イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

嘆きの邂逅(最終回/全6回)

リアクション公開中!

嘆きの邂逅(最終回/全6回)
嘆きの邂逅(最終回/全6回) 嘆きの邂逅(最終回/全6回)

リアクション


〇     〇     〇


 ヴァイシャリー家敷地内の外れ。
 離宮が浮上しても被害を受けないと思われる場所へ、ラズィーヤやミクルの移動も済んでいた。
 その部屋に、ファビオから封印を解く力を預けられたアユナと、ルリマーレン家の息女、ミルミ・ルリマーレン(みるみ・るりまーれん)も呼ばれていた。
 彼女達の友人も一緒だ。
「わかりました、そのジュなんとかってミルミちゃん家を騙る鳥人間を抹殺すればいいんですねっ☆」
 説明を受けたミルミの友人牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)はそう微笑んだ。
「イエス、マイロード。そのジュリオとやらわたくしの魔力で消し炭にして差し上げますわっ!」
 パートナーのナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)はやる気満々だ。
「いやいや、アル殿……それは……」
「……お前等、白百合団団長に続き。天下のヴァイシャリー家だぞここは」
 ランゴバルト・レーム(らんごばると・れーむ)シーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)は、慌てたり、頭を抱えたりしている。
 説明をしていたラズィーヤはくすりと笑みを浮かべる。
「抹殺より、封印解除を優先して欲しいですわ☆」
 ラズィーヤも言葉に冗談を含ませる。
 部屋には彼女達の他に、医師や看護士の姿もあった。医療態勢が整えられている。
「あのあのね、ミルミ封印なんて解けない、です。無理だよ!?」
 ミルミはいつものようにアルコリアにぎゅっと抱きしめられているけれど、その顔は凄く不安そうで、封印解除を行う気はなさそうだった。
「鈴子ちゃんが一緒じゃないと……戻ってきてからじゃないとっ」
「まだ封印の玉が手に入るかどうかも分かりませんから、落ち着いてお待ち下さいませ」
 ラズィーヤはそう言って、ミルミ達をソファーに座らせたまま、執事を伴ってミクルの方へと歩いた。
「大丈夫?」
 体を起こしたミクルを気遣ったのはアユナだった。
「随分調子がいいんだ。多分、僕が解くことできるよ」
 そうミクルは言った。
「でも、アユナの方が元気だから」
 アユナは友人の稲場 繭(いなば・まゆ)エミリア・レンコート(えみりあ・れんこーと)に目を向ける。
 繭はこくりと頷き、エミリアはいつものように笑顔を浮かべている。
「ありがとう。でも、少しだけ手伝わせて。お互い、無理しないように」
 ミクルがそう言うと、アユナは首を強く立てに振った。
「あなたに何かあると、ファビオ様も苦しむから……ほんの少しだけ、ほんのちょっとだけ力を貸してね。1人じゃ、やっぱり怖い、し」
 不安気な目で見上げるアユナに、繭が優しく真剣な目を向ける。
「……大丈夫です、アユナさん。私が、みんながついてます」
「繭ちゃん……っ」
 再び、頷いて。
 執事からファビオの封印の玉を渡されると、アユナは両手で包み込み――その手に、ミクルが手を重ねた。
「手に意識を集中させて、合図と共に一気に体中の力を注ぎ込んでください」
 2人が頷くと、執事はカウントダウンを始める。
 そして、合図と共に、2人は力を封印の玉へと放出する。
 パン……と、玉は粉々に砕け散り、空気に溶けるように消えていく。

 その後、アユナは意識を失ってしまった。
 直ぐに回復魔法や薬で治療が行われる。
 医者の診察によると、命に別状はないとのことだった。
「アユナさん、お疲れ様です……」
 繭はアユナの傍らで、そっと息をついて彼女の手を握ってあげていた。
 封印を解いたら、ファビオの命が危ないかもしれない……その話は、繭の耳にも入っていた。
 だけれど、繭はアユナに話さなかった。そして、皆にも口止めしてある。
「大丈夫、僕が大丈夫だから」
 疲れた顔をしていたけれど、ミクルは意識を保っていた。
 ファビオに影響が出ないようにと、彼も横になって医師の治療を受けていく。

 封印解除の様子を見たミルミは、怯えながら挙動不審に首を振る。
「ミルミにはやっぱり無理だと思う。鈴子ちゃんに協力する形で大丈夫だよね? ね?」
「……確かに、ジュリオ・ルリマーレンが持っていた力を発揮できていないミルミさんには無理かもしれませんわ。でも、鈴子さんにはかなりキツイ作業となりますわよ」
 ラズィーヤの言葉に、ミルミは泣き出しそうになる。
「どうすればいいのかな……」
 これは、訓練を避けてきた結果だ。
「うふふふ、いいこいいこー」
 アルコリアがミルミを横から抱きしめて、頬を摺り寄せた。
 封印を解除する際のミルミの負担は変わってあげられないけれど……ミルミが危険な場所に行かなければならない場合には、全力を持って、ミルミを助けるつもりだった。
「まあ、真っ当に、仕事をしに来ている様に見えるし……とりあえず、良しとするか」
 シーマは息をついて皆を見守っていく。
「行かずにすめばよいのじゃがの」
 ランゴバルトはそう言って、本を開いて読書を始めることにする。
「直ぐに抹殺に向わないのですか?」
 ナコトは変わらず殺る気満々だった。
「ええと、状況分かってる?」
 シーマの問いに、真面目な顔でナコトは首を縦に振る。
「把握していますわよ? ただ、ジュリオが居なければミルミは生まれていなかったわけで」
 とはいえ、ジュリオを倒しても、ミルミは消えないし、アルコリアがミルミを可愛がることを止めることもないのだろうけれど……。
「ジュリオ・ルリマーレンの封印は解かずにおく可能性が高まってきました」
 パソコンで状況整理を行っていたエミールがそう説明をする。
「いい話を聞きましたねー。ミルミちゃん、ぎゅむーっ」
 アルコリアはミルミを撫でてぎゅっと抱きしめる。
「行きたくないよ……。皆頑張ってるのに、ミルミってどうして……はう〜」
 ミルミは強い抱擁に安心感を覚えて、アルコリアに身を任せ目を瞑った。