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年の初めの『……』(カギカッコ)

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年の初めの『……』(カギカッコ)
年の初めの『……』(カギカッコ) 年の初めの『……』(カギカッコ)

リアクション


●epilogue

「ただいまー。って私とねーさましかいないけど……」
 部屋の電気をつけて置き時計を見ると、もうじき2022年1月1日が終わるのが判った。
「あー疲れた。外は寒かったねー。暖房入れて早くあったまらないと」
 久世 沙幸(くぜ・さゆき)は上着を脱いで壁のハンガーにかける。手が滑ってずるりとハンガーが落ちてしまったが、面倒なのでそのままにしておく。
 倒れ込むようにしてコタツに滑り込み、ひょいと首を巡らせて沙幸は言った。
「ほら、ねーさまもそんな所に立ってないで、コタツに入ってあったまろうよ」
 言いながら沙幸は体を伸ばし、エアコンのリモコンをつかんだ。
「あまり寒くありませんけどね、わたくしは」
 手を洗って参ります、と藍玉 美海(あいだま・みうみ)は洗面所に姿を消した。
「えっ、ねーさま、寒くないって?」
 沙幸の首が洗面所のほうに向いた。
「……それは神社で振舞ってくれてた御神酒を飲んでいたからじゃないかな。何回もお代わりしちゃって……飲みすぎはよくないんだからね」
 ガラガラガラガラ。わざと、聞こえるようにうがいをする声がする。
「もー! 聞いてないふりをしないで。それにほら、昔から『元日にやったことは一年中続けちゃう』っていうから、なおさら気をつけなきゃだよっ」
 美海が戻ってきた。
「あらそんな格言初耳ですわ」
 なるほど確かに美海の肌はうっすら桃色に色づいている。御神酒のせいだろう。
「そう。だから気をつけて」
 コタツが温まってきた。沙幸は天板にべたっと顔をつけ、うっとりしながら言う。
「それにしても空京神社はすごい人だったねー。あんなに混んでるとは思わなかったよ」
 するりと美海もコタツに入った。だがわざわざ、沙幸と同じ側に入っている。
「確かにすごい人出でしたわね。きっと、それだけ地球の文化がパラミタに馴染んできたということなのでしょう。この素敵な関係が続くよう、わたくしたちも頑張らなくてはいけませんわね」
「ちょっとちょっと、なんで私と同じ側? 狭いんだけど……」
「寒くなってきましたので」
 さっき寒くないと言ってたじゃーん、と沙幸は言いつつも、まあいいか、と思い直した。
「神社の話だけどさ。ねーさまのいう通りかもしれないね。……うん、パラミタと地球のいい関係をずーっと続けていくためにも、その最前線にいる私たちが頑張らなきゃだね」
 ほんわかと幸せな顔をしながら沙幸は頭を上げた。
「ところでねーさま、お腹すいてない? 実家からお餅をたくさんもらってきたから、お正月だし、お雑煮にして食べようよ」
 すると得たりとばかりに、するすると美海は沙幸の体に腕を回したのである。
「沙幸さん、わたくしはお餅よりも、そのもちもちした沙幸さんの身体を頂きたいですわ」
「って!? ねーさまったら! 頂くってつまり……」
「……もちろん性的な意味で、ですわ。姫始めというやつですわね」
 などといいながら彼女の右手は、すでに沙幸の胸元に入り込みこれをまさぐっている。
「あらこんなところに、つきたてのお餅が」
 などと揉みしだく。両手で。
「な、何変なこと言ってるんだもん!! もう、さっきも言ったけど、元日にやったことは……って!」
「あら勘がいいですわね。そうですわ。いにしえより続く格言にしたがって、『元日にしたことは一年中続けちゃう』を実践しようとしている次第ですの。ほらほら、あと数分で元日が終わってしまいますわ。少々乱暴になるかもしれませんが急ぎませんと」
「だ、ダメだってばぁ……」
 という沙幸の唇が、ねっとりした美海のキスでふさがれた。声を上げるまもなく沙幸は押し倒されている。美海は存分に沙幸の舌を味わい尽くしたあと、つーっ、と舌を滑らせ、彼女の顎、首、そして胸元を舐めながら頭を下げていった。同時に彼女の指は、沙幸の胸を守る最後の布をおしのけ、つんと尖ったものを指でつまんだ。
「ハッピーニューイヤー、沙幸さん。まずは本日中に一度、夢心地にしてさしあげませんとね」
「ああっ、もう……」
「もう、なんですの?」
「何言わせる気よねーさま、もうあと三十秒で今日が終わりって言いたかっただけ……やんっ!」
「あらもう今日はおしまいですの? でも、心配なさらずとも一年中沙幸さんを可愛がって差し上げますわ……」

 デジタル時計の数字が『0:00』になる寸前に、沙幸は一度達した。

担当マスターより

▼担当マスター

桂木京介

▼マスターコメント

 マスターの桂木京介です。ご参加いただき、本当にありがとうございました。
 新年一日目、おめでたい話もあり、楽しい話、シビアな話、あるいは陰謀渦巻く話……少々えっちなお話など色々ありましたが、参加キャラクターそれぞれの物語を、一日という内容に凝縮して描くことができて私自身、とても充実した気分です。

 楽しんでいただけたでしょうか。
 毎回書いているのですが、実はこれが一番不安なのです。私自身だけ楽しんでいても仕方がありませんからね……。ですので、これまたいつも書いていますが掲示板に感想を書いて頂けるととても嬉しいです。

 基本的には、一日の時間軸にそってお話を進めました。
 ですが一部、前後しているところがあることもお断りしておきます。よくわからないところや間違いがあったとしたら、それは全部私のせいですので、「コラー!」という一言を添えて運営経由でお知らせ下さい。訂正しますので……。

 それでは、また次回、新たな物語でお目にかかるとしましょう。
 おそらくは次は、『Tears of Fate』の完結編になると思われます。
 ではそのときまで! 桂木京介でした。

―履歴―
 2012年2月5日:初稿
 2012年2月14日:改定第二稿
 2012年2月29日:改定第三稿
 2012年3月22日:改定第四稿