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リアクション
プロローグ
『ミナホちゃんの宣言で始まったミュージックフェスティバルだけど、みんな楽しんでくれてるかな』
ニルミナスの村。ミュージックフェスティバルと称された祭が開催されているこの村で、祭の会場のあちこちに設置されたラジオからアテナ・リネア(あてな・りねあ)の声が発せられる。
『楽しんでもらえているとうれしいんですが……』
アテナと同じようにラジオの向こうからこの村の村長であるミナホ・リリィ(みなほ・りりぃ)の声が届く。
『もう、ミナホちゃんがそんな弱気でどうするの? もっと自信持たないと』
『そうですね。ところでアテナさん。そろそろこのラジオがなんなのかとか、私たちの紹介とかをしませんか?』
『あれ? やってなかったっけ?』
『はい』
『……というわけでパーソナリティのアテナだよ。この番組はミュージックフェスティバルで行われるいろんな企画を楽しく紹介していくよー』
『消去法でサブパーソナリティになったミナホです。企画の紹介以外にもこの村をよく知らない人のために村の紹介をしたり、ラジオあてに届けられたお便りを紹介したりする番組です』
『お便りは村のサイトからメールで送れるようになってるからどんどん送ってね。……ところでなんでミナホちゃんそんなに後ろ向きになってるの?』
『緊張しているんです。アテナさんはしてないんですか?』
『うーん……人前に立つライブとかと比べるとそんなに緊張しないかなぁ』
『そうですか。それでは早速このミュージックフェスティバルの趣旨を紹介していきましょうか』
『……無理やり台本の流れに戻したね』
(……つかみは十分ですね)
アテナとミナホ。二人がラジオ番組で話す様子を見守りながら御神楽 舞花(みかぐら・まいか)は思う。村長であるミナホが緊張して固さがあるが、アテナが自然体なために対比することでちょうどいい感じを出している。
(この調子で祭を盛り上げる一要因になれるといいんですが)
このラジオ番組を企画したのは舞花だった。数ヶ月前から企画を持ち込み準備する。機材等を準備したのは舞花であったし、ちょっとした台本もミナホと相談しながら作っていた。
『音楽を通じてこの村を……そして音楽自身を感じてもらいたい。きっかけはまた別でしたが、今はそんな願いをミュージックフェスティバルに込めています。そして何より……』
『みんなに楽しんでもらいたい……だよね?』
(手伝ってよかったです)
舞花はそう思う。祭は始まったばかりだけれど、そう思えるだけの何かが既にあった。
『と、そんなところでいったん休憩……もとい音楽流すねー』
『曲は――』
(ひと段落ですね)
裏方である舞花はアテナたちのタイミングに合わせて音楽を流す。その作業が終わった後に録音したこれまでのラジオのデータをどこかに送った。
(……聞いてもらえるでしょうか)
今は離れて行動している御神楽 陽太(みかぐら・ようた)たち……自分の大切な人たちがちゃんと聞いてくれるといい。舞花はそう願った。
音楽が終わり、ラジオはまたアテナとミナホが話し始める。裏方である舞花も気を抜くわけには行かず、二人の様子を真剣に見守る。
だから舞花は気づかなかった。自分にひとつのメールが届いていることを。
『とても活気のあるラジオ番組ですね。2人で聞いていて、お祭りの熱気やニルミナスという町の朗らかな雰囲気が伝わって来て、すごく心地好い気分になれました!』
そのメールを読んだとき、舞花がどう思ったか。それは舞花だけが知る。
多くの人の想いと願いを乗せて祭は動き始めていた。
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