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13)武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)

正義のヒーロー、ケンリュウガーこと、
武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)は、いきなりピンチに陥っていた。

「牙竜さんは、胸の小さな女性がお好きということなのですけれど、
それってどのような部分に特に惹かれてらっしゃるのかしら。
ぜひ、詳しく聞かせてくださらない?」

「ちょっと、マテ!
何が悲しゅうて、生放送で話さなきゃならないネタなんだ!?」

誰だよ個人情報流した奴は!?
口の中でぼそぼそつぶやく牙竜だが、
こういう番組に限って読唇術のできる人が解析していたりするのである。

(どーするんだよ?
語り始めたら大変なことになるじゃねぇーか
確かにでっぱいより、ちぃぱいが好きだが生放送で言えるかよ)
牙竜は慌てて脳内会議を始める。

(トッドさんの胸で「どのような部分」を実戦しろってか?
やったら、放送事故じゃなくてただの犯罪だよ!
っていうか、それだとちぃぱい好きというより、フケ専だよ!)
混乱のあまり思考が飛躍する。

(語ってるところを惚れてる女に聞かれたら殺されるわ
でも、答えないとトッドさんの番組を潰すことになるし……)
正義感が強いので、実はトッドさんのことを考える牙竜なのである。

(マジでどーするんだよ!
でっぱい おっぱい ちぃぱい
でっぱい おっぱい ちぃぱい
でっぱい おっぱい ちぃぱい
でっぱい おっぱい ちぃぱい
でっぱい おっぱい ちぃぱい
ちぃぱい ちぃぱい ちぃぱい ちぃぱい ちぃぱい
ちぃぱい ちぃぱい ちぃぱい ちぃぱい ちぃぱい
ちぃぱい ちぃぱい ちぃぱい ちぃぱい ちぃぱい
ちぃぱい ちぃぱい ちぃぱい ちぃぱい ちぃぱい
ちぃぱい ちぃぱい ちぃぱい ちぃぱい ちぃぱい
ちぃぱい ちぃぱい ちぃぱい ちぃぱい ちぃぱい
ちぃぱい ちぃぱい ちぃぱい ちぃぱい ちぃぱい)

プッツン!

脳内が「ちぃぱい」で埋め尽くされ、理性がブチ切れた。

「諸君……」
ゆらりと立ち上がった牙竜は、
ひどく理性的な表情をしていた。
そして、威風堂々と演説を開始する。

「私は、このパラミタという新たなる大地に踏み込んだ……。
今、パラミタ大陸はおっぱい激戦区の渦中にある!
でっぱいが豊穣の象徴として称えられる一方で、ちぃぱいの嘆き悲しむ声が響く!
俺はパラミタ大陸に未知なるフロンティアを求めている
既に開拓され完成されているでっぱいに何に価値を見いたせるか?
ここに自由の原点はあるのか?

答えは否、否である!

真の開拓者とはまだ、手つかずの大地を育む者達のことを言う!
三大魔乳を見ろ!
何処に開拓する余地がある?
後は、養分を吸い尽くされて枯れ果てるのみではないか……私には何の魅力もない!

ちぃぱいこそが真の開拓者が求める大地である!
ちぃぱい好きはノイジーマイノリティで、
サイレントマジョリティはでっぱい好きとでも?
断じて否!
今こそ、そのでっぱい好きの仮面を捨てて、
真の欲望を開放せよ!
君もまた、ちぃぱいの素晴らしさに目覚めるはずだ!

私は求める……真なる大地であるちぃぱいを!
立てよ!開拓者!
『ちぃぱいのフロンティア』、略して『ちぃフロ』の地へと!

ちぃぱい万歳!
ちぃぱい万歳!
ちぃぱい万歳ッ!!」

トッドさんは、顔色一つ変えなかった。
所詮は他人事である。

「まあ、では先ほど出演した桐生円さんのような方が理想なんですね」

「もちろんです!
でも、俺にはすでに理想のちぃぱいがいます!」

「おい、まずいんじゃないのか」
番組スタッフの
ライオルド・ディオン(らいおるど・でぃおん)が、
危険な状況を見て言う。
「番組にはハプニングはつきものなのでございましょう?
演出ですよ、演出」
ハングドクロイツ・クレイモア(はんぐどくろいつ・くれいもあ)は、
ライオルドを番組スタッフにしてしまった張本人だったが、
こんな時のために台本をすり替えていたのだ。
「そうか、こういうときは台本通りに、だな。
ええと、一旦、CMに……」
そして、合図を送ろうとするライオルドだが。

(CM入ります、のブロックサイン……こうか?)

(お し た お せ!? そうか!!)

「ちぃぱーい!」
「キャー!?」
なぜかライオルドのせいで、牙竜はトッドさんを押し倒してしまった。
トッドさんの70代女性とは思えぬパンチで、
ベテラン契約者の牙竜がぶっ飛ばされる。
「うぎゃあああああああああああ、ちぃぱいに栄光あれっ!」
「うわあああああ、なんで俺がー!?」
牙竜はライオルドを巻き込んでぶっ飛ばされた。

その様子を見て
ハングドクロイツはほくそ笑むのであった。