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七夕祭りinパラミタ内海

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七夕祭りinパラミタ内海

リアクション

「何でも無いイベントなのにこれまでよりもずっと楽しく感じるわ。まだまだ新婚気分だからかしら(この気持ちをいつまでも忘れずに、過ごしていけたらいいなぁ)」
「それは私もだ(結婚して最初の七夕、か。結婚して気持ち新たにだが、私は私、シルフィアはシルフィアだ。今までどおり、仲良くやっていけばいい)」
 結婚して初めて迎える七夕にいつも以上に特別な思いを抱くアルクラント・ジェニアス(あるくらんと・じぇにあす)シルフィア・ジェニアス(しるふぃあ・じぇにあす)
 そこに
「ここにいたか、新婚さん」
 ベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)がからかい気味の挨拶と共に登場。隣にはフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)ジブリール・ティラ(じぶりーる・てぃら)がいた。
「ん、ベルクにフレンディスか」
 振り向いたアルクラントは三人を歓迎した。
「こんばんは」
 シルフィアににこにこと笑顔で迎えた。
「あぁ。アルクラントもシルフィアもおめっとさん……っつーてもお前らの場合、今更な感じもするけどな」
 ベルクは改めてアルクラント達に結婚祝いの言葉を贈った。
「これはわざわざ、ありがとう。で、君達も……」
 アルクラントは祝辞に対してさらりと礼を言うなり、なかなか進展しないベルク達の事を話題にしようとした瞬間
「詳しい事はまた後でゆっくりと聞かせてくれ」
 すかさず、ベルクがうやむやにしようと言葉を挟んだ。話したい事はあるが、フレンディスがいるとまずい部分があったりなかったりのためだ。
「あぁ、そうだね」
 察したアルクラントは意味深な笑みでベルクの意図を知っていると示した。
「フレイちゃんもよく来てくれたわね」
 シルフィアは追求される前に話題を変えようと何気なくフレンディスに話しかけた。
「はい。お二人共、遅ればせながらご結婚お目出度う御座います。大変お幸せそうで……見ている私も嬉しくなります。それと最近ポチも任務のお手伝いに来て下さるようになりこれも皆様方のお陰にて私感謝を伝えきれず……」
 フレンディスは涙目となり深過ぎるほどに深々と頭を下げ、言葉にしてもしきれぬ謝罪と感謝を述べる。
「お祝いありがとう! だから頭をあげて頂戴。こちらこそ、今日は誘ってくれてありがとう」
 恐縮してしまったシルフィアはこの場を何とかしようとフレンディスに頭を上げるように言うが、
「しかし……」
 フレンディスは頭を下げたまま。それ程までに謝罪と感謝の思いが深いのだ。
 重たい空気を何とかしようと
「しかしもない。涙目で深々と重たいお詫びをすんな! また二人が反応に困るだろーが」
 ベルクは呆れたように頭を上げろとフレンディスに言った。
 少しの間を置いて
「…………はい」
 フレンディスは頭を上げた。
「お祝いありがとう。本当は二人も招待できればよかったんだけどね。そっちはそっちで予定もあったみたいだし、こっちも身内で、って感じだったから。改めて、ありがとう」
 改めてシルフィアは感謝の言葉や招待出来なかった事を言葉にした。
「おめでとう」
 ジブリールも祝いを口にした。
「ありがとう。そうそう、ポチもペトラと一緒に来てるよ。あそこで仲良く七夕を楽しんでるよ。君達もまだ気まずい所もあるかもしれないが、最近はそっちにも出かけている見たいだものな。まあ多少は先に進めたんじゃないかな?」
 アルクラントはジブリールに礼を言った後、現在修行のためアルクラント達に世話になっているポチの助の居所を示した。
「……みたいだな(あのリア獣め……)」
 本日自分は恋人の七夕を最初から諦めているというのにポチの助達はリア充。自分との差に少しだけ苛っとする。何せフレンディスと恋人となれどそれ以上の関係は一進五退いや一進十退だから。
「元気そうで何よりです」
 フレンディスはポチの助の元気な姿に深々と安堵。
 その隣には
「犬の隣にいるあの子がペトラって子だね。アルクラントさん達の話通りの可愛い子だし、犬に勿体ないかなって思ったけど……案外、犬があの獣人の姿だと結構いい感じかもね?」
 初めてペトラの実物を見るジブリールがいた。何気にポチの助の恋路を見守っていたり。未だ慣れない平和な行事に家族と一緒に参加する子供といった感じである。
「ふふふ、そうね」
 シルフィアはポチの助とジブリールを微笑ましげに見ながらうなずいた。

