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寝苦しい夏の快眠法

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寝苦しい夏の快眠法
寝苦しい夏の快眠法 寝苦しい夏の快眠法

リアクション

「夢札……楽しい夢を見られそうな予感がしますわ」
 夢札を貰った泉 小夜子(いずみ・さよこ)は手元の夢札に目を落とし
「……見たい夢はたった一つですわね」
 もう決まっている見たい夢に思いを馳せた。
 そして、小夜子は就寝の際、夢札を使いぐっすりと眠ると共に夢へと旅立った。

 ■■■

 星空輝く夜、とある屋敷。

「……立派な屋敷ですわね。これが私の夢ですのね」
 小夜子はぐるりと見事な屋敷の内装を見回した。
 そして
「……窓辺から月明かりが差し込んで綺麗ですわ……月明かりという事は外は夜ですのね」
 大きな窓から差し込む月明かりに気付いた小夜子は窓に近付き、思いっきり開け放ち、続いているテラスに出た。

 テラス。

「これは……この足音は……」
 手すりに手を置き、広がる風景に感動を口にしようとした時、背後から聞こえる聞き知った足音に感想は引っ込め、口元をゆるめた。
 足音が自分の背後で止まった所で
「美緒、一面の百合畑ですわよ。ヴァイシャリーでもこんな風景はないでしょうね(流石夢の中ですね。有り得ない風景もこの通り形になるんですもの)」
 誰が立っているのか知る小夜子はすぐには振り向く事はせずにどこまでも続く見事な百合畑を見渡しての感想を先に言ってから振り返り、伴侶である泉 美緒(いずみ・みお)を迎えた。
 すると
「……そうですわね。それにしても夜の花畑も美しいですわね。夜闇で見えないと思っていましたが」
 美緒がゆっくりと歩み寄り小夜子の隣に立った。
「それはきっと満月のおかげですわ」
 夜空に輝く満月が隈無く咲き誇る百合を照らし、艶やかな花色にますますの輝きを与える様を眩しそうに見る小夜子。
「折角ですから、散歩はどうです? 遠くから眺めるより近くから見た方がもっと楽しいはずですわ」
 小夜子が手を差し伸べて誘うと
「えぇ、是非」
 美緒は笑顔で愛しい人の手を取り誘いを受けた。
 二人は屋敷を出て仲良く百合畑の散策を始めた。

 少しの散策後。
「……本当に綺麗ですわね」
 美緒は足を止め、自分の周りを囲む百合を見回す。
「それにしても……」
 小夜子が心を奪われるのは百合よりも自分とお揃いのドレスを纏う美緒の姿。そのドレスとは、身体の線がはっきりと出て胸の谷間が見える色気のあるデザインの物。二人共美しい顔立ちに豊満な胸に整ったスタイルの持ち主のため異性が見たら二度見どころか四度、五度見する程の美しさを発していた。
「……小夜子、あの、そんなにじろじろ見ないで下さいまし」
 美緒は小夜子の親しみある容赦の無い視線に恥ずかしくなり顔を真っ赤にしてしまった。
「美緒、恥じらう必要は無いですよ。ドレス姿、とてもよく似合ってますもの(何より現実の美緒がこういう色気のある服を着る機会はなかなか無いでしょうから目を離す事は出来ませんわ)」
 小夜子は全く美緒から目を離す気などさらさらない。むしろ貴重な機会とばかりに記憶に刻み込もうとする。
「……もぅ」
 逆にますます恥じらいのため顔を赤くする美緒。
「それにここには私と美緒だけ。二人きりですのよ。恥ずかしがる必要はどこにもありませんわ(もう、美緒ったらすぐに顔を赤くして純粋なんだから)」
 恥じらう美緒にますます愛おしくなった小夜子は何の前触れもなくそっと美緒の体に指を這わせ体の線をなぞった。
「さ、小夜子!?」
 美緒は自分の体を滑る小夜子の指にピクリと身体を震わせた。
「……(いつも私がこうしているから、たまには美緒にリードして貰いたいですわね……折角の夢ですし……)」
 小夜子は現実と変わらぬ美緒を見てほんの少し我が儘心がむくむく。
「……(美緒が積極的になれるように後押し……きっかけを私が作ればいいのですわ)」
 ちょっとした策を思いついた小夜子は美緒の唇に深々と口付けをした。
「!!」
 突然のキスに驚くも受け入れる美緒。しかし、小夜子のキスはただのキスではなく『吸精幻夜』で美緒に幻惑を掛ける。

 口付けを終えて
「……美緒」
 小夜子は美緒を抱き締め
「……貴女の好きなように……」
 耳元で甘く囁いた。
 途端、
「……小夜子……愛していますわ」
 蕩けた瞳で小夜子を見つめたかと思ったら口付けを返しそのまま押し倒し、月明かりに照らされ輝く百合の花畑の中に埋もれた。

 ■■■

 覚醒後。
「……まさか美緒に押し倒されたりとか、はじめてでしたわね」
 小夜子は美緒に押し倒された時の事を思い出し、幸せな気分になった。