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ホワイトバレンタイン

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リアクション

 『劇場版・蒼空学園最大の危機』
 バレンタインデートとは思えない映画の選択だが、意外と小谷 愛美(こたに・まなみ)は楽しんでくれた。
「おもしろかったね!」
 愛美のその言葉に、ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)は柔らかな笑みを見せた。
 彼女との付き合いは、割りと長い。
 蒼空学園での最初の友人になり、それからいろんなイベントに愛美を誘ってきた。
 うまく一緒に行けたのもあるし、そうでなかったものもある。
 その間に、自分の恋愛感情を自覚したり、もあった。
 愛美を好きな人はたくさんいて、なかなか想いは届かないけれど、でも、ウィングはあきらめずにそばにいた。
「少しウィンドウショッピングでもしましょうか」
 ウィングはそう誘い、愛美と一緒に街を歩いた。
 3時ごろになると、ケーキバイキングに行くことになったが……愛美が少し迷った。
「太っちゃったり……しないかな?」
「今日だけはいいんじゃないですか?」
 不安そうな愛美にウィングは優しく言った。
「いつもいつも自分を縛っておく必要は無いんです。締めるときは締めて、遊ぶときは遊ぶ。そうじゃないと、バランスが取れないですからね」
「うん……そっか、それじゃ行こっか!」
 ウィングは男性だが、女性の多い環境に育ったため、こういったスイーツバイキング系も気にせずには入れた。
 それどころか、アルバイト先のカフェテラスで、たまに自分でも作っているくらいだ。
 そのためか、ウィングは愛美の「おいしいねー、これ何を使ってるんだろう」というケーキについての質問に、割りと答えてあげることが出来、会話が弾んだ。
 
 夕方になると、2人は蒼空学園に戻り、カフェテラスで一休みした。
 愛美はカフェオレを飲んで、ゆっくりと一息ついた。
「お疲れ様でした、愛美さん」
 ウィングはそう言うと、愛美に花束を差し出した。
 千日紅が入った花束だ。
「ありがとうー、キレイだね」
 その花には『変わらぬ愛情』という意味があったのだが、そして、もう一つ内緒の花言葉の意味もあったのだが、愛美は気づかずに受け取った。
 ウィングはひとまず喜んで受け取ってくれたからいいかと思うのだった。


「バレンタインデーは忙しそうだな、大丈夫か?」
 トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)に声をかけられ、小谷 愛美(こたに・まなみ)はうんうんと頷いた。
「忙しいのはバレンタインだけじゃないよ。その前から準備が必要なんだもの」
「準備? ああ、チョコ作りとかか」
 トライブはそれを聴き、愛美に提案した。
「買出し、付き合おうか?」
「本当、ありがとう!」
 愛美は遠慮なく、お願いすることにした。
「了解。バレンタイン特別サービスってことで、ロックスター商会が何でも無料でやってやるぜ」

 愛美の買出しは手作りチョコの材料作りだった。
「なんだかんだで人気者だからなあ、愛美は」
 等身大の蒼学生である愛美は友人も気にしてくれる人も多い。
 自分自身もその一人であるトライブは愛美を気にする人たちの気持ちも分かった。
 大切な妹でも見守るように、トライブは買ったものを持ってやりながら、愛美の望むままにラッピング素材を見に行ったり、一日忙しく動いた。

 たくさんの買い物を終えた2人は、蒼学へと戻ることにした。
「チョコを買うんじゃなくて手作りチョコか。運命の人でも現れたか?」
「残念ながら、巡り合えないねぇ……」
 トライブの言葉に、愛美は溜息をつく。
 その愛美の前に、さっとチョコが差し出された。
「ガラじゃないが、一応手作りだ。良かったら受け取ってくれ」
「すごいね! さすが便利屋さん」
 逆チョコをもらって愛美は喜んだ。
「運命の人探し頑張れよ」
 トライブのあげたチョコは甘さ控えめのビターチョコだったが、それは甘くはないぞと言う洒落と少しの意地悪だった。
 でも、愛美を助けてやりたい気持ちは本物だ。
「困ったことや大変なことがあったら、何だって手助けしてやる。だから遠慮なく俺を頼りな。運命の人が見つかるまでは、俺が守ってやるから。んじゃ、頑張ってきな。応援してるぜ」

 
 如月 正悟(きさらぎ・しょうご)小谷 愛美(こたに・まなみ)が楽しくない冬休みを過ごしたのではないかと心配していた。
「もうすぐ冬が終わりだから、楽しい思い出を作りに行こう!」
 愛美を連れ出し、正悟は空京のアミューズメントパークへと向かった。
「ここなら寒くなくていいね!」
 思いの外、愛美が気に入ってくれたので、正悟はうれしくなって一緒に愛美とアトラクションを楽しんだ。
 洒落たエスコートなんて出来ないと割り切って、楽しんだのが良かったのか、正悟と愛美のデートは盛り上がった。
「ねえねえ、あのおっきな蚊取りブタに乗ってみようよ!」
 愛美がそう提案したり。
「お、あれ、城で戦うものらしいよ! やってみよう」
 と正悟が誘ったり。
 互いに互いのやりたいものを順番に誘って、楽しく遊ぶことが出来た。

「そこのカップルさん〜やっていかない?」
 スタッフさんが愛美と正悟を見て、そう声をかけた。
「カップルだって」
 ちょっと頬を染める愛美だったが、鈍感な正悟は気づかず、スタッフが誘ったアトラクションを見た。
「この天秤に手をあてると、相性が分かるんだって。やってみる?」
「う、うん」
「こういうのって2人で来ないとできないしねー」
 正悟が手をあてると、逆の方の天秤に愛美が手を当てた。
 そして、ピピピピっと電子音が鳴り、機械の声が響いた。
「オフタリ ノ アイショウ ハ 56%」
 ウィーンと音をさせながら結果を印字した紙が出る。
「普通よりちょっといいってことかな?」
 正悟の言葉に愛美はこくっと頷く。
「いいなあ、これ。今度マナミンの運命の人が見つかったら一緒に占いに来よう!」
 愛美は気に入ったらしく楽しそうに言った。

 アミューズメントパークを出た後、正悟は自分と愛美とパートナーの分の3つを購入し、愛美に一つをプレゼントした。
「どうもありがとう!」
 チョコっておいしいよねと言いながら愛美は受け取り、「また遊びにいけたらいいね」という正悟の言葉に「そうだね」と素直に答えたのだった。