リアクション
09 終わりの時 そして、だんだんと目覚めて退場していく者達が増える中で、佐倉 薫(さくら・かおる)と融合したエメラダが満を持してアリス=リリーに挑みかかる。 理性の化身たるエメラダだが、未だ欲望の化身たるリリーに今一歩及ばない。 「くぅ、まだ【欲望】が【理性】を上回るか、けど……」 エメラダはスゥーッと息を吸い込むと、全世界に響き渡る声で告げた。 「ねえ、本当にこんな世界でいいの!? こんなので満足なの? たった一人のわがままでなんでも改変される世界で満足なの!? みんなの力を貸して!クロガネの真の力を解放するよ!」 そして、その祈にみんなが答えた瞬間、アリスは最後の力で、夢の世界の法則をねじ曲げた。 ダリルがゆっくり降りてくる流星の速度を早めたのは記述したが、ことここにいたってそれはさらに速度を上げて落ちてくる。 そして、落ちてくる流星が、あろうことか、カナダライに変わる。 「……はぁ!? タライ? ちょおま最後の最後までナニやらかしてくれてんの! いろいろだいなしだよ!」 ほとんどツッコミ役とかした甲斐が、律儀にツッコミを入れる。 「こ……こんなお約束だなんて………」 猿渡 剛利(さわたり・たけとし)が呆然と呟く。 そしてその降りてきたタライがアリス=リリーに激しい音を立ててぶつかる。 「あー……」 美羽が思わず間の抜けた声を漏らす。 「ちょお! まて、ふざけんな、おい! なんだよそれ!!! カネタライってなんだよ!!」 唯斗が怒りながらそう叫ぶ。 「あー、もう! だからグダグダなんだって!!!」 ジヴァがいらいらを叩きつけるように叫ぶ。 これが完全なきっかけになった。 修正力が一気に働き、勇者たちに急激に活力が満ちる。 【欲望】が好き勝手をやってきた反作用として、【理性】の力が勝り始める。 「さあ、今のうちにやっちゃいなさい!」 「そして早く現実に戻ってくるのだ!」 イーリャとハデスの声が虚空から聞こえる。現実との接点ができたのだ。 (リリー、いい加減にしないか!) そして、コリマの思念波も世界に響く。 《ひぃ、ごめんなさいごめんなさい!》 悲鳴のようなリリーの謝罪が聞こえる。リリーは頭を抱えながらビクビクとしている。 「さあ、夢をハッキングするのだ! やれ、勇者たちよ!!」 そして、勇者たちのジェネレーターと武器にエネルギーが満ちる。 「行ける!」 美羽はガッツポーズを作ると、聖剣デュランダルにエネルギーを回す。 聖剣デュランダルが超巨大サイズー―要塞以上の巨大サイズに変形する。 そして、それを振り下ろす。 「よっしゃあ、受け取れ、美羽!!」 唯斗は神武刀・布都御霊を美羽のグラディウスに投げつける。グラディウスがそれを受け取ると、神武刀・布都御霊とデュランダルが融合する。 そしてカリバーンが神剣形態に変形し、自らがデュランダルと融合しにいく。 (少女よ、叫ぶのだ。言霊を……創世両断、と……) そして、美羽にハーティオンの声が聞こえる。 「よーし! 創世両断!」 その言霊に導かれ、剣が動き出す。 「ジヴァ、行くわよぉ!」 「了解!」 ミレリアとジヴァが同時にミサイルを放って援護する。 『創世両断!! キャリバァァァッ!! クロォォォスッ!!』 十字に交わる剣の軌跡が通り過ぎると、リリーは業火とともに爆発する。 グラディウスとカリバーン、そしてカリバーンから分離したハーティオンがポーズを決める。 剣を大地に突き刺したカリバーンとハーティオンはそのままつま先から粒子となって消え去る。 そして、ハーティオンから分離したバグベアードが、世界に告げる。 《コノ 我輩タチノ戦イハ ウタカタノ夢……ダガ…コレハ ハルカ昔ニ世界ニ刻マレタ 記憶ヲ辿ッタモノ……人々ヨ……ドウカ 忘レナイデ欲シイ。 勇者ハ 時ヲ越エテ 次元ヲ超エテ 必ズ君達ト再ビ出会ウ……。君達ノ心ニ 勇気ノ心ガアル限リ キットイツカワレラハ出会ウノダ……》 今はもう失われた遙か遠い世界の記憶という形。リリーの故郷の、世界の記憶…… |
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