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【第三話】始動! 迅竜

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【第三話】始動! 迅竜

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 ジェファルコンの危機を救った裁は、滑空するサーフボード――『撃針』に乗って“ドンナー”の周囲を飛んでいた。
 ――撃針。
 それは対イコン、イレイザー用に開発された新しいコンセプトの大型兵器。
 通常時は横になった銃身が2つに分かれて収束したビームを放つ砲門形態だが、サーフボード状に変形し、ビームを推進力として高速機動・突撃して攻撃を行う強襲形態をとることが可能な兵器である。
 裁はたった一人で出撃しているように見えるが、実際は四人のチームだ。
 まず、格闘特化型バトルスーツとしての機能を持つギフトである黒子アヴァターラ マーシャルアーツ(くろこあう゛ぁたーら・まーしゃるあーつ)が武器化して裁に装着。
 更にその上から魔鎧であるドール・ゴールド(どーる・ごーるど)を纏い、そればかりか裁の中には物部 九十九(もののべ・つくも)が憑依しているという豪華な編成だ。
 一人に見えても四人の部隊。それが裁たちNYA☆GA☆SO☆NE☆さんなのである。
 裁たちは四人の特殊技能を活かして連携することで、抜群の機動性を発揮していた。
 自分の空間把握能力と、黒子の行動予測で気流を読んで、その流れにそって移動する裁。
 それは一見遠回りしてるように見えて、その実一番効率のいいアホウドリ――アルバトロスの飛び方を参考にした飛び方だ。
 “ドンナー”を翻弄するように飛びながら、裁は少しずつダメージを与えていく。
(今こそ、禽竜に乗った経験を活かす時)
 裁は前回の戦いを思い出していた。
(禽竜、すごい機体だった。だがヒントは得た)
 次いで裁の脳裏に師匠の言葉が蘇る。
(かつてししょーはおっしゃった。『怒れることに憤ること莫れ、悲しみに哀しむこと莫れ、恐れることを怖れること莫れ』と。『あるがままに受け入れてあるがままに行動せよ、この世に存在してはならぬ感情は存在せず、振るわれるその時まで心の裡に突(す)れ立てておけばいい。枷をなすのは己にではなく、己を縛る枷にこそ枷を成すのだと知れ。』と)
 師匠の言葉を回想しなながら、裁はアホウドリの飛び方で滑空し、振りかざされた反撃の“斬像刀”を回避する。
(明鏡止水と対を成すというその境地に、心に『風』を感じたあの瞬間に確かに到れてたのだと思う。だけど)
 “斬像刀”を回避した直後、相手にできた隙をついて裁は更に攻撃を加える。
「さすがに、自発的に入るのはまだ無理か」
 一人ごちる裁。
(危機的状況だからこそに到れた境地か、まだまだ精進が必要だな)
 身体を傾け、撃針をカーブさせて裁は“ドンナー”の背後へと回り込む。
 裁は『撃針』という新たな翼を得た。
 風を捕らえ風に乗るための翼を。
 これならウォーストライダー並みのスピードは確保できる。
 風を余すことなく捉えてその流れるままに飛ぶ姿になぞらえて裁は『撃針』に呼びかける。
「さぁ、風に乗ろうか――アルバトロス」
 そして裁は、新たな翼にそう名付けた。