「さてと、短冊でも書こうか?」
「七夕だしね」
 アルクラントとシルフィアが短冊を手に勧めた。
「そうですね」
 フレンディスはシルフィアから短冊を受け取った。
「そう言えば、ベルクさんこの七夕祭りって双子が主催してるんだよね? また何か悪戯を仕掛けてたりしてないのかなぁ。ほら、オレまだ二人の悪戯を経験していないから興味あるんだけど……ロズさんが一緒だし、残念だけどそういうのは無いのかな?」
 ジブリールはふと主催者の事をおもむろに口にした。
「……」
 ベルクは軽く周辺を見回し何やら確認した後、
「思うのは構わねぇが、悪戯期待するような事をヒスミやキスミに直接言うなよ? というか口にするなよ。あいつらどこから湧いてくるか分かったもんじゃねぇから」
 ジブリールに念押しした。先程の周辺確認は双子を警戒してだ。
「……ボウフラみたいに?」
 ジブリールが口元を緩めながら訊ねると
「あぁ、それより質が悪い。ロズの目を盗んでやりかねないからな」
 ベルクは溜息を吐きながら言った。双子を知るからこその警戒。
「……そっか。でもばったり会うって事はあるよね」
 ジブリールはきょろきょろとベルクとは違う意味で見回した。
「……おいおい」
 ベルクは溜息を吐いていた。
 その時、
「あれはロズじゃねぇか。様子を見て来る」
 ベルクは少し離れた笹の所にいるロズを発見し声をかけに行った。いつも双子と一緒のはずが一人で倒れ掛けている笹の設置し直しや、落ちた飾りを付け直したりとロズは何やら作業をしていた。

「ロズ、あの二人はどうした?」
 ベルクは親しげに声を掛けた。
「あぁ、君か。二人とは別れて笹の点検している……それなりに楽しんではいる」
 知った声にロズは警戒無く振り返るなり、ベルクとのこれまでの関わりから自分を気に掛けているだろうと察し、楽しんでいると伝えた。
「そうか。今日は祭りなもんだから、大変だぞ」
 ベルクは笑いながら言った。
「……あぁ」
 ロズは苦笑いを浮かべた。
 この後、少し雑談をしてからベルクは皆の元に戻った。

 一方。
「さて、それじゃあ私達も短冊に願いを書くとしようか。今後の私達二人について願いをこめて」
「そうね」
 アルクラントとシルフィアは改めて短冊を見やってからゆっくりと願い事を書き始めた。
 二人の願い事は
「……(この先、シルフィアと夫婦としてずっと共に歩いていけますように、っと)」
「……(これからずっと、アル君と夫婦として一緒に歩いていけますようにっと)」
 たった一つ。最愛の人と共にこの先もずっと歩いて行く事だけ。そのため迷う様子は無かった。
「……出来ました」
 フレンディスも願い事を書き終えていた。
「フレンディスさん、書けた?」
「書けました。でも秘密です」
 訊ねるジブリールにフレンディスは頑なに願い事は教えず、さっさと笹に吊してしまった。
 作業が終わったのを見計らい
「ベルクさんがロズさんとの話を終わらせて戻って来たら屋台に行こう。ここに来る時にちらっと見たけど舞花さんが店を出していたよ。焼きそばとかお好み焼きの良い匂いがしていた」
 ジブリールは知り顔の舞花が店を出している事を口にし、誘った。
「そうなんですか。焼きそばにお好み焼き……顔を出しに行かないといけませんね」
 食いしん坊万歳のフレンディスは食べる前からもうワクワクしていた。
 その時、
「二人も来てたんだな」
「元気そうじゃん」
 双子が知る顔を発見しやって来た。丁度美羽との飾り付けが終わった時だ。
「ヒスミさんにキスミさん、どうしたのですか?」
 フレンディスは多くの人とは違い警戒のないキラキラした目で訊ねた。
「笹を見て回っているロズと合流するんだ」
「ちょっと、向こうで笹飾りを作ってて終わったから」
 双子は素直に答えた。
「ロズさんなら今ベルクさんと話してるよ」
 ジブリールはお喋りをしている方向を指し示した。

