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嘆きの邂逅(最終回/全6回)

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嘆きの邂逅(最終回/全6回)
嘆きの邂逅(最終回/全6回) 嘆きの邂逅(最終回/全6回)

リアクション


〇     〇     〇


「柱の後ろに隠れてください」
 片倉 蒼(かたくら・そう)が栄光の刀を手に、剣を振るうジュリオ・ルリマーレンの元に躍り出た。
 振り上げた彼の腕に一撃を加え彼の邪魔をする代わりに、自身は胸に深い傷を負う。
「等しく滅びよ!」
 ジュリオが蒼の剣を自らの剣で振り払う。力に押されて蒼は壁に背を打ち付ける。
「蒼君、自分に回復魔法を!」
 エメが言い、ブライトグラディウスをジュリオに繰り出す。
 紙一重で躱して、ジュリオは剣をエメの頭へと振り下ろす。
 エメは体を捻り、辛うじて直撃は避ける。刀身が触れた腕から血が噴き出した。
 更にエメに攻撃を加えようとするジュリオに、真紀が遠当てで攻撃をする。衝撃を受け、ジュリオが足を1歩、後ろに引いた。
「貴殿以外の6騎士、マリザ、マリル、カルロの封印は既に解かれています。我々と共に、鏖殺寺院の兵器と戦っています」
 真紀のその言葉に、ジュリオはピクリと反応を見せるも、首を大きく振り叫ぶ。
「我は女王の僕、鏖殺寺院の戦士、ジュリオ・ルリマーレン!」
「話をちゃんと聞いて!」
 その反応に、真紀のパートナーサイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)が大声を上げる。しかし、ジュリオは意に介さず、光の魔法を放つ。
 飛んで来た光の矢が、サイモンの肩を貫いた。
「下がって下さい」
 蒼が走りより、サイモンにヒールをかける。
「……違います! 貴殿は離宮を守護する6騎士の1人のはずです。子供もいたはずです。今の時代に、貴殿の子孫がいます!」
「黙れ、我を惑わす邪悪な存在よ!」
 真紀の言葉に不自然な反応を示して、ジュリオは次第に混乱していき、ただ激しく攻撃を仕掛けてくる。
 洗脳されている。ただし、不完全だ。
 そんな印象を受けた。少なくても、封印から解けて混乱している状態というわけではなさそうだ。
 真紀は、封印の石をジュリオから取ったことが原因で彼の怒りのスイッチが入ったのではないかとも思っていたが、それもどうやら違うようだ。
 彼は石に固執しているわけではなさそうだ。輪廻を追おうとも特にはしない。ただ、目の前の自分達を倒そうと剣を振るい、魔法を放ってくる。
 真紀は、応戦しながらふとジュリオの腕に嵌められている金の腕輪に目を留める。
「……あれは、ソフィアがしていたものと同じ?」
 敵味方を認識するためのものか。それとも何かのコントロールができるものなのか。
 判断は出来ないが、記憶に留めておく。
「ジュリオ、倒す、倒す、倒す……!」
 集まっていく光条兵器使いは、ジュリオをも攻撃していく。
「煩い蝿め!」
 ジュリオは剣を振るい、彼らを一撃で倒していく。
 無論、光条兵器使いは契約者達にも近距離、遠距離から攻撃を加えていく。
 ジュリオ対処に集中する彼らの体を傷つけ、体力を奪っていく。
「やっぱり倒すしかない、のか……」
 悔しげにサイモンは言い、拳を握り締めた。
 また1人、光条兵器使いが、こちらに駆け寄ってくる。
 弓型の光条兵器を取り出す。
「大丈夫ですか……っ!」
 別の方向から、銃弾が飛び、その光条兵器使いが倒れた。
 銃を撃ちながら階段を駆け下りて来たのは影野 陽太(かげの・ようた)だった。
「苦戦しているようだね。間に合ってよかった」
「気をつけて、上からも来る!」
 クリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)クリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)も階段から駆け下りる。
 クリスティーはエンデュアで自分の魔法防御力を上げ、ディフェンスシフトで皆を守りつつ階段と廊下から迫る光条兵器使いの前に立つ。
「通さないよ!」
 後方からの遠距離攻撃により、軽く背を傷つけられるも、退くことはなく前から迫る敵にランスを繰り出し、倒していく。
「皆さん、回復を……!」
 陽太はセルフモニタリングで自分を落ちつかせ、勇気を振り絞って、弾幕援護で皆を援護する。
「助かりました。形勢逆転です」
 エメは再び、ブライトグラディウスをジュリオに繰り出す。
 ジュリオの脇腹に直撃し、彼の体から赤い血が流れる。しかし直ぐに、彼は自身の魔法で傷を癒す。
 光条兵器使いと戦いながらの戦闘では、やはり手加減のできる相手ではない。
「騎士殿が眠りに付いて5000年経ってるって知ってた?」
 クフストファーが盾を構えて皆の前に出る。
「5000年……」
「騎士殿はそんなに強いのに、鏖殺寺院には手が出なかったんだ?」
「鏖殺寺院は我等の作り主!」
 ジュリオの返答に、クリストファーが眉を寄せる。
「混乱しているようです。妙な記憶を埋め込まれているような……」
 真紀が蒼のヒールを受けながら、説明する。
「ところで契約者って知ってる? 契約者になれば強くなれるだろうに、どうして契約してないのかな?」
 ジュリオの剣の一撃を盾で受け――体にも傷を負いながらも、クリストファーは嘲笑気味に問いかけていく。
「我のパートナーはすでにおらん! 我を欲するのなら我を屈服させてみよ!」
 過去にパートナーがいたかのような答えだった。
 ジュリオの剣がクリストファーの顔を大きく斬った。
「隙を作ります」
 防衛計画の知識で、戦況を見極めた陽太は冷線銃でジュリオの足を狙った。
「大人しくしていて下さい」
「ごめん……っ!」
 動きの鈍ったジュリオに、真紀とサイモンが左右からドラゴンアーツを放ち、ダメージを与える。
 更に、エメが槍を繰り出して今度は腹を貫いた。
 ジュリオが護る為に己の身を挺した経緯に、非常に敬意を持っている。
 そんな彼が、護りたいと願った者達を、自らの手にかける様な事をさせては絶対にならない、から。
 ジュリオは目を見開いて口から血を吐く。
 エメは意識を失う彼の体を支えて引き摺り、どこか隠れられる場所がないかと探す。
「ここ多分用具入れ、入ろう!」
 サイモンが見つけた小さな部屋にエメと真紀がジュリオを引き摺り込む。その後にサイモンも続いた。
「ここは護らせてもらうよ」
 クリスティーが扉の前に立ち、女王のカイトシールドを構える。
「俺も壁になろう。陽太くんは後ろに」
「ありがとうございます。近づけさせません……」
 クリストファーがクリスティーの隣に立つ。陽太は2人に護られながら、銃で光条兵器使いを狙撃していく。

