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正体不明の魔術師と同化現象

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正体不明の魔術師と同化現象

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第六章 遺跡・撮影者と共に侵入、こちらのエリザベート達の警護


 空中でグリフォンと派手に戦闘を繰り広げている頃、遺跡前。

「魔術師の方は大丈夫そうだから要である撮影者を護衛しつつ遺跡に行こうか。一つの存在ならなるべく早く元に戻してあげたいからね」
「そうだな。装置破壊の奴らもいるし魔法の方は心配無いだろ」
 清泉 北都(いずみ・ほくと)と白銀 アキラ(しろがね・あきら)は撮影者を護衛して遺跡に侵入する事にした。
「それは心配無いとしても遺跡内部の様子が気掛かりだね。随分、遺跡を攻撃しているみたいだから地形が変わっているかも……とにかく侵入してからだね」
北都はあちこち崩れかけている遺跡を見上げ、少々危惧を抱くもすぐに行動を起こす。
「だな。まずはあいつを引き取ってからだ」
 白銀はさゆみ達に警護されている撮影者にあごをしゃくった。
「……まずはそれからだね」
 北都達は撮影者警護中のさゆみ達の所へ行き、撮影者を引き取った。

 それから
「改めてオレ達がお前を警護して魔術師の所に連れて行ってやる」
「僕らがいるから大丈夫だとは思うけど、念のためにこれをポケットにでも」
 撮影者に挨拶をして北都は『禁猟区』付のお守りを差し出した。
「……」
 撮影者はお守りを受け取り服のポケットに入れた。
「衰弱があるというけど、大丈夫?」
 北都は見るからに調子が悪そうなので聞いた。
「…………問題は無い」
 と感情が無いかのような淡々した調子で答える撮影者。さゆみ達のおかげで少々衰弱が緩和したとはいえ辛そうである事は変わらない。
「それならいいけど。もし無理そうな時は言って。考えればいくらでも何とかする方法はあるはずだから」
 北都は顔は見えないが明らかに具合が悪そうだと分かるため念を入れる。
「……分かった」
 撮影者はそう言ったきり黙った。
「それじゃ、さっさとこの騒ぎを収めに行くか」
 白銀の合図で遺跡への侵入が始まった。
 北都達は撮影者を警護しつつ慎重に目的を目指すのだった。一刻も早く撮影者と魔術師を統合するために。

 遺跡前。

「あの装置が魔術師に有効っつーのは十分に解ったが……全く使えねぇのはキツいな。改善要望として中和装備が欲しい所だ。装置破壊の奴らが侵入したとはいえ……道中、フレイ達に任せる状態になりそうだ。悪ぃが頼む」
 ベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)がグリフォンと空中戦を繰り広げる討伐者達を見やりながらぼやいていた。味方側まで装置の影響を受けるとは魔法専門としては辛いもの。だからといって大人しくするつもりはベルクにはない。魔術師の明らかにされていない謎を追う必要があるからだ。
「ふふん、ざまぁみろなのですよ」
 忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)は本日役立たずのベルクを見て一人悪態をつき優越感に浸っていた。
「心配はいりませぬ。マスター、道中は私が必ずやお守り致します故お任せ下さいまし」
 フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)は護衛役としてベルクの役に立てるとあってこの上なくやる気に満ちていた。
「……あぁ」
 ベルクはフレンディスのやる気に多少の心配を抱いていた。そこが苦労人の証だったり。
「ジブリールさんもこの度はお手伝い有難う御座います。でもお怪我をなさらぬよう決して無茶しないで下さいね?」
 フレンディスは頼りになる仲間の一人に声をかけた。
「任せろ、戦う事ならオレも出来るし手伝うよ、フレンディスさん、ベルクさん」
 ジブリール・ティラ(じぶりーる・てぃら)は元気に答え、こちらもやる気である。フレンディスとベルクに家族として受け入れられてから家族のために自分に出来る事を精一杯やろうと決めているためだ。
「ポチも頼りにしていますからね」
 フレンディスはいつものようにポチの助にも声をかける。
「ふふん、お任せ下さい、ご主人様。魔法が使えぬ今こそ、このハイテク忍犬の出番なのですよ。存分に役に立ってみせますよ!」
 ポチの助はライバル視しているジブリールをちらりと見た後、負けぬぞという勢いで自分をアピールする。
 士気が高まったところで
「さてと、散々追い続けてきた魔術師に会うその前の厄介な問題を解決しねぇとな」
 ベルクが言葉を挟んだ。
「撮影者さんの護衛ですね」
 フレンディスはそう言うなり撮影者の居所の確認に向かった。

