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とある魔法使いと巨大な敵

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とある魔法使いと巨大な敵

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・Shooting Star

 
 計千二百四十二回のじゃんけんの戦いが終わりを迎える。
「勝った! やっと勝ったわ!!」
 チョキを出したままはしゃいだエリスに、パーを出したアゾートが悔しがるのを見てアッシュは、遠い目をして一つ頷いただけだった。
「仕方ないわ……今回はアッシュを諦める事にするわ。アッシュ、がんばりなさいよ」
 アゾートは軽くため息をつくと、まだ遠い目をしているアッシュの背中を一回叩いて校庭から駆け足で去って行った。
「さぁ、決着をつけに行くわよ」
 気合いを入れたエリスが言うのと森の方で一段と大きな爆発が起きたのはほぼ同時だった。

黒い煙がもうもうと立ち上る森を見て、藤林 エリス(ふじばやし・えりす)ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)とアッシュは巨大アッシュが爆発した方向へと急いでいた。
「ちょっと! あの爆発結構至近距離だったよ。皆大丈夫よね?」
 エリスはがくがくと本物のアッシュを揺さぶると、空飛ぶ箒シュヴァルベに乗って一足先に現場まで飛んでいった。

「皆……大丈夫……」
 エリスが声を張り上げて皆の無事を聞こうとした時だった。
「アッシュ! 死ね死ね死ね!」
 さゆみが見境なく【シュヴァルツ】【ヴァイス】を乱射していた。
「ああっ……エリス。いい所に来たわ。さゆみを止めてほしいの」
 零がやって来たエリスに向けて言うが、エリスはさすがに発砲している相手は無理だと伝える。
「ええ……そんなぁ……」
「うふふ……ひぇひぇひぇ……凍れ……目に付く者全て凍ってしまうがいい!」
 さゆみと同じく暴走気味のアデリーヌは【ブリザード】をばかすかと詠唱し、周囲の木々が凍りついて行くのを見て笑っていた。
「ああ……私はもう駄目です……がんばってくださいです」
 ブリザードの直撃を受けたのかそれとも爆発のせいなのかは判らないが、刹那の身体はぼろぼろになっていて諦めたような言葉を言うと気を失った。
「エリス! 皆は大丈夫そうか?」
 後ろから来たアッシュとノーンは、目の前の大丈夫とは言い難い状況を見ると絶句した。
「……この状況を打破できるのはアッシュ、あんたしか居ないのよ!!」
 振り返ったエリスの目にはうっすらと涙の粒が光る。
「そうだよ。巨大ヒーローになってみんなを守って! 今回はアッシュちゃんが主役なんだよ!」
「そんな事言われても……いや、確かに俺様が発端ではあるのは確かだけどあの巨大アッシュを倒す術なんて考えてないし」
「ああああっ! もう!! アッシュのアシストはあたし達がやるから、あんたがあいつにトドメを差しなさい! 自分自身の煩悩に打ち勝つのよ!」
 エリスはやる気のない声で答えたアッシュに苛立つと、手に持っていたレッドフラッグロッドをアッシュの眼前に突き付ける。
「愛と正義と平等の名の下に! 革命的魔法少女レッドスター☆えりりん! アルティメットモード! 活躍の機会平等を望むあんたの夢、魔法少女が叶えてあげるわ☆」
「E.M.Tね!」
「……なにそれ」
「え……長そうで舌を噛みそうだったから、略してみた」
 ノーンの言葉に、エリスは咳払いを一つすると【空飛ぶ魔法↑↑】を唱えアッシュにかける。
「ノーン! 問答無用でアッシュを巨大化させなさい!!」
「了解!!」
 ノーンは、いつの間にか取り出していた巨大化カプセルを空を飛んでいるアッシュに照準を合わせスイッチを入れた。
 懐中電灯のような光がアッシュを一瞬照らすと、アッシュは見る見るうちに巨大アッシュよりも大きくなり……一分後に巨大アッシュをお尻で潰したのだった。