イルミンスール魔法学校

リアクション

　花保管庫前。

「……これが保管庫だね」
　メシエは保管庫の扉を開け、中へ。
　中には何種類もの球根や種が無事に眠っていた。
「……球根に種、使えそうな物はありそうだね。エース、これらを育てて花を回収したらどうだい？」
　メシエは庫内を見回るエースに言う。エースの『エバーグリーン』ならばすぐに生長させ回収が出来るので。
「連れて行くのは彼女達の了承を得てからだよ。それよりどの子も綺麗な花を咲かせる子達ばかりじゃないか。リリア、この子達に最適な場所はあるかな」
　エースはメシエの言葉をやや否定しつつ数種類の球根と種を手に取り、同じように庫内を確かめ回っているリリアに訊ねた。
「……そうねぇ……あちらの方がいいかもしれない」
　リリアは外に出て最適な場所を探し始め、すぐに見つかり三人は移動して球根と種を植え、生長させ、テッポウユリとひまわりを無事に回収した。

　回収し終えたところで、
「……回収はそこまでにして戻った方が良さそうだと思うのだけど」
　メシエが終了を提案。今ある花とさゆみ達に渡した量を考えると十分過ぎる量なので。そもそも止めないとエースとリリアは延々と森をさまよったり再生し続けるので。
「……そうね。早く花冠を作って貰わないといけないものね」
「急いで戻ろうか。この子達をまた枯れさせてはいけないからね」
　リリアとエースは花を守るという考えの元、メシエの意見に賛成し、森を出る事にした。
　その途中、森で起きている惨状や花冠を消した犯人を知るなり、エースは植物を大いに心配していた。

　四季の森、東方。

「うわぁ、何というか凄い事になってますねー」
　ホリイ・パワーズ（ほりい・ぱわーず）はランタン片手に色味のおかしい花で溢れる森を見回した。
「……妙な匂いも漂っておるな。泉が酷い有様なのかもしれんのぅ」
　草薙　羽純（くさなぎ・はすみ）は森内を巡るヘドロ化した泉の水に顔をしかめた。
「一刻も早く花を集めた方が良さそうですね。長居して悪影響を受けないとも限りません」
　ブリジット・コイル（ぶりじっと・こいる）は懸念を口にした。
「そうだな。保管庫と巨石の場所も確認しておくか」
　夜刀神　甚五郎（やとがみ・じんごろう）はブリジットの言葉にうなずいた。
　早速、甚五郎達はエースから貰ったデータを元に花探しを始めた。甚五郎とブリジットの『トレジャーセンス』を頼りに花を探し回り、ブリジットは『ホークアイ』で隠れ咲く花にも気を付ける。花保管庫へ行き、ヒメヒオウギの球根とアルメリアの種を速やかに回収し、巨石の場所も確認した。

　花集め開始後しばらく。
「……早く死帰の森じゃなくて四季の森が見たいですね」
　ランタンで襲撃者を退散させてからホリイがため息を吐きながら言った。
「そうじゃな」
　羽純は『ヒプノシス』で眠らせた襲撃者に目を向けながら言った。
「……もしかしたらここが一番多いのかもしれません。花は摘めましたか」
　『しびれ粉』で襲撃者の動きを封じたブリジットは花摘み担当の甚五郎に訊ねた。
「あぁ、無事だ」
　甚五郎は摘んだ菖蒲を見せながら答えた。
　甚五郎達は、先ほどからひっきりなしに襲われているのだ。実は、ブリジットの言葉通り森の中で一番ここが襲撃者が多いのだ。
「……これは」
　ふとブリジットが木の枝に最近付着したと思われる血液とその下の地面に落ちている黒ずんだ花弁を一枚発見した。
「どうした？」
「甚五郎、血液が付着した木の枝があります。誰かが怪我をしたのかもしれません。花妖精の可能性もありますが、このような物が近くに」
　訊ねる甚五郎にブリジットは落ちていた花弁を拾い、皆に見せながら言った。
「その花びらは今咲いている物とは違うな。という事は、犯人がここを通った時に怪我をし、花びらを落としたという事か。羽純」
　甚五郎は今まで黒ずんだ花を見てはいない事から消えた花冠だろうと予想。違うという事はまだ同じ物を見ていないという事だから。羽純を呼びつけ、血を流した人物の特定を頼む。
「試してみるとしようかのぅ」
　羽純はそっと血液に触れ『サイコメトリ』を使用した。
　記憶はすぐに手に入り、手についた血液を丁寧に拭った。
「……何か分かりましたか？」
　ホリイが恐る恐る訊ねた。
「ここを通る時に枝に気付かずに引っかけ怪我をしたようじゃ。その勢いで花びらが落ちたみたいだのぅ。顔は見えなかったが、幼い手と見覚えのあるペンダントが確認出来たのじゃが」
　羽純は見た記憶を伝えた。
「フォリンか？」
　甚五郎は羽純が言った特徴、特にペンダントから思い当たる名前を口にした。
「おそらくそうじゃろう」
　羽純は苦い顔でうなずいた。
「……確か、ヴァイシャリーで未完成の薬を手に入れたのでしたね。完成させるための材料がこの森の花冠という事でしょうか」
　ブリジットは花弁を見つめつつ今まで集まった情報をまとめ、これからの事を予測する。
「おそらく間違いないだろう」
　甚五郎もまた同じ考えだ。
「……嫌な感じじゃな。悪しき老魔女から貰った薬、妙なペンダント、負の思いを吸った花冠、どう考えても悪い事しか思いつかぬな」
　と羽純。何をどう組み合わせても悪い未来が先に見える。
「……甚五郎、どうしますか。もしかしたらもう薬は完成しているかもしれませんよ」
　ホリイは心配そうに言った。フォリンの事が気に掛かると言ってもどこに行ったかは分からないし、森やグィネヴィアとフウラ祭司達を助けねばならないためすぐには動けないのだが。
「その可能性は高いな。気にはなるが今はこの森の一件が先だ」
　甚五郎は気にはなるが決断を下し、花探しを続ける事をにした。当然この事は皆に知らせた。
　フォリンの事もあってか花探しは一層迅速さを増し、ヒルザキツキミソウ、ガウラなどの花を摘み取っていった。その途中、捜索対象者の無事と森に起きている災厄を知った。集めた花達についてホリイがチョイスの理由を甚五郎に訊ねるとゲン担ぎと花言葉の意味合い的に選んだと答えていた。