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第2章

 涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)ヴァイス・アイトラー(う゛ぁいす・あいとらー)セリカ・エストレア(せりか・えすとれあ)アルバ・ヴィクティム(あるば・う゛ぃくてぃむ)イングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)の面々は、板場で、源さんに事情を聞いていた。
「音々さんのお兄さんがね。本当なら、この自在刀で、借金取り共々、刺身にしてやりたいところですが」
「あんた、ま、まさか……」
 トリッキーな刀に手をかけ、源さんを驚かせた涼介だが、無論、それを使うつもりはない。
「ここの評判を落とすような、野暮で無粋なことはしたくありません。今日も今日とて、お客様が来ているし、それに、テレビの取材もあるようなので」
「……思いとどまってくれて、良かったです」
「いくら放蕩が過ぎて駄目な人でも、音々さんにとっては、ひとりしかいない大事な肉親です。彼女を悲しませるのはよくない」
「その通りです」
「う〜む、お客様にはいつも通りの風船屋を味わってもらいたいな。トラブルはあっても、風船屋はいい所だと思って欲しいから」
 と、ヴァイスは、食材を選びながら、セリカに話しかける。
「相手は、素直な子だって言うし、今からお互い意識しあえば大人になる頃にはラブはともかく、悪くない関係になれる気はするけどなー」
「けど、女将さんも源さんも、表情がイマイチ冴えない。そういう風には、割り切れないんじゃないか?」
「まあ、俺は男だから、そんな楽観的なのかも。女の子にとっちゃ、一大事だわな」
 そこに、野良英霊の赤川元保と国司元相を引き連れたリースがやってきた。
「えと、お、美味しいお料理とか、お酒とか食べてた方が、気持ちが和らいで、隠してる事とか話し易くなるんじゃないかな、って隆元さんが言ってたので……」
「本料理の前に、酒に合うお通しを出したい、ということかな?」
 事情を聞いた涼介が尋ねる。
「は、はい、反間計……? で、若旦那さんのお付の人が、賭け事の不正をテレビ局の人に話すようにしたいそうです。借金をする必要が無くなれば風船屋さんを売り払う事も音々さんがお見合いする事もしないで済みますよね! だから、若旦那さんやお付きの人と楽しく雑談して……」
「私の『秋の紅葉狩り御膳』は、もう少し時間がかかる。あなたの方は?」
「じゃあ、オレにまかせてくれ。寒い季節に合う小鍋料理を作る」
 と、ヴァイスがキノコと野菜を手に取る。
「あ、親父。ナノ拡散して見学するのはいいけど料理の上漂うの禁止な」
 セリカの制作者で、かつては目的のためなら愛する子供達でも死地へ送る冷酷さを持っていた……のだが、今は、「息子見つけたらもう一人可愛い息子ができた!」などということばかり言ったり思ったりしている残念紳士のアルバは、
「味見がしたかったなあ」
 と、名残惜しそうに呟きつつ、セリカについて、厨房を出ていった。
「私と赤川さんと国司さんが、お手伝いします」
「頼むよ」
 もうひとりのポータラカ人のイングラハムは、料理ができたら、真っ先に若旦那のところに運ぼうと張り切っている。「風船屋のカリスマ接客係」として若旦那を懐柔してしまうつもりなのだ。
「……」
 本人はあくまで真面目に積極的に接客をしたいだけのようだが、異様としか言えない風体のイングラハムが、背後をとったり、不意打ちで現れたりしたら、若旦那は、気絶しちゃうかもしれないなーと思う一同だった。