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レターズ・オブ・バレンタイン

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レターズ・オブ・バレンタイン
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36)

空京の町にて。

大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)は、
メルヴィア・聆珈(めるう゛ぃあ・れいか)を誘って、
ショッピングに繰り出していた。

「なあ、メルメル」
「その呼び方はやめろ! メルヴィア少佐だ!」
「少佐て。今はプライベートやろ」
「関係ない。私は軍人だぞ」
「そんな、肩ひじ張らんと。な、メルメルしょーさ」
泰輔が、ファンシーショップのぬいぐるみを使って、
腹話術のようにメルヴィアに話しかける。
「……」
「お、おとなしゅうなったな。なら、今日はメルメルしょーさってよぼか」
「……ッ! 別にそんな許可をしたわけじゃ……!」
「あはは、そんな怒らんと、楽しくやろうや」

その後、メルヴィアは、
ちゃっかりさっき泰輔が腹話術したぬいぐるみを購入していた。
(やっぱ、かわいいものが大好きなんやなあ)
そんなメルヴィアが、軍人らしく振舞おうとするのが立派だと、
泰輔は考えている。

だが。
(それはそうと、いじったら面白い子ぉでもあるんやよね)

泰輔は、ウィンドウに並んでいる、
チョコレートのクマを見ているメルヴィアに話しかけた。
「そういえば、去年、似たような、
かわいいクマさんのチョコ……去年のアレはどうしたんかなぁ?」
「ああ、あれは、しばらく大切にとっておいたが、
賞味期限があるからな」
「なにい!?」
泰輔は、この世の終わりのような表情を作ってみせる。
「なに、あんなかわいいくぁいいクマさんを、食べた!?
食べちゃったぁ?
なんちゅう残酷な……」
「な、何を言って……」
「メルメルしょーさ、そんなかわいい顔して恐ろしいお人や……」
「そ、そんなこと言ったって……」
メルヴィアは、メルメルモードになり、涙目で叫んだ。
「だって、食べてあげないとクマさんがかわいそうじゃないかあ!」
えぐえぐと泣くメルヴィアの頭を、
泰輔は、ぽふぽふとなでる。
「冗談やって」

そして、小さなテディベアを差し出す。
「これは?」
「今日、付き合ってくれたお礼」
テディベアのタグには「王矮虎」と刺繍してあった。

「僕な、メルメルとこれからもこうして遊びたいねん」
「……ありがとう」
メルヴィアは、そう言って、テディベアを受け取り、ハッとして叫んだ。
「い、今のは、この子をプレゼントのしてくれたことに対するお礼であって、
おまえを友人として認めたわけじゃないからな!」
「あはは。そんなんわざわざでっかい声で言わんでもええのに」
泰輔に言われて、メルヴィアは、さらに真っ赤になってうなったのだった。