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20)ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)

「次は、東シャンバラ・ロイヤルガードの
ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)さんです。
よろしくお願いしますね」
「よろしくお願いしますっ。
私でよければ、何でも聞いてくださいね!」
ソアが、緊張しつつも、朗らかな笑みを浮かべる。
「ソアさんはズダ袋に入れられて、
野球のバットで殴られたことがあるんですってね。
契約者の冒険エピソード(?)として、
その時のことを詳しく聞かせてくださらない?」
「ズダ……ッ!?」
ソアがソファから転げ落ちそうになる。
「ソアさんのような、小さくてかわいい女の子に、
そのようなことをする方がいらしたということなのですが……」
「ええっと……」
ソアがトッドさんの発言のツッコミどころに困る。

「す、すいません、予想外の質問だったのでちょっとびっくりしました。
えーっと……たぶん、『似た声の持ち主 撲殺大会』の時のことですね。
『撲殺の宴』とも呼ばれていますね。
私も気が付いたら捕獲されていたので、
後で他の人から話を聞いてようやく全容が掴めた感じでしたが……」
真面目なソアは、きちんと答えてしまうのである。
「ズダ袋に入れられた、私たち、似た声の持ち主を野球のバットで殴って、
声を当てるという大会だったんです」
「まあ!」
「食堂に依頼が貼りだされていたので、もしかしたら、
視聴者の方にも行かれたことのある方がいるかもしれませんね」
「その時のご感想は?」
「あの時はなんというか、そのー……い、痛かったですっ!
いつも撲殺されてるつぁんださんの気持ちがちょっぴり分かったような……」
ふと、観覧席を見ると、
ツァンダの町の精 つぁんだ(つぁんだのまちのせい・つぁんだ)が当時のことを思い出してガクガクしている。

「あ、でも、助けてもらえたのは嬉しかったですよ!
あそこに集まってた人はみんな本当に声がそっくりなので、
声を当てるのも大変だったかと思いますし。
もしかしたら、わざわざ音楽室に行って調べてくれた人もいるかもしれませんね。
そうだ。この場を借りて、改めてお礼を言わせて頂きますねっ。
声を当てて助けてくれたみなさん、ありがとうございましたーっ!」
「って、なんなのそのポジティブさは!? いい子すぎるだろソア!?」
カメラ目線でお礼を言うソアに、つぁんだが突っ込む。

「あと、某撲殺天使さんは野球のバットの扱いに関しては天下一ですし、
きっと手加減も上手なんだと思います。
つぁんださんとか何度も撲殺されてますがピンピンしていますし。
なので、撲殺といっても、本当に殺されている人はいないので大丈夫です!
……たぶん。きっと」
最後の方は、なぜか視線を逸らしてソアは言った。
「まあ、ソアさんはとても珍しい体験をされていらしたのね。
そのようなことはなかなか言えないわ」
「そんなことないですよー」
ソアがはにかむ。
「こうして、助けてくれた皆さんや、
似た声の皆さんにお会いできたのも、何かのご縁ですし。
皆さんも、私達に限らず、声が似ている人を探してみるのは面白いと思いますよ。
自分と声が似ている人を見つけたら、
そのきっかけから友達になれるかもしれませんしっ」
「実は、ソアさんと似た声の持ち主の方が、
今回の「トッドの部屋」契約者特集のゲストとして、
複数参加されているようですよ」
「そうなんですか!
こうしてまたご一緒できるのはうれしいですね!」
「こういうの若い人の言葉でなんて言ったかしら。
たしか……『ソアさんマジ天使』」
「トッドさん、お若いですねっ」

殺伐とした話題であったが、
ソアにかかれば、いい話としてまとめられてしまうのであった。