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リアクション
3章 16時〜19時
シン・クーリッジ(しん・くーりっじ)は、ライフルのスコープを覗きながら、思う。
(んー……撃っちゃっていいのかなぁ? コレ)
シンの見ているのは、パートナーである九条がいる公園の茂みに潜んでいる、敵だ。
(多分ロゼを狙って隠れてるんだろうけどなァ…、このビルの屋上からだと丸見えだぜ? わざとかなァ? とりあえずロゼに連絡するか)
『あーもしもし? オレ。シンだけど』
『もしもし、はい、ドッピ……』
『ロゼ、それ以上はマズいから。色々と。……えっとね、ロゼの近くにさ、敵っぽいのが見えるんだけど、どうする?』
『えー、そっちから撃てるの?』
『一応。でも見えすぎてる。罠かもしれない』
『撃てるなら撃ってよ。ビビってんじゃないぞ! そんなだからシンはマンモーニって言われるんだよ』
『いや言われたことねぇよ。まぁいいや。撃つぞ。……ちょろいもんだぜ。そのキレイな顔をフッ飛ばしてやる!』
『ちょっと待てシン!』
『何さ』
『その台詞はダメだ。私たちはな! どこぞの世界一腕のたつ殺し屋のように間抜けじゃねぇんだ。【フッ飛ばす】と心の中で思ったならッ! その時スデに行動は終わっているんだッ!』
『ごめんいみわかんない』
『【フッ飛ばした】なら使っていいってことだよ』
『……もういいよ。撃つぞ。他にいるかもしれないから、気をつけろよ?』
そう言って携帯を置き、ライフルを持ち直す。
『……? なんか暗いな。屋上だから影はないはずだけど』
そう思い、上空を見る。
『!?』
そこには、飛行ユニットで空を飛びながら、こちらへマスケットを向けている、機晶姫がいた。
機晶姫、ブリジット・コイル(ぶりじっと・こいる)はマスケットを撃ち込む。
『うぉおッ!? い、意外ッ! まさかビルの屋上のさらに上空から攻撃してくるとはッ!』
シンは言いながら携帯をとる。
『ロゼ! 狙撃は無理だ! 狙おうとしていたら、狙われていたのはオレの方だった! 何を言ってるのかわから以下略!』
『了解! そっちはまかせたよ! シン』
(とは言ったものの、こっちは敵がいることは分かってるけど、どこにいるか分からない。襲われるのを待つしかないね)
ロゼこと、九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)は警戒し、ナイフを構える。
そこで、背後でがさりと、何かが動く音がする。
『後ろっ!』
九条は振り向く。
そこには、剣を振りかぶって近づく、夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)がいた。
九条は【疾風迅雷】で速度を上げ、ナイフで剣を受け止める。
『奇襲は失敗だね』
『……それはどうかな?』
夜刀神はにやりと笑う。
瞬間、九条の背後から、
『まだ他にいる、という可能性は』
『考えなかったのかのう?』
2つ、声がした。
振り向くと、ランスを持ったホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)が攻撃しようと、箒を持った草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)が魔法を唱えようとしていた。
(!! やっばッ…)
諦めかけた、その時。
草薙とホリイの風船が一つずつ、突然割れた。
いや、射抜かれた。
あれは、ライフルによる狙撃。シンの狙撃だ!
『ビューティフォー、ナイス、シン! もう一つもっ……』
『いや、無理だ、ごめんロゼ。たった今、撃たれちまった。リタイアだ』
『えぇ!? じゃぁ状況は変わってないんだけどー! 誰かーッ!』
ぎゃーっと九条は携帯に向かって騒ぐ。
『【光術】!』
草薙が目くらましをしようとする。
だが、九条はそういう攻撃方法があることを、事前に加夜から聞いていた。
目くらましは防げたのだが、続いて夜刀神が剣を振るう。
それを九条はナイフで受け流し、そのまま攻撃に転じる。
が、ナイフは簡単に折られ、武器をなくしてしまった。
残るはライフルのみだ。
『ぐっ……』
(ライフルじゃこの近距離戦では使えない! 仕方ない)
九条はライフルを取り出し、夜刀神の攻撃を銃身で受けた。
(とりあえず凌げた! けど!)
『うりゃぁー!』
ホリイがランスで攻撃してくる。
(ライフルは剣を受けてるし、防御できない。これは…ヤバい!)
九条は咄嗟に、避けた。だが、ホリイの武器は流体金属槍だ。自在に変形する。金属槍は的確に、九条のバルーンを一つ割った。
『やった!』
ホリイはそのまま2つ目も割ろうとする。
だが。
どこからか手裏剣が飛んで来て、ホリイのバルーンが割れた。
『ふうっ! 間に合いましたかねぇ?』
手裏剣を投げた、レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)は、続いてハリセンを取り出し、草薙に特攻する。
急な新たな敵の登場により、状況の整理が追いついていない草薙は、抵抗なくバルーンを割られてしまった。
『むぅ、やられたか。すまん甚五郎』
レティシアの登場で困ったのは夜刀神だ。
一瞬で2対1という状況に陥ってしまった。
(ブリジットに救援を求めるか!? いや、距離があるな。待っていたらやられてしまうかもしれん。ここは逃げるが勝ちだ!)
状況を分析し、夜刀神はすぐに逃走した。
『あ、逃がしちゃいましたねぇ。どうしましょう。追った方がいいですか?』
レティシアは携帯に向かって聞く。
携帯の先は、パートナーであるミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)だ。ミスティは、Aチームの指揮官を担当している大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)の指示を、レティシアに伝える。
『いえ、もうすぐ一時間前ですので、最後に全員で作戦会議するみたいですよ。もう大体集まってますし、ひとまずこちらに戻って来て下さい。 それじゃ、待ってますよ!』
■ ■ ■
『16時から19時までのリタイア数を報告します
A:シン
計一名
B:草薙
ホリイ
計2名
さて皆さん、残るは1時間です!
単純なリタイア数から見ると、Bチームが有利ですかね?
ですが何が起こるか分かりませんよ!
それでは皆さん! 頑張って下さい!』