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リアクション
4 恋の魔法使いです
「ああああーどうしよう」
夢美はドアの陰から会場の様子を見て青ざめていました。
会場は本音クッキーのせいで大騒ぎになっています。
「夢美のせいで大変な事になっちゃった。福山君は見つからないし……グスン」
ただでさえ人が多い上に、みんな仮装をしているので、誰が誰だか分からないのです。
「せっかく頑張って福山君の本音を聞き出そうと思ったのにーーーー」
夢美が泣き叫んだ時、背後から明るい声が響きました。
「トリック・オア・トリート!」
「え?」
夢美は振り返りました。
すると、そこにが魔女が狼男と吸血鬼を引き連れて立っていました。
魔女の仮装をしたオルフェリア・アリス(おるふぇりあ・ありす)です!
「トリック・オア・トリート!」
オルフェリアはもう一度言いました。
(それって、ハロウィンの……? なにか間違っているんじゃ……)
夢美は思いつつも
「あなたは誰?」
聞きました。
すると、
「オルフェです」
「オルフェ?」
「そうです。そして、今日のオルフェは魔法使いさんなんです!」
「魔法使い?」
「そうです! ですから、皆さんに恋の魔法をかけてあげるのです♪」
「恋の魔法?」
夢美の胸がドキンと鳴りました。
「あなたは恋をしていますか」
「してます、してます。バリバリにしてます。これ以上ないぐらいしてます」
夢美はブンブンとうなずきました。
「それでは、オルフェリアの言葉をよく聞いて、一度しんこきゅーなのです」
「し……しんこきゅー??」
夢美は言われるまま深呼吸をしました。
すると、オルフェリアは、まるで呪文でも唱えるように言いました。
「恋するあなたは、とっても可愛い
だから、自信を持って大丈夫なのです
今日だけできる、勇気のおまじないなのですよ?」
そして、夢美に手作りのハート型クッキー手渡しました。
「こ……これ、何?」
「これは魔法使いさんからの恋のお守りなのです」
「恋のお守り?」
「そうです。
これを、あなたの意中の人に手渡して、思いを告げてください。
ただし気をつけて下さい
オルフェリアは今日だけの魔法使いさん
12時を過ぎたらクッキーの魔法も解けてしまうのです
だから、早めに言ってあげて下さいなのです!」
そういうと、オルフェリアはにこっと笑って、
「貴方と、その相手さんにハッピーハローウィン☆なのです♪」
と言いながら去っていきました。
夢美はボーゼンとしてオルフェを見送りました。
「あの子、最後までハロウィンと間違えていた……」
それから、手渡されたクッキーを見ました。それは、オレンジの袋に入れられたマーブルのクッキーで、袋には桃の花が添えられています。
「桃の花?」
その花を見ていうるうちに、なぜか元気がわいてくるような気がします。
「よーーーーし。頑張るぞお!」
夢美は、ガッツポーズで気合いを入れました。
「玉砕覚悟で福山君にアタックするんだ!」
そして、広間に入ろうとしたその時。
「そこの女中!」
またもや、あの怖い中年女性が現れて言いました。
「こんなところで、何こそこそと様子をうかがっているんだい? お前の持ち場は台所だろう?」
「いやあああああああああ」
こうして、夢美は台所へと連れ去られていきました。
一方、会場に入ったオルフェリアは
「皆さんにトリック・オア・トリート」
と叫びながら、ハート形のクッキーを少女達に配っていきました。
「ハロウィーンなので、オルフェが皆さんにとっておきの悪戯を用意してきたのですよ♪」
「ハロウィン、ねぇ……」
吸血鬼の仮装をしたアンネ・アンネ ジャンク(あんねあんね・じゃんく)がつぶやきます。
「あんまり目覚めてから間もないからこっちの習慣とか良く知らないんだけど……仮装だからハロウィンって訳じゃないんじゃない? って、あんまり聞いてないかもだけどさ……」
アンネは肩をすくめました。
そして、
(ま、害がないんならそれでいっか。僕も、こういうの楽しいし。皆が楽しいならいいかなってちょっと思ってきたとこだったし)
と、納得します。
「それにしても、オルフェはなんでハートのクッキーなんて配ってるんだよ?」
すると、オルフェリアは楽しげに答えました。
「恋の魔法だからです」
「恋の魔法?」
「はい! 恋は素敵な事なのです! オルフェは最近、そのことを知ったのです♪ だから、パーティー会場で素敵に恋に悩んでそうな方を発見したら、手助けしてあげるのですよ♪」
「いきなり何を言いだすかと思えば…ハート型のクッキーを作ってくれ……といわれて自分も驚いたが……」
狼男の仮装をした『ブラックボックス』 アンノーン(ぶらっくぼっくす・あんのーん)が言いました。
「確かに、今回は失敗できないだろうし、更に言うなら自分は渡す方には適してない。オルフェと自分で適材適所だろうと思って引き受けた。ちなみに、ハート型のクッキーはチョコ、プレーン、マーブルの三種類だ。それぞれを入れたオレンジの袋に、愛情の意味のある花を添えてある。伝わるか伝わらないかは、その人次第だが…後で調べて判った時、きっと良い思い出になるように」
ちなみに、その意味は
薔薇=貴方を愛してます
ストック=愛の絆
桃=貴方に夢中
マーガレット=真実の愛
スターチス=変わらない心
です。
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