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はっぴーめりーくりすます。3

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はっぴーめりーくりすます。3

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 ――偶然なんてないのよ、と夢の中で知らない女が笑って言った。

*...***...*

 少女は、見晴らしのいい丘でひとり立ち尽くしていた。
 散歩をしていて迷子になって、初めて来たはずのその場所で。
 ここを、知っている、と。
 不思議な違和感に、足を縛られていた。
(どうして?)
 右を見る。
 左を見る。
 やはり、見覚えはない。それなのに。
(知っている)
 どうして、と口に出して呟いた。自分にしか聞こえないほどに小さな声で。
 返事はない。
 誰からも、ない。
 当たり前だ。ここには自分しかいないのだから。
 風が吹いた。髪を撫でる暖かな風。懐かしく思ったのは、なぜ?
 歩いた。
 丘の上へと続く道を。
 緩やかな坂を上りきると、そこには一本の大樹があった。何年も、何十年も、この場所に立っていたであろう老木が。
「…………」
(ここで)
 誰か、大切な、人と。
 大切な、思い出が、記憶が。
 きぃん、と耳鳴りがした。
(誰かって、誰?)
 やはり、誰も、答えない。ため息を吐いて、少女は樹に手を伸ばした。ごつごつと硬い樹の感触が、指先に伝わる。
「……あれ?」
 一部。
 なんだか手触りが違った。樹に顔を近づけてみる。
(何か書いてある)
 文字を、目で追った。書かれていたのは、一篇の寓話。
 死した少女と、傍観者たる少年が、出会い、そして別れる、悲しい物語――。
 読み終えたとき、涙がこぼれてきた。
 自分のことだと、知っていた。
「行かなきゃ」
 約束をしたんだ。
 ここで。あの日。泣きながら。笑いながら。あの人と。
 ――『待ってるよ』。
(ねえ)
 走りだした。丘を、駆け下りる。
(まだ、待っていてくれてる?)
 ――『行ってきます』。
 そう言って別れたのだから、言わせてよ。
(ただいまって。言わせてよ)
 あなたの胸に飛び込んで。
 待たせてごめんね。
 私は生きてるよ。
 これからは一緒に歩けるよ。
 そう、言わせてよ。