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今日はハロウィン2023

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今日はハロウィン2023
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リアクション

「フリューネが魔女で、私が使い魔って感じね」
「そうね。リネン、とても似合ってる」
 ハロウィンサブレを使用してリネン・エルフト(りねん・えるふと)は黒猫風の猫耳娘でフリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)はカジュアルなドレス風の魔女服を着た魔女に変身していた。
「ありがとう。じゃぁ、早速……」
 フリューネの褒め言葉に嬉しくなるリネン。何せ想い成就して恋人になれたので尚更。
「トリック・オア・トリートね」
 フリューネがリネンの言葉を先回り。
「そうそう。と言ってもただの交換になってしまうけど」
 少し肩をすくめるリネン。
「そうね。どっちがいいか決めていいわよ。両方ともしっかり準備してあるから」
 悪戯な笑みを浮かべるフリューネ。それを見たリネンは以前自分が男装して口説こうとしてやり込められた事を思い出した。
 そのため選んだのは
「……だったらトリック! 今日は悪戯子猫な気分だから♪」
 悪戯だ。以前のリベンジも含んで。
「分かったわ」
 にこやかな笑みを湛えるフリューネ。まるでこうなると知っていたかのような。
 とにもかくにもまずはリネンの悪戯から
「見た目はお菓子の箱ね」
 フリューネは念入りに外観を確認してから慎重に箱を開けた。
 途端、
「!!」
 『風術』を仕込んだニルヴァーサルボールが割れてぽんっと顔に吹き付けると同時に箱に仕込んでいた紙吹雪が舞い上がった。
「ハッピーハロウィン、フリューネ!」
 軽く驚いているフリューネに少しだけ満足するリネン。
「可愛い悪戯ありがとう、リネン。次は私の悪戯をどうぞ」
 フリューネは笑みを浮かべた後、錠のついた箱と鍵をリネンに差し出した。
「この鍵で開けるのよね?」
「そうよ」
 訝しげに錠と鍵を見比べるリネンにはっきりと返答するフリューネ。
 どんな悪戯なのか警戒しつつ鍵を開けると
「……また箱が入ってるんだけど」
 出て来たのは少しだけ小さい箱だった。これまた錠が掛かっている。
「大丈夫よ。その鍵で解錠出来るから」
「うん」
 リネンは再度フリューネの言葉通り手にある鍵を使用して箱を開けるが
「……フリューネ?」
 また同じ箱。リネンは気になってフリューネに視線を送る。
「中にはびっくりする物が入っているから」
 フリューネはなおもにこやか。
「……本当に? 物が入っている感じがしないんだけど」
 リネンは少しだけ疑いながら箱を振るが何も音がしない事に眉を寄せた。
「特別な箱だから音は漏れないわ」
 フリューネは悪戯な笑みを浮かべて楽しそうに言った。
「つまり開けないといけないのね」
 リネンは真剣な表情で箱突破に挑む事に。

 箱解除を開始してしばらく後。
「……いくつ入ってるんだろう」
 リネンは箱突破を決め込んでからいくつもの箱を開けていた。場所もベンチに移してやる気満々。隣にいるはずのフリューネはいつの間にかいない。
「……もうこれだけで十分悪戯だと思うんだけど」
 リネンはぽつりとぼやく。
 そんな時、
「使い魔さん、ハーブクッキーをどうぞ」
 ハーブクッキーを手に持ったフリューネが現れ、リネンに一枚差し出した。近くにあったクッキー屋が気になって席を外していたのだ。
「ありがとう」
 礼を言ってクッキーを貰って頬張るリネン。
「……ここまで開けたのならあともう少しよ」
 リネンの隣に座ったフリューネはクッキー片手に箱突破の進み具合を確認。
「あともう少しなら頑張ってみようかな」
 まさかのあともう少し発言に再びやる気を出すリネン。
 このやり取りは恋人と言うよりは家族や姉妹のような感じ。

 フリューネの言葉は正しく
「開いた。鍵が掛かった箱が入っていない」
 もう少し箱を解錠した所で終わりがやって来た。
「お疲れ様、リネン」
 フリューネは拍手してリネンの頑張りを労った。
「さてとびっくりする悪戯をこの目でしっかりと拝ませて貰うからね」
 リネンは最後の箱に入っている可愛い錠のついていない箱を取り出した。
「どうぞ。本当に驚くわよ」
 フリューネは陽気に笑いながらリネンを見守っている。驚くのがもう分かっているというように。

 箱を開けた途端、
「……これって」
 リネンは予想外の中身に驚きの声を上げた。
「ほら、驚いた」
 フリューネは満足そうな声を上げた。
 中に入っていたのは、恐ろしい物ではなく
「……フリューネ、これは少しずるい悪戯だと思う」
 リネンの口を可愛く尖らせる物だった。
「でも驚いたでしょ?」
「……そうだけど」
 してやったりの顔をするフリューネに不満いっぱいのリネン。なぜなら中に入っていたのは揃いの装飾品だったから。
「こうして一緒にいられる時もあるけれど、離れている時もあるでしょ。もしかしたらその時は危険な目に遭っている時かもしれない。だから、離れても一緒みたいな……ちょっとしたお守りみたいな感じかしら」
 装飾品に目を落とすフリューネの表情は真剣そのものだった。互いに戦闘とは縁があり危険な目に遭って最悪命を落としてもおかしくはないから。
「同じ場所にいなくとも一緒にいるかぁ……ありがとう」
 リネンはうなずきながら装飾品を一つ手に取り隅々まで確認した後、改めて感謝を言葉にした。
「どういたしまして」
 フリューネはリネンに答えた。
 その後、リネン達はのんびりとハロウィンで賑わう街を歩き回った。