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【前編】『大開拓祭』 ~準備期間~

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【前編】『大開拓祭』 ~準備期間~

リアクション

「悪いな、おじょうちゃんにも手伝ってもらっちまって」
「そんなことないよ! お料理のため、お祭りのためだもん!」
 露店設営に精を出す一際小さな少女、ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)
 自慢の料理を振舞うため飲食屋台が立ち並ぶところでの露店設営をしていた。
 今だけは調理器具を大工・裁縫道具に持ち替えている。
「ああ、楽しみだな。……そういや、女の子みたいな綺麗なあんちゃんが料理を作ってくれる人を探してたな」
「ほんと? それは是非是非立候補したいかも!」
「まだその辺に声をかけるって言ってたから、追いかけたらどうだ?」
「うん! あ、でもまだ準備が……」
 どうしようかとおろおろするネージュ。
「いーっていーって。こっちも嬢ちゃんの料理楽しみにして、準備しておくからさ」
 陽気で明るい声でネージュを安心させるおっちゃん。
「そ、そう? うん、わかった。ちょっと行ってくるね!」
 街の人々の暖かい反応に笑みをこぼして、料理人を探している人物を追いかける。
 さて、その人物とは?

 しばらくネージュは辺りを捜索する。
 すると中世的な出で立ちの男性を見つける。
「すいません。今、カフェで料理を振舞ってくれる人を探してるんだけど、我こそはって言う人、いないかな?」
 彼の名前は城 紅月(じょう・こうげつ)。現在、自分が建てた施設【オペラハウス・アヴニール】で料理を振舞ってくれる人物を探していた。
 ようやくお目当ての人物を見つけたネージュが紅月に駆け寄る。
「あの、すいませーん!」
「ん?」
 声を掛けられた紅月が返事をする。
「料理を作る人を探してるって聞いたんだけど」
「うん、そうなんだ。……もしかして手伝ってくれる立候補者かな?」
「うん! カフェで出すお料理なんだよね?」
「そうだね」
「それならハーブを使った料理なんてどうかな? 私、いっつもカレーばっかりだから今回はハーブを使った料理を作ろうと思ってるんだ」
 へぇ、としばし考え込む紅月。指を鳴らした後、ネージュに笑顔で喋りかける。
「ハーブ料理、すごくいいね。是非お願いするよ」
「まっかせといて!」
「うんうん。料理人のあてもついて、電話もOK。これで音楽祭の準備に専念できるな」
「音楽祭?」
 はてな顔のネージュに笑って答える紅月。
「うん。【オペラハウス・アヴニール】で歌を愛する人たちみんなで楽しむ、アットホームな音楽祭を計画してるんだ」
「ってことはそのお料理を私が担当するってこと! わぁ、責任重大だ!」
 驚きながらも喜びを隠さないネージュ。
「後は理事長が来てくれて観ていただければ最高だけど……。今は準備あるのみか」
「それじゃ私も手伝うね! といっても飾りつけとかしかできないけど」
 まくる袖はないものの腕まくりをしてやる気マンマンのネージュ。
「うん。それじゃお願いしようかな、よろしくね」
「おー!」
 これで最高の音楽祭に最高の料理が振舞われる準備は整ったのだった。

「これほどの規模の祭りであれば、当日の警備もあるに越したことはあるまい」
「外部からのものだけでなく内部のものも必要ですね」
「それよりもまず! 祭りの主役である屋台やら施設を豪華にしないとな!」
「こつこつ真面目に宣伝って地味だよなぁ。だけどやれることやらないと」
 各自、自分のやるべきことを見据えている四人。
 カル・カルカー(かる・かるかー)夏侯 惇(かこう・とん)ジョン・オーク(じょん・おーく)ドリル・ホール(どりる・ほーる)
 惇は当日の外の警備を念入りに検討、ジョンは祭り内の警備を計画。
 ドリルは自慢のスキルをいかして屋台の設立・飾りつけ。
 その間にカルは『中継基地』を回り、宣伝活動を行っていた。
「この街にみかじめ料を要求する方はいないかと思いますが念には念をですね」
「悪事を働く者がいなければ、怪我人や迷子をサポートするのもありだな」
「ええ。それよりも危ないのはイレイザー・スポーンの存在かもしれません」
「群れをなして襲ってきたと言っていたな。それだけ大きな動きがあった後、すぐに再来することはないと思うが警備があることにこしたことはない」
「現在も警備をしている方たちがいるので当日もやってくれるよう掛け合ってみるのはどうでしょう」
「うむ。後で言ってみることにしよう」
 念入りに話し込む二人。その二人を他所に黙々と作業をしていたドリルが叫ぶ。
「よっしゃー! 突貫工事で山車が完成したぜ! 見事なできだ!」
 そこには景気付けにはもってこいの山車が完成していた。
「うむ、見事なできだ」
「ですね。ところで、カルはどこまで行ったんでしょうか」
「おーい! みんなー聞いてくれよ!」
 息を荒くして帰ってきたカルの目は燦々と輝いていた。
「宣伝してる時に、ルカルカ大尉にお会いしたら、宣伝ご苦労様って言ってもらえたんだ。なんかこう、傍にいるだけで緊張しちゃったよ!」
「それはカルカーがヘタレだからであろう」
「それはあなたがヘタレだからでしょう」
「そりゃお前がヘタレだからだろう!」
「い、いやいやそうじゃないって! ルカルカ大尉がすごいんだって! マジで!」
 興奮冷めやらぬカル。
 それを見たドリルがニヤリと笑ってカルにはっぱをかける。
「へぇ。それじゃカル、こいつ背負って宣伝と行こうぜ!」
 突貫工事だがかなり大きい山車を指差して言う。
「おう! 上に乗って宣伝のビラとお菓子を投げまくるぜ!」
「何言ってんだ? お前はこいつを引くんだよ」
「そ、それはちょっと……」
「あーそうだよな、大尉に情けない姿を晒しちまうことになるもんなぁ」
「そ、そんなことない! わかった! 全力で引いてやるさ!」
 気合を入れて山車の引っ張る場所に陣取るカル。
「そうこなくっちゃな! さあ前夜祭としゃれこむぜ!」
 同じくドリルもカルと一緒に引っ張るところへ。
「おう? なんだなんだ俺もまぜろ!」
「俺もだ!」
 そんな二人と立派な山車を見つけた街の人たちがみるみるうちに集まっていく。
「よ、よーし! みんな! 前夜祭だ! 盛り上げていこう!」

