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リアクション
祭り当日、イルミンスール、とある屋敷のキッチン。
「……芋、リンゴ、梨、葡萄、カボチャ、さっきたっぷりと拾った栗」
「秋の味覚満載ですね」
騎沙良 詩穂(きさら・しほ)と吸血鬼の少女 アイシャ(きゅうけつきのしょうじょ・あいしゃ)はアイシャが住まう屋敷のキッチンの台に並べられた大量の秋の味覚に季節を感じながら見回していた。
「うん、これを使って美味しい料理を作ってお祭りでみんなに販売しちゃおう!」
詩穂は本日この地で祭りが開催される事を思い出し、名案閃きとばかりに声高に提案。
「……今から料理をすると量もありますから夜になってしまいますよ?」
アイシャは大量の秋の味覚、商売する事を時間と相談した結果あまり祭りを楽しめない事を口にした。
「だからだよ。夜にはオレンジ色の光が町を照らして花火が打ち上がってロマンチックだから……素敵な思い出になるでしょ。もちろん、他の参加者の思いで作りの手伝いも出来るし」
詩穂は目を輝かせロマンチックな夜を想像し夢見る乙女になったり。
「そうですね。では始めましょう。何を作りますか? 秋となり肌寒いですから温かな物が喜ばれると思いますが」
詩穂の様子にクスリと笑みを洩らしながらアイシャは反対するのをやめて何を作るのか小首を傾げた。
「そうだね。ならパンプキングラタンとか黄金色の焼き芋とか、焼きリンゴのチーズタルトにお祭りなら食べやすさも重要だからスイートポテトをスティックバーにカットするとかお持ち帰りに秋の味覚のジャムもどう?」
詩穂は様々な秋の味覚を手に取りながら秋の料理を色々と提案。
「さすが、詩穂です。秋と言えば食欲の秋ですよね」
アイシャは手を叩いて次々と料理を思いつく詩穂に感心するもちょっぴり意地悪な事も言ったり。
「あーー、アイシャちゃん、詩穂は食いしん坊じゃないよ。みんなが美味しく食べられる料理を思いついただけで」
アイシャが自分に向けた揶揄に気付いた詩穂は大袈裟に声を上げ、ぶぅと頬を膨らませ不満顔に。
「ふふ、そうですね。それじゃ、作りましょう」
アイシャは笑いながら料理を始めた。詩穂が本気でへそを曲げていないと知っているため軽く流した。
「もぅ」
お見通しのアイシャに溜息を吐いてから詩穂も料理を始めた。
手が込んでいる上に量もあるためやはりアイシャの言った通り二人の参加は夜になったが、料理をする間、他愛ないお喋りをしたり互いの得意料理を教え合ったりと和気あいあいと過ごした。
夜、祭り会場。
「聞くのと見るのとは大違いだねぇ。こんなに綺麗だとは思わなかったよ」
「本当に……オレンジ色の光が町に満ちて美しいですね」
詩穂とアイシャはオレンジ色の光に照らされた町の下を楽しそうに行き交う人々の姿を見ては瞼の裏に焼き付けては楽しそうな表情をした。
「さぁ、頑張ろう、アイシャちゃん(もし閑古鳥だったとしてもアイシャちゃんと一緒ならいいかな)」
「えぇ、頑張りましょう」
詩穂とアイシャは秋の味覚の料理とジャムを手に参加者の思いで作りの手伝いを始めた。閑古鳥かと思いきや料理もジャムも売れた。
花火が打ち上げられた時、
「……花火だよ、アイシャちゃん」
詩穂は商売の手を止めて空を仰ぎ、夜空に次々と咲き誇る美しい光の花に心を奪われた。
「……えぇ、とても綺麗ですね、詩穂」
詩穂の言葉に促されるようにアイシャも空を見上げた。
「……(こうして大好きなアイシャちゃんと花火を見られて詩穂は幸せ者だよ)」
花火を見ながら隣にいる愛する人とこうして同じ時間を共有している事に幸福を感じていた。
その時
「……」
そっと自分に寄り添うあたたかな感触に気付き、
「……」
詩穂はちらっとアイシャの横顔を見ると
「……」
気付いたアイシャは優しい笑みを浮かべた。
「……(アイシャちゃん)」
大好きな笑顔で詩穂は幸せに満たされた。
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