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22


 パーティも佳境に入り。
 誰が言い出したか、王様ゲームをすることになった。
「くじ、できましたー」
 歌菜が、ルカルカに向けて割り箸を渡す。割り箸の先に、1から6までの番号と、王冠のしるしをつけただけの簡単なくじだ。
「歌菜ちゃんありがと〜☆ じゃあ引こうか♪ せーのっ」
 ずい、と出されたくじを、全員で引いて。
「俺か」
 王冠は、ダリルの許に。
「…………」
 しばらく黙っていたダリルが、不意に羽純に近付いた。
 警戒し、一歩引く羽純。それ以上の大股で詰め寄って、巻かれた包帯を引っ張った。
 それはもう勢い良く、さながら帯回しのように。
「〜〜っ、……何するんだっ」
 酔うだろうが、とダリルを睨むと、
「『包帯回し』。ミイラ男じゃなくなったな、悪い」
 さらりと受け流された。
「あはは、ごめんね。魔法使いのマント貸すね」
「羽純くん、一日で二回仮装できてるよ。よかったね!」
「ねー羽純ちゃん、さっきの面白そう。僕にもやらせて?」
「まともなフォローをくれ……」


 二回戦。
「「「「せーのっ」」」
 いっせいに引く。と、今度は
「俺だな」
 淵が王冠を引いた。
 王となった淵が下した命令は、
「これを食べてもらおうか」
 リナトに向けて、飴玉をひとつ渡しただけ。
「? うん」
 なんだろう、と思いながらも、リナトは飴を口にする。
「変な味する?」
 歌菜が問いかけた。
「ううん、しないよ。甘くて美味しい――」
 そこまで答えたとき。
 ぱっ、と一瞬辺りが光った。まぶしさに目を覆う。次に目を開いたとき、
「あれ?」
 リナトが、男の子になっていた。
「ねー淵ちゃん、これなーに?」
「メタモルキャンディーだ。一時間ほど外見性別が逆転する」
「えー! えー、おもしろーいっ。ね、ね、鏡どこかな? 僕かっこいい?」
「なかなか似合っているがな、はしゃいだせいでかなり男前度合いが減ったぞ」


 三戦目に突入する前、ルカルカは時計を見上げた。
 時刻は夕方に差し掛かる頃。外も日が落ち、暗くなってきていた。
 お開きにはまだ早いけれど、今日はこの後料理を持って工房にお裾分けに行く予定だったから。
「これが最後かな?」
 盛り上がってきたけれど、そろそろだ。
「というわけで、後腐れなくいくよー? せーのっ」
 ばっ、と引いてみたところ。
「……ん? 俺か」
 王様を引いたのは、カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)だった。
「ルカルカさんちばっかりだねー」
「僕、王様になりたかったなー。淵ちゃんに可愛い格好させたかったのに」
「う゛!? ……助かった……」
「つっても俺、特にねぇんだが」
 飯食ってる方がいいしー、とあんまりなことを言いながら、カルキノスは考える。
 このゲームが実質最後。
 最後なら、シメを飾る何かがいいだろう。
「よし、歌一曲な」
 びし、と歌菜を指差して、言った。
「え?」
「シメに丁度いいやつ頼むぜ」
 そしてまた、料理に向き直る。スペアリブのディアボロ風がやたらめったら美味なのだ。食べ慣れた、ダリルの作る味とはまた違うので、少なからず歌菜も関わっているのだろう。
 その歌菜は、突然の指名に驚いていた。けれど同時に喜ばしくも思っていた。
 最後を任せてもらえたことや、内容が歌だったこと。偶然思いついただけだろうけれど、でも。
「歌いますっ♪」
 前半部分は、パーティが盛り上がるような明るい曲調。
 だけど後半部分は、全てを包み込むような温かく柔らかな曲を歌い上げ。
 ぺこりとお辞儀をして、終了。
 ぱちぱち、とルカルカやリナトが拍手してくれた。つられたように、ダリルや淵、カルキノスも拍手する。
「どうだった?」
 こそっと羽純の傍に寄り、聞いてみる。
「良かった」
 くしゃ、と頭を撫でられたのが、なんだかとても嬉しかった。


*...***...*


 ゲームを終えて、面々は二手に別れていた。
 一方は、淵とカルキノス。二人はルカルカの家で後片付け。
 後の五人は、帰り道を行くついでに工房とケーキ屋のあるヴァイシャリーへ。
「ダリル渾身のタルト、喜んでくれるといいねー」
「美味かったし、心配いらないだろ」
 タルトは羽純のお墨付きだし問題ないか。
「他の料理も喜んでくれるといいな」
 歌菜が言った。そうだ、お裾分けの料理はタルトだけじゃない。キッシュやプリン、ケーキにクッキー。様々なものを持ってきた。
 楽しかったから、この幸せを誰かと一緒に共有できたら。
 一人でも多くの人が、喜んでくれたら。
「いいよね」
「ですよね」
 自分たちが、誰かに幸せを届けられるなんて。
 とっても素敵ではないか。
「はっぴーはろうぃん」