 どこからか湧いてくるかのように、光条兵器使い達が現れ、輪廻と白矢に襲い掛かろうとする。
 前方の敵に阻まれ、倒している間に、後方の敵に追いつかれる。
「走り抜けてくれ」
 輪廻はそう言い、怪我を覚悟で白矢を走らせ、その背に乗ったまま、光条兵器とトミーガンで敵を撃ち倒していく。
「先を急がせてもらうでござるよ」
 倒れた敵を飛び越えて白矢は先を急ぐ。正面扉の先に補佐班の姿はない。
 無我夢中で走り。
 走って走って、うろついている光条兵器を振り切って、全速力で2人は別邸へと走りこんだ。
「攻略隊の一部のメンバーがジュリオ・ルリマーレンと交戦中です、救援お願いします!」
 自分達を迎えるために、別邸の外に出ていた補佐班のメンバーと合流してすぐ、輪廻は班長のティリア・イリアーノに封印の石を預けた。
「大丈夫、向っているわ。通信機でも連絡を入れておくから、あなた達は怪我の治療を!」
「いや、案内として俺も援護に戻ります」
 そう言った輪廻だが、突如ぐらりと視界が揺れ、壁に手をついた。
 気付けば、体中が酷く痛む。
 2人とも、服を真っ赤に染めていた。
「こちらの部屋に来て下さい」
 意識を失う寸前。百合園生達に、2人は強引に治療部屋に引っ張り込まれたのだった。