿が様子があった。
「何人か村の人に向こうに回ってもらって俺たちは切り株の除去を続けよう」
「分かった。指示を出してくる」
 テノーリオの助言を受けてトマスは村人たちに指示を出す。その指示を受けて村人たちは杭を打ち森と街道を区切る作業に移ったり、数人がかりで切り株の除去に臨んだり、また切ったばかりの丸太を村へと運んで行ったりした。
「指示出してきたよ」
「おう、おつかれ。流石だな。指示出す姿が様になってたぜ?」
「そっちだってそういう作業はお手のものだね」
 上手いものでテノーリオは一人で切り株を除去しながら数人がかりで行なっている村人たちよりも早く除去を成功させている。力押しだけではこうは行かない。
「けど、村の人達が思った以上に精力的に動いてくれるね。僕の指示を受けて的確に動いてくれる。打てば響くっていうか……」
「身一つで村を作った人たちらしいぜ。与えられたものに満足しているだけの人たちとは違うだろう」
 そう言いながらまた一つテノーリオは切り株を除去する。
「っと……後はここの土を均して……」
 木の根がなくなりできた空白部分を埋めるように土を均す。
「しかし、これだけじゃダメなんだよな」
 綺麗に均した土を見ながらテノーリオは難しい顔をする。
「トマス、何か道を道らしく踏み固める方法思いつかないか? ここにいる人やある道具じゃ苦しいぞ」
 柔らかい土のままじゃ荷車が通ったりするのは大変であるし、草花も生える。街道が街道であるためには土を固くしなければならない。
「んー……ゴブリンの群れにここを通ってもらうとかはどうだろう?」
「そりゃ、ゴブリンの群れが通ればすぐに踏み固められるだろうが……どうやってだ?」
 トマスの提案にテノーリオは疑問の声を出す。
「うーん……そこらへんはまた後で考えるとして、今はとりあえず切り株の除去を進めよう」
「おう、指示だけじゃなくてちゃんと俺の手伝いもしてもらうぜ」
 もちろんだと返事をしてトマスはテノーリオのの作業の手伝いに入った。