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【終焉の絆】時代の終焉

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【終焉の絆】時代の終焉
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第3章 迫真の導き

 研究棟1階非常口。
 解毒剤を手に入れるために、ダリルの光条兵器で鍵を壊し、ダリル、かつみ、燕馬、コウはここから研究棟へ入り込んだ。
『シンニュウシャハッケン』
 非常口には、警備用機晶ロボットが配備されており、4人の侵入はすぐに気付かれ、警報が鳴り響いた。
「テロリスト連中にこっちを意識させれば、交渉しようという気にもさせられるよな?」
 まず燕馬が銃と消火器を手に飛び出した。
 『痛みを知らぬ我が躯』と『リジェネレーション』の能力を頼りに、敵の攻撃を恐れず、一気に距離を詰めていく。
 侵入を知り、次々に機晶ロボット、そしてテロリストが駆け付け、攻撃を浴びせてくる。
「その腕、貰うぜ!」
 至近距離から機晶ロボットの腕めがけて銃を撃つ。
 武器を持つ機晶ロボットの腕が落ちた。
『シンニュウシャハイジョ、リョウカイ』
 どこかからの命令を受信したらしく、機晶ロボットの開いた口の中から銃口が現れた。
「……つっ。雷術、食らいやがれ!」
 弾丸は燕馬の頬を掠めた。同時に燕馬は機晶ロボットに触れそうな距離で雷術を発動。
「次は首だ!」
 動きを止めた機晶ロボットの首に銃弾を連続で浴びせ、頭を落した。
「遺跡によくあるのを参考に開発されたヤツだな、オリジナルの欠陥も引き継いてるとすれば死角があってな……」
 コウは正面からではなく、死角から機晶ロボットに近づく。
「このタイプの警備機晶ロボは外部からのアクセスハッチが身体の底にあるんだが、転ばせるのにはちょっとコツがいる、丸腰で近づけば相手が警戒モードに入る距離は3メートル。
 ――ここで、飛び掛かる!」
 四足の機晶ロボットに身をかがめて側面から近づくと、コウは床を蹴って飛び掛かった。
「転ばせた後の緊急停止シークエンスは……」
 右足で四足の1本を払い、転ばせて、アクセスハッチに手を伸ばす。
「後は任せろ。機晶ロボは俺にとっては情報源だ」
 コウに振り下ろされた鉄棒を、ダリルが光条兵器で両断した。
「頼む。借りたこの拳銃じゃ通りそうもねえが、気を引くことならできる」
 コウは機晶ロボットをダリルに任せ、銃を抜くと、仲間から離れて連射する。
「メモリーを読み取らせてもらう」
 ダリルはコウが転ばせた機晶ロボットに雷術を放って麻痺させると、電脳支配の能力で、自身の気を電気信号に変えて、機晶ロボットの内部へと滑り込ませた。
「この機晶ロボ、ここの警備用ではなく……。
 ……何、だと」
 メモリーを探るダリルの目が鋭く光った。
「兵器の警備用……そうか!」
「こっちは任せておけ、伝達を頼む!」
 コウが銃を撃ちながら言う。
「ああ。解毒剤はこの先の第一恒温室にあるようだ。頼んだぞ!」
 ダリルは機晶ロボットから光条兵器で記憶装置を抜き出すと、トランシーバーでキロスに連絡を入れながら、非常口から飛び出していった。
『シンニュウシャハイジョ』
「くっ」
 機晶ロボットの口から飛び出した鉛の弾が、コウの肩を貫いた。
 テロリストが発射する弾丸には……優子が浴びたのと同じ、毒が含まれているものもあるようだ。
「多勢に無勢だが……引くつもりはないからな!」
 かつみはモップを手にコウの前に出て、床を滑るように近づいてきた機晶ロボットを阻んだ。
「次から次へと……邪魔だ、どけっ!」
 モップを渾身の力で叩き落とし、機晶ロボットの腕から鈍器を弾き落とした。
「機晶警備ロボ、お前の相手はこっちだ!」
 すかさず、コウが銃を撃ち、機晶ロボットの注意を引く。
 その間に、かつみが鈍器を拾い上げ。
「はああっ!」
 機晶ロボットの頭部に叩き落とし破壊した。
「この部屋か!」
 廊下を走り、燕馬は第一恒温室の前にたどり着いた。
 ドアの前には機晶ロボットが1体と、ガスマスクをしたテロリストが1人いた。
「っうっ、効かねーよ」
 燕馬は消火器で敵の視界を塞ぎ、突進。
 拳銃でドアノブをふっとばし、体当たりをして部屋の中に転がり込む。
 共に倒れ込んだテロリストの銃と燕馬の銃が同時に互いに向けられる。
 ドン!
 パン!
 燕馬の銃はテロリストの頭を撃ち抜き、テロリスト銃は燕馬の胸を撃ち抜いた。
「……はあ、はあ、はあ……やべっ、心臓は避けたが肺をやられた」
「無事か!」
 入口を守る機晶ロボットを打ち倒し、コウが飛び込んできた。
「大丈夫、だ。それよりこの部屋、色んな薬品が保管されてるようだ」
「解毒剤を手に入れても、必要な人に届けられなければ、意味がない」
 起き上がる燕馬の下に、かつみが駆け付けて肩を貸しヒールをかける。
「切り抜けるぞ」
「ああ」
 かつみの言葉に、燕馬とコウは強く頷き、室内の頑丈なテーブルを立ててドアを塞ぎ、解毒剤入手を急ぐ。

 研究棟に館内放送が響いた。
『足下で煩く走り回っているネズミさんたち。
 大人しくしてくださらないと、揺れでわたくしの手が滑ってしいますわ。安らかに眠っている子たちの呼吸が止まってしまいますわよ』
 冷酷な笑みを含む、女性の声だった。
「ラズィーヤ」
「ラズィーヤか……っ」
 自分は、上階にいる。人質の傍にいる。
 それを知らせるメッセージでもあった。

○     ○     ○


 アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)はキロスと行動していた。
(キロスさんが浮気をしないか心配でついて来ただけだったのに、こんな事件が起こるなんて……)
 二人は広い研究棟の敷地に広がる茂みを利用して潜入箇所を探っていた。
 前を行くキロスが足を止めてアルテミスへ振り返り、茂みの向こうに見える窓を指さして小声で言った。
「あそこの窓から入る。ヘマすんなよ」
「は、はいっ」
 注意深く周辺に人影がないことを確かめて茂みから駆けだそうとした時、キロスのポケットにあるトランシーバーから人の声がした。
「……なんだよ、これからって時に。神楽崎、何か用か。今忙しい」
『ダリルだ。トランシーバーを借りている。ラズィーヤにはもう会ったか?』
「これからだ。なかなか警備が厳しくてな」
『とんでもないことがわかった。実は……』
 アルテミスは、キロスの顔が驚愕に染まっていくのを見た。
「マジかよ。こっちはバラけて行動してんだ。……しょうがねぇ。俺とアルテミスでロケット発射装置をどうにかする。ラズィーヤのほうはあいつらに任せればいいだろ」
 通信を終えたキロスは、厳しい表情でアルテミスに作戦変更を告げた。
「パラミタに向けて化学兵器を搭載したロケットの発射準備が行われてるんだと。俺らはそいつを止めに行く。ちとキツイことになりそうだが、くたばんなよ」
「わかりました。全力でキロスさんをサポートします。必ず阻止しましょう!」