イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

ンカポカ計画 第2話

リアクション公開中!

ンカポカ計画 第2話

リアクション


第4章 消火

 ブルー・エンジェル号では、如月佑也とレキ、わんこしいなの2人と1匹が消火活動にあたっていた。
「わん。わんわんっ」
 わんこしいなが、2人を案内したのは放屁研究室と判明したホワイトルームだ。
「やっぱりここか……」
 まず、佑也がわんこしいなのリードを握って、警戒しながら中に入る。
「しっかしオナラガス爆発もナメたもんじゃないな。凄い惨状だぜ」
 レキは両手にバケツいっぱいの水を持ってきている。
「たしかに、なんか臭うよね」
 と、そのときトツゼン、わんこしいなが……
「にゃあ〜」
 にゃんこしいなになった。
 前足を踏ん張って、お尻を左右にフリフリ。そしてダッシュ!
 何かを見つけて、前足でガシッと掴む。そのまま横になると、後ろ足でゲフゲフッとキック!
 にゃんこしいなが捕まえたのは、サンマだった。
「サンマ? なんでこんなところに?」
 見ると、七輪の上でサンマが焼かれていた!
「消火っ!」
 レキがサンマと七輪に水をぶっかける!
「うわっ。冷たーいっ!」
「いきなり何をするんじゃっ!」
 物陰から出てきたのは、英希とファタだった。
 2人は、ンカポカの性体験を根掘り葉掘り訊くアンビリーバボーカルテットをいったん解散し、「アナタとワタシとサンマ」という新コンビを結成していた。
 ようするに、サンマを焼いていた。
「キミたちこそ、この一大事に何やってんだよ?」
 レキは呆然としていた。
「何って……」
 英希は立ち上がって、謎の弁解をはじめる。
「聞いてよ。ファタさんが、サンマにぞっこんラブだって言うんだよ! 愛するあまり焼くって言うんだよ! でも――」
「英希くん」
「でも、サンマを愛するのはファタさんだけじゃ――」
「英希くんっ!」
 必死に喋りつづける英希の肩を、佑也がガシッと掴んだ。
「英希くん、しっかりしてくれよ」
「ううっ。だって……俺もサンマが好きなんだーーーーーっ!!!!」
 そしてファタは、サンマに向かって身構える。
「ええーい! 水なんぞかけおって。それでもわしはサンマを焼くんじゃー! どりゃあああああ! ファイアストーム!!!」
 バッシャーン!
 レキは、今度はサンマではなく、ファタと英希に水をかけた。
「いい加減にしてよっ!」
 恋は盲目。ファタがレキをギロッと睨みつける。
「くううん……」
 わんこしいながブルッと震えたそのとき、ファタはトツゼン、レキに甘えてキッスを連発。
 んちゅんちゅんちゅんちゅ。
 英希はトツゼン、サンマを磨く。きゅっきゅきゅっきゅっきゅっきゅ。
 その磨いたサンマに、ファタがキッス。んちゅんちゅんちゅんちゅんちゅ……。
 ファタは症状から覚めると、呟いた。
「サンマが……足りない……」
「うん。……取りに行かなきゃ……」
 2人はホワイトルームを後にした。
 カラーン……。
 レキの手からバケツが落ちた。
「焦げ臭いニオイって、こんなことだったんだね……」
 佑也は、何か言いたげな目のわんこしいなに気がついた。
「もしかして、わんこしいなは洗脳される前に、ここで何か見たんじゃないかな」
「だったら、洗脳を解かないとだね」
「くうん……」
 佑也とレキは、警備員の洗脳が解けたときの様子を思い出していた。
「たしか、さけさんとレンくんが殴って……」
 佑也が自分の拳をみつめる。
「そのあと、静麻さんが水に……」
 レキが手に持つバケツの水をみつめる。
 わんこしいなは只ならぬ気配に後退りし……
「きゃんきゃんきゃーん!」
 凄まじいスピードで駆けていってしまった。
 2人は「ごめん、わんこしいな! みんなの命のためだーっ!」と追いかけるが、そのときトツゼン、佑也がレキの髪を引っ張った。
「いたたたた!」
 レキのポニーテールをほどいて、ツインテールにして、
「こっちがいい!」
「あ、はい……」
 自分の髪をツインテールにしておけば発症しないのでは、という仮説は破られた。そして……
「遊ぼうよ。遊ぼうよ……」
 レキはトツゼン、佑也の手を引っ張って、ホワイトルームに引っ張ってしまった。
「そうだね」
 佑也はレキと遊ぶことにした。
 九死に一生を得たわんこしいなは、どこまでも逃げていった。

 英希とファタは、厨房に来ていた。
 が、中からはヘタクソな歌声が聞こえていた。
 無人島のために食糧を独り占めしようとスタッフを全員やっつけた竜司が浮かれて歌っているのだ。
 竜司は体も大きく、ファタと英希はひるむ。
 が、サンマへの恋は真剣だ。ファタが勇気を出して声をかける。
「おぬし、サンマをくれぬか。サンマだけでよいのじゃが……?」
「なに? サンマ? やるかぼけ!」
 竜司は聞く耳を持たない。
 が、すぐに気が変わる。
「いや、サンマをやろう。ただし……」
「ただし?」
「オレの舎弟になれ!」
 怒りで肩を震わせるファタと英希。
「誰が舎弟なんかに〜」
 と、そのとき竜司がトツゼン、歌い出す。それも奇跡の美声で。
「♪はりつめた〜ららら〜 ららららら〜ららら〜 ららららら〜ら〜ら〜ら〜」
 ファタと英希は、一発で胸を打たれた。
「う、うつくしいっ……!!!」
 しかし、奇跡の歌は途中で終わった。
「さ、最後まで聴かせてくだされ!」
「あ? 何がだよ。とにかく、てめえらはオレの舎弟になれ」
「舎弟にでも何でもなるよ! いや、なります! なりますとも!」
 竜司は、めでたく舎弟を2人ゲットした。
 と、そこにさっそく竜司の敵となる男がやってくる。静麻だ。
「おいおい。スタッフ倒してどうするつもりだ? まさか……食糧を独占?」
 竜司が弱そうな舎弟たちに指示を出す。
「おい、舎弟ども。やっちまいな」
「お任せを!」
 とは言ったものの、サンマとの三角関係で体力を消耗していた彼らはあっさりと静麻に掴まった。
 簡単に腹に一発ずつパンチをもらって、倒れた。
「よっこらせっと」
 静麻は、別名プール処刑人。ファタと英希をそれぞれ左右の肩に担ぐ。
「やれやれ。プールの水にでもつかって、目を覚ましてもらおうか。……そっちのあんたは」
 と、そこでまた竜司がトツゼン、奇跡の美声で歌い出す。
「♪はりつめた〜ららら〜 ららららら〜ららら〜 ららららら〜ら〜ら〜ら〜」
 静麻は聞き惚れて、涙した。
「ここの食糧は、あんたに譲るよ……」
 舎弟2人を担いだまま、厨房を後にした。

 甲板のプールでは、ある変態が待っていた。
「ふっふふふ。ふふっ」