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第四回葦原明倫館御前試合

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第四回葦原明倫館御前試合

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○第三試合
エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)(蒼空学園) 対 東雲 秋日子(しののめ・あきひこ)(葦原明倫館)

 今年で四回目の御前試合。秋日子が選手として参加するのは、三度目だ。今年こそは……! と気合を入れ、右手に銃を、左手に木刀を握り締めた。
「よーし! 頑張るぞーっ!」
 秋日子は試合開始と同時に地面を蹴り、正面から木刀を振り下ろした。エリシアは左手で木刀を支えることで受け止め、更に回転させ、秋日子のそれを弾き飛ばした。
「あっ!」
 だが秋日子は、すぐに左の銃を構えた。狙いをつけ、【魔弾の射手】を発動する。
 しかし、その瞬間、エリシアの顔が秋日子の眼下にあった。
「なっ――!?」
 今度は、あっと言う間もなく、エリシアの木刀が額を二度叩き、秋日子の最後の御前試合は終わったのだった。

勝者:エリシア・ボック


○第四試合
緋柱 透乃(ひばしら・とうの)(葦原明倫館) 対 冷 蔵子(ひやの・くらこ)(葦原明倫館)

 防御行動を殆どせず、耐久力に任せて敵の攻撃を食らいながら、破壊力に任せて相手を粉砕する、『肉を切らせて骨を断つ』戦い方をする透乃にとって、威力や耐久よりも当てることに重点が置かれているこの御前試合のルールは非常に相性が悪い。
 故にこれまで避けてきたのだが、「全学最強決定戦・葦原明倫館代表」であり、また最後の御前試合ということもあって、今年は参加することにした。
 殺傷力を削った斧を両手で握り、――握ったまま、待っていた。
「冷選手、前へ!」
 プラチナムの声にも、蔵子は動かない。そこにいたのは、――いや、あったのは、どこからどう見てもただの冷蔵庫である。コンセントは、バッテリーに繋がっているようだ。小さく、ブンブンとモーター音が響いている。
 ぷちっ。
 プラチナムは無言のまま、コンセントを抜いた。ブゥンッ、という音ともに、冷蔵庫が沈黙した。
「何するデスかっ!?」
 中から機晶姫が飛び出してくる。と同時にプラチナムが試合開始を告げた。
 透乃が斧を振り回す。近付けそうにないが、一刻も早く冷蔵庫に戻りたい蔵子は、ガトリングガンを滅茶苦茶に撃ち続けた。
 透乃の斧が次々に弾き飛ばすが、一発が額に、更にもう一発が喉に当たった。
「それまで!」
 プラチナムの右手が上がり、透乃の敗北が決定した。
 負けた透乃がぴんしゃんとし、勝った蔵子が冷蔵庫に駆け込むという光景に、観客も釈然としない様子だった。

勝者:冷 蔵子


○第五試合
セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)(シャンバラ教導団) 対 リンゼイ・アリス(りんぜい・ありす)(空京大学)

「……あら?」
 リンゼイは思わず声を漏らした。対戦相手のセレンフィリティとは、初対面ではない。普段、メタリックブルーのトライアングルビキニのみを着用しているはずの彼女だが、今日はなぜだか新制服国軍を着用していた。調子が狂う、気がする。得物が銃でなく、木刀というのも、違和感がある。
 セレンフィリティはオールマイティな歩兵を目指していた。そのためには、銃だけでなくナイフや剣も使えなければならない。銃ほどではないが、これまで積んできた訓練の成果をぜひとも試したいと考えていた。無論、行けるところまで――出来れば、優勝を狙いたい――行くつもりだ。
 リンゼイが抱いた違和感は、僅かだが彼女の隙となった。セレンフィリティは【ゴッドスピード】でリンゼイの懐に飛び込んだ。リンゼイは咄嗟に距離を取ったが、セレンフィリティはするするとついてくる。速い。
 セレンフィリティの木刀が振り下ろされる。それを受け止めようとしたリンゼイだったが、セレンフィリティがにんまり笑ったのを見て、行動が一瞬遅れた。
 肩に強烈な一撃が加えられ、リンゼイは一瞬、息を止めた。
「トドメ!!」
 セレンフィリティは【洗礼の光】を発した。目の眩んだリンゼイはしかし、そのまま腰を落とすと木刀を垂直に、力いっぱい薙いだ。
 手に、鈍い衝撃が伝わる。
 ややあって、プラチナムの声が響く。
「試合続行、不可!」
 何が起きたか分からず、リンゼイは霞む目を懸命に開けた。セレンフィリティが倒れ、傍らでプラチナムが膝を突いている。どうやら、セレンフィリティの脚にヒビが入ったらしい。
「くっ……最後の最後で慢心した……か……」
 歯を食いしばりながら、セレンフィリティが吐き出したその言葉で、リンゼイは勝利を確信した。

勝者:リンゼイ・アリス


○第六試合
夏侯 淵(かこう・えん)(シャンバラ教導団) 対 遊馬 シズ(あすま・しず)(葦原明倫館)

 御前試合が始まる前、どういった流れか忘れたが、シズはフィーネ・アスマ(ふぃーね・あすま)にこう約束した。
「俺よりいい成績だったら一緒に出かけてやる」
と。
 もしかしたら誰かの――フィーネではないだろう――の誘導だった気がしないでもないが、一度口から出た言葉を取り消すわけにはいかない。
 何が何でも、フィーネよりいい成績を取らねばならない。
 その決意は殺気めいた意志となり、対戦相手の淵は戸惑いつつも、
「おおっ、やる気があってよいな!」
と喜んでいる。
 開始の合図と同時に、淵は矢を放った。シズはふわり、と飛び上がり、それを躱す。着地と同時に地面を蹴り、木刀を横に薙ぐ。だが、淵の元に辿り着くより早く、放たれた矢がシズの額に当たった。当たっただけならいいが、先端が吸盤なのでぶらぶらぶら下がったままだ。
 傍から見ればさぞ滑稽だろうなと思いつつも、シズは前の相手から目を離さない。
 淵は、シズの持つ木刀に禍々しいオーラが纏うのを察知した。――【破滅の刃】だ。
「食らったらたまらんな!」
 すかさず、淵が矢を番えた。これはシズの胸に命中し、そこで試合は終了した。

 試合後、控室に戻ったシズを、秋日子が慰めに来た。
「これで二人とも一回戦負け……フィーネさんには頑張ってもらいたいね!」
「――あ」
 途中で、すっかり忘れていた。
 仲間としては応援すべきだろう。だが、だがしかし――。

勝者:夏侯 淵