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リアクション
第四章 対百合園戦線
《VS 学徒》
「真奈!コイツら人間じゃない、ただの造り物だよ!」
学徒兵の顔を見て、ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)が叫ぶ。
ミルディアは(いくら悪の手先とは言え、同じ学生を倒すのはちょっと……)と気後れしていたのだが、これなら遠慮するコトはない。
「あたしがここで喰い止めるから、真奈、攻撃お願いね!」
「分かりました!キャラクターチェンジ!」
「ラーーーズィーヤ!」
和泉 真奈(いずみ・まな)はラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)に変身すると、近くの敵はミルディアに任せて、遠くの敵に攻撃を集中する。
ミルディアたちの役目は、学徒兵の前進を阻止しつつ、仲間たちが校長の元へと辿り着けるよう、進撃路を確保すること。
本陣を目指す仲間たちが進撃しやすいよう、行く手を阻む学徒兵を、《天のいかづち》や《雷術》、《ライトニングブラスト》を駆使して、ピンポイントで倒して行く。
仲間たちが自分の視界から消えた頃、ちょうどキーの効果が切れた。
「ミルディア、これを!」
ミルディアに向かって、キーを投げる真奈。
「オッケイ!」
それまで【タワーシールド】の影に隠れ、ひたすら敵の攻撃に耐えていたミルディアは、シールドで敵を薙ぎ払うと、キーに向かって跳んだ。
空中でキャッチすると同時に、キーを突き刺す。
「キャラクターチェンジ!」「ラーーーズィーヤ!」
ユニコーンに跨ったラズィーヤへと変身したミルディアは、手にした【女王のサーベル】を天高くかざす。
陽の光を反射して、サーベルが眩い光を放つ。
「今度は、こっちの番だよ!」
ミルディアはユニコーンの腹を蹴ると、サーベルを構えたまま、学徒の群れへと突撃した。
ユニコーンの蹄が、螺旋を描く気高い角が、馬上から振り下ろされるサーベルが、次々と敵兵を倒して行く。
その姿は、まさに戦いの女神がその場に降臨したかのようだ。
「さっきまでの分、10倍、いや100倍にして返してやるんだから!」
ミルディアは、天に向って吠えた。
《VS 桜井 静香》
(いた!)
学徒兵の向こうに、ニセ桜井 静香(さくらい・しずか)の姿を見つけた騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は、キャラクターキーを取り出す。
(アイシャちゃんの力と給仕の力、平和の為に使わせてもらうね☆)
と心の中でアイシャ・シュヴァーラ(あいしゃ・しゅう゛ぁーら)に語りかけ、キャラクターキーを自分の身体に突き立てた。
「キャラクターチェンジ!」「アーーーイシャ!」
詩穂は、立ち塞がる学徒兵を一瞬で蹴散らし、ニセ静香の前に立つ。
「私はシャンバラ女王のアイシャ・シュヴァーラ。」
身も心もアイシャになり切って、静香に語りかける詩穂。
「今でこそ女王などと言われてる私も、昔はただのメイドでした。……そう、今のあなたと同じように」
詩穂の話の意図が分かりかねる静香は、ただ不審な顔をするばかりだ。
「ですがアナタには、本物の静香校長が身に付けているメイドとしての心と技が、まるで見受けられません」
「……要するに、ニセモノだと言いたいの?」
静香の顔が、怒りに歪む。
「そうです。例え女王となろうともこのアイシャ、メイド時代に培ったもてなしと気遣いの精神を忘れたことは、ただの一度もありません。それをこの私が、貴女への『奉仕』という形で教えて差し上げます!」
胸の前にクロスさせた両手に【一流奉仕人認定証】と【高級はたき】を構え、静香に宣言する詩穂。
「馬鹿みたい。たかがメイドに、一体何が出来るっていうの?」
嘲りの笑みを浮かべる静香。
「アイシャちゃんは、詩穂の最愛の人。借り物とはいえこの身体に傷をつける訳にはいきません!掃除洗濯炊事に子守をこなしても、汚れ一つ付けない一流のメイドのように、戦わせて頂きます!見ていて下さい、アイシャちゃん!」
言うが早いか、一気に静香の懐に潜り込む詩穂。
「は、早い!」
「まずはその戦塵にまみれた衣装と身体を、隅々まで綺麗にして差し上げますわ!」
《ハウスキーパー》と《ランドリー》の技術をフル活用して、静香を隅々まで磨き上げる詩穂。
「ば、バカな……!掃除されているだけなのに、何故ダメージを……!」
静香はガックリと膝を突く。
「さぁ、今度はセルフィちゃんの番だよ!」
「私は、貴女にアイシャ・シュヴァーラ陛下の気品と優雅さを教えて差し上げます!」
変身の解けた詩穂の代わりに変身したセルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)は、そう高らかに宣言すると、誇らしげに【モップ】を構える。
そのセルフィと静香の間を塞ぐように、学徒たちが立ちはだかる。
「フ……。その程度で、この私を止める事など出来ませんわよ!」
《行動予測》と《歴戦の立ち回り》で、巧みに攻撃をかわしつつ、学徒ごしに静香を洗うセルフィ。
モップの柄の長さを利用した、メイドならではの戦法である。
「う、ウブ!ウブブブ!」
モップで顔を洗われ、むせる静香。
隅々まで洗い尽くされた静香は、セルフィの変身が解ける頃には、すっかりぐったりしてしまっていた。
「メイドの嗜み、ご理解頂けまして?」
はたきとモップを手に、見栄を切る詩穂とセルフィ。
「2人とも、お疲れ!仕上げはあたしに任せて!」
【空飛ぶ箒パロット】から颯爽と飛び降りて来たのは、秋月 葵(あきづき・あおい)だ。
「ゴメンね、もうちょっと早く来ようと思ったんだけど、ちょっと色々あって……」
「色々?」
「う、ううん、何でもないの!」
ブンブンと両手を振ってごまかす葵。
『魔乳』の異名を取る胸に憧れて、ワクワクしながら泉 美緒(いずみ・みお)のキーを選んだものの、『変わるのが見た目だけで、身体そのものは全く変わらない』という事実にショックを受け、立ち直るのに時間がかかったというのは、秘密である。
「行くわよ、キャラクターチェンジ!」
「ミィーーーオ!」
眩い光と共に美緒に変身する葵。
「今日は特別よ♪さらに変身!」
再び光に包まれる葵。そして――。
「突撃魔法少女リリカルあおい……改め、魔法少女リリカルみお!華麗に参上♪」
魔法少女のコスチュームを着た、美緒に変身する葵。
葵が着ているとカワイイことこの上ないのだが、美緒が着ると途端に、セクシーを通り越してエロティックに見えてしまうという、実にけしからんコスチュームであった。
「不届きな偽者は、この魔法少女がお仕置きしちゃうよ!」
手にした【魔砲ステッキ】を静香に突き付ける葵。
その動きに合わせて、コスチュームにはちきれんばかりに詰まった胸が、ブルン!と揺れる。
「め、メイドの次は、魔法少女……?」
かろうじて顔だけ上げて、葵を見る静香。
その顔には怒りや恐怖ではなく、ありありと疲労が浮かんでいる。
「いくよー!《シューティングスター☆彡》、フルバースト!!」
葵の言葉が終わるや否や、にわかに闇に包まれる空。
その闇を引き裂くように、《禁じられた言葉》で強化された赤い火の玉が、静香目がけて真っ逆さまに落ちてくる。
「き、キャーーー!!」
学徒兵と共に、隕石に飲み込まれて行く静香。
「フィニッシュ!」
巨大な爆発が、全てを巻き込んでいった。
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