 そちらを見て確認した途端
「よし、今なら俺が作った奴も……」
「しかもロズはいない。今の内に誰かに」
 双子はロズがいない事に大層喜び、ヒスミは何やら手持ち花火らしき物を取り出し、
「よかったらあげるぞ」
「花火だから大丈夫だ」
 双子は二人に物を勧めた。
「くれるなら貰おうかな」
「花火を作るとは凄いです」
 悪戯に遭遇したかったジブリールと双子に対してずれた認識を持ちながらも尊敬対象になりつつあるフレンディスは迷わず花火を受け取った。
 丁度、ロズの立ち話が終わったらしく
「もう終わったみたいだから行くぜ」
「そんじゃな」
 双子は行ってしまった。
 入れ違いに
「戻ったぞ……って、何だそれ!?」
 ベルクが帰還し見慣れぬ物、花火を発見し不審な顔になった。
「ヒスミさんが作った物だよ。くれると言うから貰った」
 ジブリールは隠すことなく明かした。
「おいおい、貰ったってヤバイだろ。火は点け……」
 ベルクは急いで使用するのを止めようとするが、遅かった。
「マスター、綺麗ですよ!」
 フレンディスがすでに点火していた。しばらくは普通の花火よりもカラフルな火花を散らしていたが途中で火花以外の危ない物も吐き出して暴走し大変な事に。
「凄いですねぇ」
「これは凄い」
 フレンディスは感心しジブリールは悪戯が見られて満足。
「何とかしねぇと」
 ベルクは気苦労人として頑張っていた。
 何とか三人の力で無事に解決する事が出来た。
 ベルクが戻った所でアルクラント達とフレンディス達の五人で食べ歩きに出発した。ポチの助とペトラは別行動で楽しんでいた。

 屋台の食べ歩き中。
 フレンディスとジブリールは舞花の屋台に立ち寄ったりなど屋台巡りをしている最中に
「さっきの話の事なんだが、模擬結婚式をして……」
 ベルクは本日会った際にアルクラントが言わんとした事結婚はまだか的な言葉の答えを話した。つい先日の模擬結婚式で計画的にやらかして騙したも同然にフレンディスのサイン済み婚姻届け入手した事を。
「へぇ、模擬結婚式でねぇ。でも聞いているとそれって実質……フレイちゃんは気付いてないみたいだけど、そういうことよね? 婚姻届けまで出て来たのなら……近い将来にって事よね?」
 あまりにも手の込んだ模擬結婚式にシルフィアは思わずツッコミを入れた。
「……まぁな。出来れば、フレイの誕生日に提出したいんだが……出来るかどうか」
 シルフィアの考えは正解だったらしくベルクは苦労の溜息を吐きながら実行可能性が未知数である事を明かした。
「そりゃ、なかなかだねぇ。となるとうまくやった、と言っていいのか、ちょっと自信が持てないが。まあ、時が来れば、と言うわけだね」
 アルクラントは何とも言えぬ様子。
「……時がくれば……そうだな」
 ベルクが何週間分の疲れが吹き出たかのような重い溜息を吐き出しつつ脳裏に浮かべるのは模擬結婚式でのドレス姿の恋人の姿。
「その時は私達もお祝いしないとね、アル君」
「あぁ、それまではおめでとうの言葉取っておかないといけないな。そしてポチも素直にお祝いできるようになってるといいのだけれど」
 アルクラントとシルフィアは気苦労の絶えないベルクとかき氷を頬張るフレンディスを見やりながら言った。心底二人にも幸せになって欲しいと願っていた。
「……何もかも上手くいけばいいんだがな」
 ベルクは心底の願いをぼそりとぼやいた。
 この後、気分を変えて屋台の食べ歩きを楽しんだ。

 夜明けが訪れ、とうとう祭りにも終わりがやって来た。
「綺麗ねぇ。これからもずっとアル君と夫婦として一緒に歩いていけますように」
「……この先、シルフィアと夫婦としてずっと共に歩いていけますように」
 シルフィアとアルクラントは寄り添いながら天に昇る光の粒子を見送りながら短冊に込めた願い事を洩らした。
 そして二人は顔を見合わせ
「誓いは式の時にもしたけど何回やってもいいものね」
「ま、こういったものに頼らずともこの願いは果たすつもりだけどね。二人なら、どこまでだって歩いてゆけるさ。いつか、希望を託して旅立つ日まで」
 シルフィアとアルクラントは幸せそうに笑い合った。

「こんな綺麗な光景、ポチさんと見る事が出来て僕幸せだよ」
「……ペトラちゃんが幸せなら僕も嬉しいのです」
 ペトラとポチの助も並んで夜明けの幻想的な光景を見ていた。