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夏最後の一日

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夏最後の一日

リアクション

 夜、百合園女学院の近く、ミーナ宅。

「佐保、お魚の焼き加減どうですか? お口に合いますか?」
 ミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)は料理には手を付けずにこにこと食べる婚約者を嬉しそうに見るばかり。
「とても美味しいでござるよ。ミーナ殿は食べないでござるか?」
 真田 佐保(さなだ・さほ)は顔を向け、笑顔で答えるなりミーナが食事に手付けていない事に気付いた。
「あ、うん。つい佐保が美味しそうに食べるのを見ていて嬉しくて」
 ミーナはそう言うなり食事を始めた。大好きな人に自分の作った物を食べて貰える事がとても嬉しかったのだ。
 そして
「ご飯の後は佐保のお土産を食べましょう(今日はみんながいないから佐保と二人っきり。だから……)」
 ミーナは食事をしながらこの後の事を考えて胸中は大騒ぎ。佐保がお泊まりに来たので今夜はずっと一緒だ。しかも自分の仲間達は夏休み最後という事で友達の家で勉強会という名のお泊り会のためいないため尚更。
「……ミーナ殿が喜んでくれればよいでござるが」
 佐保はお呼ばれという事でミーナが喜びそうな物を吟味し購入し土産として持参したのだ。
「佐保の選んでくれたデザート食べる楽しみです」
 ミーナはまだ夕食が終わっていないというのに佐保が持参した土産が楽しみでたまらない。
 それもあってか夕食はあっという間に終わり、佐保が持参した土産をデザートに食べる事に。
「ん〜、おいしいです。佐保、ありがとうです」
 ミーナはほわんと幸せそうにデザートを頬張った。
「ミーナに喜んで貰えて嬉しいでござる」
 佐保はミーナの様子に満足し、自分もデザートを食べた。
 これで本当に夕食が終わったところで
「佐保、次はお風呂です! 日ごろの疲れを取るために一緒に入って洗いっこしましょ♪」
 ミーナは食事の時よりもテンション高く、声まで大きくなっていた。
「……い、一緒にでござるか?」
 まさかの展開に佐保は一瞬にして戸惑った。確かにお泊まりなので入浴込みなのは想定していたが、まさか一緒にとは予想外のため恥ずかしさも加わり顔も赤くなる。
「そうです。ほら、行きましょう」
 そう言うやいなやミーナは佐保をお姫様抱っこでお風呂場に直行。佐保に拒否権は一切無し。
「ミ、ミーナ殿!?」
 有無を言わせぬミーナの抱えられ佐保はただただ慌ててされるがままであった。
 結果、二人は仲良くお風呂に入った。

 風呂。

「……ミーナ殿は強引でござる」
 入浴する流れとなった佐保は溜息を吐きながら隣のミーナを見ると
「むぅ」
 ミーナは不満そうなふてくされたような顔で佐保を見ていた。いや、正確には佐保の胸を見ていた。
「……ど、どうしたでござる?」
 佐保はミーナの怖い視線が何を見ているのか分からないなりに鬼気迫るものを感じて恐る恐るである。
 途端
「い、いきなり、な、何を!?」
 佐保の不意を突いたミーナに胸を掴まれ揉まれる。
「佐保……お胸成長してませんか!? ちょっと前までミーナと同じでちょびっとだったのに!!」
 ミーナの自分の目測が正しかったと実感すると悔しさがこみ上げる声が風呂場に響いた。
 なおも
「毎日ミーナもマッサージ欠かさないのに……ずるいです!」
 ミーナは悔しさでこれでもかと抵抗する佐保の胸をもみもみする。
「……そう言われても」
 佐保は恥ずかしさで顔は真っ赤であった。
 この後も女の子達のお風呂は続く。

「佐保、肩こってるの……お風呂上りにマッサージしてあげます♪」
 ミーナは佐保の背中を流しながら軽く肩に触った。日頃の忙しさから佐保の肩すっかりこりこりであった。
「ありがとうでござる。今度はミーナ殿でござるよ」
 ゆったりと寛いだ佐保は交代してミーナの背中を流す。
 佐保に背中を流して貰いながら
「でね、マッサージの後は……えっと……一緒のお布団でいっぱいおしゃべりして……佐保にぎゅっとしながら寝ます!」
 ミーナは後ろにいる佐保を見上げながら楽しそうに入浴後のお楽しみを話す。
「それは楽しいそうでござるな」
 何とも健全な内容に佐保は表情をゆるませる。
 しかし
「でしょう……あ、でも、お休みのちゅぅも忘れないでくださいね!」
 ミーナの話は続く。折角婚約者と二人っきりなのだからいちゃいちゃしないともったいない。
 突然ミーナは頬を染めて
「あと……ちょっとなら……その……えっちぃことも……」
 恥じらうように言葉途切れ途切れにとんでもない事を口走った。これもまた二人っきり効果である。
 恥じらいのためか先程よりもずっと声に色気を感じたのか
「……えっちぃ、ことでござるか……そ、それは……」
 佐保はどぎまぎし、まったりはどこへやら吹っ飛び耳まで顔を真っ赤にしていた。しっかりミーナが何を言っているのか伝わった模様。
 そのためか、このやり取りの後は互いに言葉少なであった。
 それは入浴後も続いた。

 入浴後。
「佐保、どう? 気持ち良い?」
 ミーナは佐保の体が元気になればと心を込めて丁寧に凝った肩をマッサージしていた。
「気持ち良いでござるよ(……この後は……ミーナ殿と……)」
 佐保は目を閉じて心底寛ぎモードに。しかし、少しでも気を緩めると風呂場でのミーナの発言を思い出して鼓動が速くなる。
 それは
「良かったです(……この後、一緒のお布団に入っていっぱい佐保とお喋りして……楽しみです。折角二人っきりですから)」
 佐保の肩をマッサージをしているミーナもであった。
 ゆったりとした時間は過ぎ、就寝の時間がやって来る。それはつまり、ミーナの言う“えっちぃ事”をするという事。

 いよいよ、就寝の時間。
 しかし
「…………ミーナ殿」
 佐保は安堵とほんの少しのそれ以外の感情を滲ませながら布団に優しい眼差しを向けた。
 そこには
「……むにゃ……佐保……大好き……」
 ぐっすりと眠る佐保がいた。あれほど風呂場で騒いでいたのにいざ布団に入ると睡魔に負けて撃沈して今に至る。
「……」
 最愛の人の可愛らしい寝顔に頬をゆるませた佐保は
「……ミーナ殿、おやすみでござる」
 愛しさをつぶやき、ミーナ所望のおやすみのちゅうをした。ただしミーナは眠っているが。
 すると
「……」
 ミーナの表情が幸せそうなものに変わり
「……ミーナ殿」
 佐保は愛しそうにミーナの頭を撫でた。
 とここで自分がした事を思い出して顔を赤くして
「さ、さあ、寝るでござる」
 佐保は慌てて布団に入り込み、ミーナの隣に横になった。
「……佐保」
 ミーナは最愛の人を洩らしていた。
 えっちぃ事はおあずけとなったが寄り添って眠るミーナと佐保の寝顔はとても幸せそうであった。きっと幸せな夢を見ているだろう。