 しかし、撮影者は北都達と共に遺跡に侵入した後だった。
「もう別の護衛と一緒に侵入したみたいだね。どうする?」
 ジブリールがこれからの事を訊ねた。一番の目的が離れてしまったので。
「魔法凍結装置を破壊しつつ合流を目指すか。ここまで来て諦める訳にはいかねぇからな」
 大人しくするつもりは全くないベルク。散々振り回されて何も知らぬままなのは我慢ならないからだ。
「では、行きましょう! ポチ」
 ベルクが行く事を望むのならとフレンディスには迷いが無かった。まずはとポチの助に事前準備を頼む。
「お任せなのですよ」
 『コンピューター』を有するポチの助は獣人化してノートパソコン−POCHI−を使用して『防衛計画』にてグリフォンまでの道筋とその間にあると思われる魔法凍結装置のルートを速やかに確認。遺跡内部の地図は前回の探索できっちり入っている。
 すぐに
「完了なのですよ」
 ポチの助はドヤ顔で導き出したルートを皆に披露した。ポチの助は端末機を弄るため獣人姿のままビグの助の背に乗って移動し、フレンディス達はその後ろを付いて遺跡に侵入した。

 合流目指し兼装置破壊を開始してしばらくの遺跡内部。

「見付けましたよ、ご主人様!」
 『捜索』を有するポチの助はすぐさま魔法凍結装置を発見し、フレンディスに自慢げな顔を向けた。
「お見事です、ポチ」
「さっさと解除をしろ」
 フレンディスはポチの助を褒めるが魔法が使えぬベルクは急かす。
「役立たずエロ吸血鬼は黙って見てろです。今こそ僕の科学力を最大限に発揮する時なのですよ!」
 この時ばかりとポチの助はドヤ顔でベルクを見ては胸をこれでもかと反らす。ハイテク忍犬として輝いている瞬間である。
 その時、
「……敵が来るよ」
 『殺気看破』を有するジブリールは接近する殺気に気付き、身構えた。
「分かりました。マスターは後ろに下がっていて下さい。ポチはそのまま解除を続けて下さいね」
 フレンディスも構えて迎撃態勢に。
「あぁ、任せる(今回はすっかりお荷物だな)」
 ベルクは大人しく後ろへ下がり役立たずな自分に溜息をついた。
「分かりました、ご主人様! いかなる時でもこの僕は必ずや任務を全うするのですよ」
 『廃れた知識』を用いてポチの助は解除に挑む。
 フレンディスとジブリールが奮戦する中、
「……ちっ」
 魔物の不意打ちがベルクを狙うも『行動予測』で見事に回避し、護身程度だが今使用出来る攻撃『魔闘撃』で怯ませた。
 そこへ
「マスター!」
 フレンディスの鉤爪・光牙が鎖鎌のように飛び魔物を倒した。
「助かった」
 ベルクは礼を一言。
 ベルクを襲ったのが最後の魔物だったのか無事に戦闘は終了した。
 しかし、タイミング悪く装置解除が完了したのは
「無事に解除をしたのですよ!」
 戦闘終了のこの時だった。戦闘中であれば、すぐさまベルクも参戦出来たのだが。
「お疲れ様です、ポチ、ジブリールさん」
 フレンディスはジブリールとポチの助を労った。
「これくらい大した事無い。みんなのために出来る事をするのが今のオレの出来る事だから」
 ジブリールは自分の出来る事が出来て満足そうであった。
「……む」
 ポチの助はジブリールを見てむぅとしていた。家庭内ヒエラルキーを脅かすジブリールに対抗意識を燃やしているのは明らか。

 この後、案内人ポチの助のおかげで余計な迂回などする事無く順調に道を進んでいた。時には他の装置破壊者が片付け魔法使用が出来る場所を通ったりして装置破壊に勤しんでいる時に撮影者警護組に遭遇し、行動を共にする事にした。