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地球に帰らせていただきますっ! ~3~

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地球に帰らせていただきますっ! ~3~
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 ■ 千尋と千尋 ■
 
 
 
 これから実家の神社に帰ろうというとき、響 未来(ひびき・みらい)ははしゃぐ日下部 千尋(くさかべ・ちひろ)を抱きしめた。
「気を付けて行ってくるのよ」
「うん。地球のちーちゃんに会ってくる♪ ミクちゃんにもお土産いっぱい持って帰ってくるねー♪」
 別れを惜しむように未来にぎゅうぎゅうと抱きしめられ、千尋は嬉しそうに笑っている。
 そんな2人を眺めつつ、、日下部 社(くさかべ・やしろ)は考える。
(ちーはホントの自分のことは分かっとるんやな。まぁ、ホントの千尋の方は知らんやろうけど……なぁ何とかなるかな)
 根拠はないけれどきっと大丈夫だという気がする。
 楽観的に考えることにして、社は千尋を連れて地球に帰った。
 
 
「ただいま! おとんにおかんも元気そうで何よりや♪」
 実家に帰った社は、で、この子なんだけど……と千尋を親に紹介した。
「こんにちは。ちーちゃんだよっ。よろしくね♪」
 外見は妹の千尋とそっくりだけれど、性格は全く違う。元気にはきはきと挨拶する千尋に、どういう反応を見せるかと社が見守っていると。
「はっはっは! 見事にそっくりだな」
「あらあら、うふふ♪ 随分元気の良いちーちゃんね」
 父も母も全く動じる様子もなく、楽しそうに笑っている。
 反対に社の方が、そんな反応で良いのかと面食らってしまうほどに。
 こんな両親だからこそ、社も長男だと言うのにパラミタへふらふらと出ていっても責められもせず、認められるどころか自分の好きなことをしてきなさいと応援してもらえているのだろう。

 両親との顔合わせが無事に済むと、社は夏休みの宿題をしているという日下部 千尋の部屋へ向かった。
「ちぃ〜す♪ ちー、ただいま♪」
「やー兄……あ、あの……おかえり……」
 部屋にやってきた社に挨拶すると、千尋はその横にいる千尋を不思議そうに見た。
「そ、その子……誰? ……私?」
 千尋はおどおどと尋ねる。
「地球のちーちゃん、こんにちは! 日下部千尋っていいます! よろしくね♪ ……って名前同じなんだよね。あはは! 何か不思議だねー」
「同じ名前……?」
 自分とそっくりで名前も同じ。けれど雰囲気は全く違う千尋を千尋は目を丸くして見つめた。
 千尋の方は地球に来てもいつもと同じ様子で社にねだる。
「やー兄! せっかくお家に帰ってきたんだから何かして遊ぼうよー」
「よっしゃ! じゃあ何して遊ぼか」
 そうして明るく社に接している千尋の姿を見ていると、千尋はまるで理想の自分がそこにいるような気がした。
 兄のことが大好きなのだけれど、どうしても引っ込んでしまって素直に甘えることができないけれど、本当は……ああやって兄に甘えてみたい。遊んでもらいたい。
 そんな千尋の様子に気づいて、千尋が声を掛けてくれた。
「ん? 千尋ちゃんも一緒に遊ぶ?」
「私は……」
 ちょっと言葉に詰まったけれど、千尋は勇気を出して社の手を握った。
「わ、私も……やー兄と遊ぶ……」
「よしよし。ちーもちーも一緒に……ってどっちもちーやし、何かややこしいな……。何か分かりやすい呼び方あらへんかな? んー、地球のちーだから、ちぃちー、ってのはどや?」
「じゃあもっと短くして、ちーちゃんとちぃちゃんで♪」
「呼ぶのにちょっと技がいりそうやけど、ちーはちぃでええか?」
「うん」
「なら決まりや。ちーとちぃで何して遊ぼかな……だるまさんがころんだ、でもしよか」
 まずは社が鬼になり、壁に伏せる。
「だーるまさんがこーろんだ」
 ぱっ、と振り返ると2人の千尋がよく似た恰好でぴたっと止まっている。
 活発でない分、少し千尋の方がぐらぐらしているけれど、それは見ないふりでまた伏せる。
「だーるまさんがーーころんだっ!」
 後半を物凄い早口で言って振り返ると、2人があわあわと身体を止めようとしているのが面白い。
 足をついてしまった千尋が走ってくると、やー兄早いと背中をぺちゃんと叩いた。
 
 
 二者の想いから誕生した所為でバランスの悪い千尋と、大人しすぎて勇気の出ない千尋。お互いを知ることで、2人に良い変化が出て欲しいとの社の想いから、社が地球に滞在する間ずっと千尋と千尋は一緒に遊び、すっかり仲良くなった。
 パラミタに帰る日、社は2人の千尋を並べて言う。
「二人とも、ちーの想いはちぃの中に、ちぃの想いはちーの中に互いにあるんやで? それって凄い事やと思わへんか?」
 社の言葉に、千尋は兄が千尋を連れてきたのは自分の為なのだと気づいた。
「やっぱり……やー兄は優しいね」
 地球とパラミタに離れていても、兄はやっぱり優しい自分の兄なのだと千尋は思う。
「ちぃちゃん、またやー兄と遊ぼうね。ちーちゃんたちはこれからもずっとお友達だよ♪」
「うん。ちーちゃん、またね」
 実家に滞在した期間に少しだけ安定した千尋と、少しだけ元気になった千尋は別れを惜しみ再会を約束する。
「ほな行くか。ちぃ、またな」
 何度も後ろを振り返っては手を振る千尋を連れて、社はパラミタへと発っていったのだった。