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【2024初夏】声を聞かせて

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【2024初夏】声を聞かせて
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3.新入生の休日

「コンピューターゲームも楽しいですけれど……こうして景品が手に入ると、嬉しさ倍増です」
 ゲームセンターから出た千返 ナオ(ちがえ・なお)の手の中には、キャンディーや駄菓子が沢山あった。
「よかったな。ナオ、こういうゲーム上手いんだな」
「いや、かつみさんが、とれそうな台を教えてくれたからですよ。だから半分はかつみさんのものです」
「はは……それなら、お土産に持ってかえろうか」
「はい!」
 ナオは大切そうに、ウエストポーチの中にお菓子をしまった。
「学校の友達とも、たまに来てるのか?」
 千返 かつみ(ちがえ・かつみ)は優しくナオに尋ねた。
 ナオは春から、学校に通い始めた。
 慣れるのに必死で、色々と大変そうにしていたが……かつみは世話を焼きたくなる気持ちをぐっと抑えて、ナオを見守っていた。
 最近、少し慣れて来たのかようやく落ち着いてきたため、羽を伸ばさせてあげようと、遊びに誘ったのだ。
「こういうのはまだ、です」
「そうか。……それにしても、暑くなってきたな」
 午後三時。
 今日は半袖でも暑いくらいだった。
「アイス、食べていくか?」
「はい! あの……」
「ん?」
「ダブルにしてもいいですか?」
「もちろん」
 かつみが笑顔で答えると、ナオの顔がより明るくなる。
「いらっしゃいませ〜」
「ええっと、コーンで、ダブルでお願いします。アイスは……」
 アイスクリームショップに入るとナオは真剣な表情になり、コーンの上に乗せるアイスを選び出す。
「トリプル……はさすがにやめておいた方がいいでしょうか」
「よし、一緒に挑戦してみるか?」
「はい!」
 ナオは目を輝かせて、アイスクリームを3種類選んだ。
 かつみもそんなナオを微笑ましく思いながら、定番のアイスを3種類選んで――カップに入れてもらった。
「あっ、かつみさんカップなんですか?」
「うん。ほら、落とさないように座って食べよう」
 笑いながら、かつみはナオを椅子へと誘った。
「急いで食べると頭がキーンとするんですよね、こぼさないように上手くたべないと……」
 アイスを落とさないよう慎重に歩いて、ナオは一番上のアイスから食べていく。

 アイスを食べ終えた後は、大きな本屋に立ち寄って文房具や本を見て回って。
 一日めいっぱい楽しみ、空が茜色に染まった頃、家に戻ったのだった。