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女王危篤──シャンバラの決断

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女王危篤──シャンバラの決断
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瀬蓮の素質

 宮殿からの帰り道、砕音は何かを考えこみ、ずっと黙っていた。
「で、あのホームプラネタリウムは何だったの?」
 館に帰ると、白輝精が砕音に聞く。周囲の生徒も皆、聞きたそうにしている。砕音は言った。
「今、稼動させているイコンより数世代進化したイコン用の部品だ。特に、あのデータは、特定の素質を持つ者にしか操作できない。
 俺としては、それは横山ミツエ(よこやま・みつえ)御人 良雄(おひと・よしお)だと思ってたんだが、違ったのか……または他にもいた、という事だろう」
「特定の素質って、何の素質?」
 瀬蓮の親友小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が聞く。砕音は迷うが、話す事にする。
「呪いで、どこまで話せるか分からないが。
 ……今、帝国がシャンバラをはじめ、他国に圧力を強めているのは、大帝が帝国の未来を憂えている為だ。帝国にとり、地球とパラミタがつながった現在はまたとない機会だろう。だが、その機会を逃せば、もうチャンスはない。だからこそ地球と繋がるシャンバラへの圧力は大きい。
 あのプラネタリウムは、帝国の……希望に繋がる。帝国の選択肢を増やす事で、シャンバラなどへの圧力を減らせるだろうと思ってな。
 あと白輝精が俺たちの行為で、大帝にぷちっとされないように……かな」
「砕音……」
「シャンバラよりの選帝神として利用できるからな」
 砕音の言葉に、ウルウルとしかけた白輝精はむくれる。
「じゃあ……瀬蓮ちゃんの素質も、そんな悪いものじゃないのかな?」
 美羽に問われ、砕音は瀬蓮を見た。当の彼女は、難しい話を理解しようと、むにぃっと眉を寄せている。
「……彼女がパートナーアイリス・ブルーエアリアル(あいりす・ぶるーえありある)の力になりたいと思っているなら、そうかもな。
 ただ高原はしばらく普通の学校生活を送れないかもしれない……その時は、おまえたちが彼女を支えてやってくれ。白輝精、おまえにも協力してもらうからな」
「はいはい」
 白輝精は適当に返事する。
 砕音を護衛するコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が、彼を心配そうにのぞきこんだ。
「先生、お話はそのくらいにした方がいいんじゃ……? だいぶ苦しそうです」
 コハクは助けを求めるように、砕音に付き添うラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)を見る。ラルクは彼にとって、頼りになる兄貴分だ。
 ラルクはコハクにうなずき返す。
「うーし、話はアムリアナの治療が終わってからでもできるだろ。
 砕音、今日のところは、もう休んどこうぜ」
 ラルクは砕音をつれて、彼らに割り振られた部屋へと戻る。コハクは二人の後についていく。いつでも砕音を守れるよう、ロイヤルガードのマントの下に、武器の槍を隠している。
「あ、ちょっと待ってください」
 ロザリンドがコハクを呼び止める。立ち止まった彼に、ロザリンドはそっと耳打ちする。
「護衛はお部屋の前までで。ラルクさんと砕音さんはフィアンセですから、二人の時間を取れるように、お邪魔虫にならないように」
「う、うん」
 コハクは少し耳を赤らめ、こくこくとうなずいた。


「ふぃ〜、なんか今日はいろいろとあったなぁ」
 割り振られた部屋のソファに、ラルクはどっかと座る。部屋の中には二人だけだ。
 隣に座った砕音が、彼にぴったりと身を寄せる。
「ぴと」
「……ん?」
 ラルクが「何だ」と見ると、砕音は照れ笑いを浮かべながら、彼に寄りかかってきた。
「充電中〜♪」
 ラルクは笑み崩れながら、砕音の髪をくしゃくしゃとなでた。
 もし純情なコハクがこの場に遭遇していたら、それはそれは困ったことだろう。