「「「おう!」」」

 男たちの野太い声がいくつも重なり合った後、山車が宣伝もかねて動き出し、街の中を練り歩く。
「それでは宣伝は二人に任せて、私はもう少し街の人に街の情報を聞いてきます」
「それがしも行こう」
 宣伝を二人に任せて、惇とジョンは警備計画をより詳細にすべく街の情報をいろいろな人に聞き込むのだった。

 賑やかな街の中。静かに佇む施設【イージス大要塞【老山龍】】内には二人の影が。
「……よくわからんが、やたらと物騒なものばかりだな」
 赤い髪を棚引かせるはセリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)
「フフフ……こいつらは諸事情により表には出せないものでな……」
 まんま招き猫を等身大クラスに大きくさせた出で立ちのマネキ・ング(まねき・んぐ)
 大要塞の中には所狭しと並べられた兵器やらが鎮座していた。
「我らはこの大要塞を使用し、当日の警備を担当する予定だ」
「そいつは、まともだな」
「そして今日、我から人民へのプレゼントを用意した。それが、これだ」
 マネキが開けた扉の向こう。
 そこには見渡す限りの【オリュンポス大首領】の姿があった。
「……どれだけ作ったんだお前は」
「その数、百は超えているだろうな」
「……それでこいつらを使って警備するのか? 逆に危ない気もするが」
「案ずるな。こやつらはまだ開発段階。外観だけできるに過ぎん」
「意味ないじゃないか」
 驚きから呆れ顔になるセリスにも動じずマネキが外へと歩き出す。
「なに。それはそのうち使うさ、フフフ……」
「……見せるためだけに来たのか。まったくもって無意味な行動だ」
 お披露目会だけに終わった某武装は置いておこう。
 外に出た二人。するとマネキが手持ちにあった【オリュンポス大首領】をセットしはじめる。
「なにをやっている?」
「フフフ、サプライズだ。さあ、準備完了だ。セリスよ。あれを壊さんように攻撃してくれ」
「断る」
「大丈夫、サプライズ用に調整している」
「そういうことじゃない」
「さあ、セリスよ!」
「……気は進まんが、話も進まんか。……はぁ!」
 セリスが【オリュンポス大首領】を一閃。
 一撃でピンチに追い込まれた【オリュンポス大首領】が内部から発光する。
「本来、こいつはピンチに陥ったときに自爆する。が、フフフ」
「何をするんだか」

――――――――――カッ! バシュバシュ! ヒュー!

「……これは」
「フフフ……」

――――――――――ドーンッ! ドーンッ!

「花火、か」
「祭りといえば花火。これこそが我から人民へのサプライズだ」
「だが、数発程度では逆に空しい」
「ぬかりはない」
 【オリュンポス大首領】から打ち上げられた花火と同調するかのように、他のところからも花火がある。
「街にいた者たちに手伝ってもらい、複数箇所の同時展開の準備にも抜かりはないのだよ」
「……珍しいな。お前にしては上出来のアイディアだ」
「? 我はいつも上質のアイディアしか考えつかんが?」
「ああ。今だけはそういうことにしておくさ」
「わぁ花火だー! もしかして、二人が打ち上げたの?」
 街を見尽くして街の外を見に来た美羽が二人に話しかける。
「うむ。どうだ? 美しいか?」
「うん! さいっこーだね! グッドアイディーアーだよ!」
「そうだろうそうだろう。フフフフフフ……」
「あまり調子に乗るなよ」
 三人が話してる間も花火は打ちあがり続ける。
 広大な荒野に咲き誇るいくつもの花火。その花火に目を奪われて全ての人々が顔を上げる。
 そしてこう思うのだ。
 本番はもっと大きく綺麗な花火を咲かそう。
 最高の祭りにしよう、と。

担当マスターより

▼担当マスター

流月和人

▼マスターコメント

あららら? 思った以上に企画がいっぱいだぞーこれは大変だぞー。
皆様からのアクションを見て最初に思ったのがそんな考え、どうも流月です。
この様子ならば後半は僕が考えた最強の企画等はいらなそうですが、
皆様に対抗して何か考え付いたらばちょこっと小さい文字で書き加えたいなと思っています。
それじゃ次のガイドは全マスターが連動して書き上げるリレーシナリオガイドを。
え、後編を書けって? そうですよね、そうなりますよね。
皆様から頂いた素晴らしい企画を頓挫させるわけにはいきませんので、
不肖ながらこの流月、開催期間中は準備期間中以上のカオs、楽しい喧騒を書かせて頂きたく候にございます。
それではまた、後編でお会いしましょう。

【後編へ続く】

▼マスター個別コメント