リアクション
○ ○ ○ 「エリザベートちゃん、こっちですよ」 神代 明日香(かみしろ・あすか)は、イルミンスール魔法学校の校長であるエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)に付き添って、学園祭に訪れていた。 予め調べてあった出し物――というか、リーア・エルレン(りーあ・えるれん)の魔法薬狙いで、明日香は猫&うさぎガーデンにエリザベートを連れてきた。 「猫とうさぎがいっぱいいますねぇ……」 可愛らしい猫やうさぎの姿は、エリザベートの心をも和ませる。 「うふふ〜。シートに座りましょうか」 芝生の上に敷かれたシートに、明日香はエリザベートと並んで腰掛けた。 「ニャー」 人懐っこい猫が、2人にすり寄ってくる。 「土足で上がったらだめですぅ。でも猫なら仕方ないですぅ」 言いながら、エリザベートはちょんちょんと、猫の頭に触れていた。 「可愛いですねぇ。はい、エリザベートちゃん。面白い飲み物ですよ〜」 微笑みながら、明日香はエリザベートにもらってきたスープを渡した。 「面白いんですかぁ?」 「面白いんですよぉ。あ、猫さんとうさぎさんのおやつはもう少し後だそうですよ〜」 スープを渡した後、明日香は自然に猫やうさぎに話しかけていた。 エリザベートはさほど疑問も抱くことなく、スープを飲んでいった。 「……ちょっと変わった味が混ざっているスープですねぇ」 雑談を交えたりしながら、ごくごくスープを飲み干した、その直後。 「んにゃ?」 エリザベートは子猫へと姿を変えていた。 「うう〜。やっぱり可愛いですぅ。ホントは一緒に猫さんになりたかったんですけれどぉ」 明日香は子猫のエリザベートを即抱き上げて、ぎゅっと抱きしめた。 「一緒にはしゃぎまわったら、危険ですからねぇ」 「にゃーん、にゃん(猫になったんですかぁ!? どういうことですかぁ、アスカ〜)」 子猫のエリザべートは明日香の腕の中でじたばた暴れている。 発せられる声は、猫の鳴き声にしかきこえないけれど、エリザベートが言いそうなことは、明日香にはわかる。 「猫さんになると普段とは違う視点で行動できて面白いですよぉ」 そして、こっそり可愛い耳に口を近づけて言う。 「悪戯しやすいと思います〜」 「にゃあーん」 最初は不満気だったエリザベートだけれど、明日香に離してもらってから、うさぎが集まっている場所に飛び込んで行ったり。 訪れた人々を挑戦的に見上げて。 「あ、この子猫可愛いっ」 「にゃにゃんにゃん、にゃあん〜(汚い手で触らないでくださぁい。つかまえられるものなら、捕まえてみてください〜)」 触れようとした人を、馬鹿にするかのように、走り回ったりしていた。 「怪我しないようにしてくださいね〜。怪我させてもダメですよぉ」 明日香は走り回るエリザベートから決して目を離さず、見守っていた。 「よしこれならどうだ。ほらほら、お菓子あるよ、こっちにおいで〜」 少年が、クッキーを取り出して、エリザベートの興味をひく。 「お菓子を上げたら駄目なんですよぉ。猫さん達、お腹壊しちゃいますからね〜」 クッキーに飛びつこうとしたエリザベートを、明日香は急いで抱き上げた。 「なーなー(アスカ、クッキ―食べたいですぅ)」 「お菓子は元に戻ってから一緒に食べましょうねぇ」 明日香は再びぎゅっとエリザベートを抱きしめる。 人間の姿の彼女の事も、可愛くて仕方ないけれど。 「可愛い、とっても可愛いです……!」 人前でこんな風に思い切り抱きしめて、撫でて、可愛がることが出来ることが、嬉しかった。 「にゃーん。にゃん」 子猫は明日香の腕の中で可愛い声を上げて、彼女の首にすり寄ってきた。 |
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