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血塗られた屋敷の幽霊少女

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血塗られた屋敷の幽霊少女

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序章 鏡の世界へ


「瑛菜……大丈夫?」

 熾月 瑛菜(しづき・えいな)から連絡を受け急ぎ駆けつけたローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)マリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)
 しかし、当の瑛菜は酷く怯えているようだった。
 心配して声をかけるローザマリアに、瑛菜は気丈に振舞う。

「大丈夫よ、行きましょ」
 ローザマリアに渡されたハーブティーを飲み干すと、瑛菜は森の中のお屋敷へ向かい歩き始めた。
 歩きながら、自分が何を見てきたのかをローザマリア達に話す。
「気が動転していたとはいえアテナを置いて逃げるなんて…」
 強く拳を握る瑛菜。その手に、ローザマリアの手が添えられる。
「あまり自分を責めないで、瑛菜。そんなものを見てしまったら誰だって逃げ出すわ」
「でも……!」
「後悔する暇があったら、少しでも早くアテナの所へ行きましょ。ね?」
 そう言って優しく微笑むローザマリア。
「……ありがと、ローザ」
 自分を励ましてくれるローザマリアに、瑛菜もぎこちなくではあるが笑顔を浮かべて見せた。

 ややあって、木々の向こうに一軒のお屋敷が見えてくる、
「あそこよ……」
 姿を現したのは二階建ての大きなお屋敷だった。真っ直ぐに玄関扉へと向かう瑛菜だったが、扉の取っ手に手をかけた所でその動きが止まる。少しだけ、手が震えていた。
「瑛菜、大丈夫よ。あなたは一人じゃない。私達が一緒にいるわ。皆でアテナを助けに行きましょう?」
 ゆかりの言葉に、瑛菜は一つ頷くと勢いよく扉を開ける。

 屋敷の中は薄暗く、人の気配は無い。
 瑛菜は迷うことなく屋敷の一角へと向かう。
「ここだよ、アテナが居なくなったのは」
 そういって瑛菜は足を止めた。
 そこは細い廊下で、両側の壁にいくつもの鏡がかけられていた。全身を映せる位大きなものも幾つかある。
「そしてこっちの鏡が……」
 瑛菜は一つの鏡を指差す。そこには、鏡を覗き込む瑛菜たちが映っていた。
「特におかしな所は無いみたいだけど……」
「…! 皆、あの鏡!」
 マリエッタの声に振り向く三人。見れば、鏡の一つに異様な光景が映っていた。
 鏡には瑛菜たちの姿は映っていない。代わりに、彼女達の今いる廊下が映っていた。
 鏡に映った廊下は所々に赤黒い血がこびりついている。ちらりと後ろの廊下を見る瑛菜だったが、やはり、血などどこにも付いていない。
「なるほどね……これは確かに不気味だわ」
 ローザマリアが瑛菜を庇うように前に出て、用心深く鏡を調べる。
 その時、

『きゃああああああああっっ!!』

「今の声…アテナ!?」
 悲鳴は鏡の中、映っている通路の奥から聞こえてきた。
 躊躇うことなく、瑛菜は鏡へと飛び込む。

「あ、瑛菜! 一人で突っ走っちゃダメよ!」
 慌ててローザ達もその後を追った。