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地球に帰らせていただきますっ! ~2~

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地球に帰らせていただきますっ! ~2~
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 祖母への告白
 
 
 
 SFM0018077#芦原 郁乃}が実家に帰省したのは、家族に……幼い頃に両親を亡くした郁乃を育てあげてくれた祖母芦原 那美に、大切な人を紹介する為だった。
「えっと……お祖母ちゃん。私の右に座っている秋月桃花さんが、私の大切な人……その……恋人、だよ」
 郁乃の言葉にぴくりと肩を動かした秋月 桃花(あきづき・とうか)の手を、郁乃はテーブルの下でさぐって指を絡める。そしてもう片方の手で荀 灌(じゅん・かん)の手をしっかりと握り。
「それで、私の左に座ってる荀灌さんが、わたしの……妹、なの」
 繋いだ手から、桃花と荀灌の緊張が伝わってくる。そしてまた、自分の緊張も2人には伝わっているのだろうと郁乃は思う。けれどこのことは、祖母には内緒にしておきたくなかった。厳しくも優しく、郁乃を育ててくれたお祖母ちゃんには本当の郁乃の気持ちを伝えたい。
 祖母の目が桃花に、荀灌にと向けられ、そしてまた郁乃へと戻った。
「どうして話す気になったんだい?」
「うん……それは、わたしにとってお祖母ちゃんは大切な人で、その大切な人に嘘をつくのも隠し事をするのもイヤだったから」
 普段はパラミタに住んでいるのだから、隠そうと思えば簡単だ。けれどそうしたくなかったのだと言う郁乃の言葉を、祖母は穏やかに微笑んで受け止めた。
「郁乃」
「は、はい……」
 何を言われるかと思っていた郁乃にかけられたのは、いつもと変わらぬ祖母の言葉だった。
「きちんと話してくれてありがとう」
「えっ?」
「郁乃がこの子たちのことをどれだけ好きなのかは解ったから。とても真剣なんだっていうのが良く解ったから」
「お祖母ちゃん……」
 祖母が自分の気持ちをきちんと理解して、そして許してくれたことを知り、郁乃の目からは嬉し涙がこぼれ落ちた。
「ただな郁乃、きちんと覚えておくんだ。共に生きていくというのは簡単なことじゃない。喧嘩もするし、行き違いもある。それでも郁乃は、この子たちを大切にしたいって思い続ける……覚悟はあるかい?」
 とても真剣な表情で聞いてくる祖母に、郁乃は袖でくぐっと涙を拭って頷いた。
「わたしは2人のことが好きだから……大切だから、絶対に離さない」
 郁乃の決意を聞き、祖母はまず荀灌に向き直った。
「あなたが荀灌さんよね」
「あ……は、はいっ! い、いつも、郁乃お姉ちゃんにお世話ににゃってい……っ!?」
 那美に声をかけられて、荀灌はひっくり返った声で噛み噛みの返事をする。その頭を祖母はテーブル越しに手を伸ばして優しく撫でた。
「お姉ちゃんはどう? 良くしてくれている?」
「はい。いつもお世話になってて……」
 硬直しながらも答える荀灌に、郁乃が口を添える。
「荀灌はね、とても頑張り屋なんだよ」
「あ、い、いえっ! わ、私なんかよりも、お姉ちゃんの方がずっと凄くて! あんな味のお料理作ったりっ、普通の人には出来ませんっ」
「荀灌……それ、微妙にわたしのこと褒めてないよ」
「はぅっ!」
 郁乃の指摘に荀灌は思わず口を押さえた。そんな様子を愛しげに見ると、祖母は今度は桃花に話しかけた。
「桃花さん、あなたみたいなしっかりした人が一緒に居てくれるのなら、とても安心です」
 緊張とそう言われた恥ずかしさで桃花の声は小さくなる。
「あ……は……ぃ」
「きっとあの子のことだから、ずいぶんと心配や迷惑をかけてることでしょう。好きなことには一途な子だから。これからもどうぞよろしくお願いいたします」
 丁寧に頭を下げる那美に、桃花もきちんと礼を返す。
「郁乃様が桃花の存在理由なんです。お祖母様に誓います。何があっても、いつの日か別れるときが訪れても、桃花の隣にいるのは、いていいのは郁乃様お一人だけだと」
 そう言って桃花が穏やかに微笑むと、祖母も同じように微笑んだ。
「郁乃はずいぶんと幸せな出会いをしたんだね。すこし羨ましく思いますよ」
 そして郁乃と縁を結んだ2人を改めて眺め。
「郁乃は少し粗忽者だから、たくさんご迷惑をかけるかもしれないけれど……これからも変わらずに付き合ってあげて下さい。なにか困ったことがあれば、いつでも私に相談してくれていいから」
「お祖母ちゃん……本当にありがとう」
 一度はぬぐった涙が、また郁乃からこぼれた。それを祖母の目で優しく見やりながら、那美はいたずらっぽく桃花と荀灌に言う。
「向こうに修行に抱いた間に、郁乃は随分と成長したものだ……まぁ、なりは小さいままだがな」
「もう、お祖母ちゃんったら……」
 郁乃の泣き笑いに、皆の笑顔が重なった。