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ゴチメイ隊が行く4 ひょっこり・ぷっかり

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ゴチメイ隊が行く4 ひょっこり・ぷっかり

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「なんで誰もいないのだろうか」
 コンピュータ実習室に迷い込んだリリ・スノーウォーカーは、周囲を見回してぼやいた。
「とりあえず、この中身を見てみることが先決なのだな」
 空いているコンピュータを起動させると、リリ・スノーウォーカーは青いデータカードをスロットに差し入れた。
「とにかく中身を調べないと……」
 リリ・スノーウォーカーは、表示されたファイルを開いていった。
「ここに、機械に詳しい人はおらへんかあ」
 そこへやってきた大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)が、教室の中に呼びかけた。
「いや。リリ以外は誰もおらぬのだよ」
 マウスを操作しながら、リリ・スノーウォーカーが答えた。
「ここは、単なる実習室のようですね。せっかくフランツさんがやっつけたメカ小ババ様の破片を手に入れたというのに」
 ハンカチにつつんだメカ小ババ様の破片を持ったレイチェル・ロートランド(れいちぇる・ろーとらんと)が、残念そうに言った。パーツに刻印された製品番号とか、材質その物を調べれば何かの手がかりになる。
「ここには、不審な者はいないようですね。数を減らせば脅威は減るでしょうから」
 周囲を警戒しながら、フランツ・シューベルト(ふらんつ・しゅーべると)が入ってくる。
「それもそうですが、仕組みが解析できれば、こちらからコントロールすることも可能かもしれません。そうなれば、根本的に脅威でなくなるかと」
 レイチェル・ロートランドが、ひとまず手に入れた破片を机の上においた。
「ハッキングなんて許せんやからな」
 大久保泰輔がうなずく。とはいえ、専門家がいないのでは、調べてもらえようがない。
「ハッキングに関しては、ホストのブロッキングを強化するしかとりあえずの方法はないのだよ。それに関しては、無知な一般人では逆にトラップに引っかかったりするのでな、気をつけないと……。ところで、そこのそなたはここで何をしているのだ?」
 讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)が、こちらを半ば無視してコンピュータをいじくっているリリ・スノーウォーカーを見咎めて声をかけた。
「こちらも、メカ小ババ様の解析に忙しいのだよ。運よく、データカードを手に入れられたのでな」
 モニタから顔を上げずにリリ・スノーウォーカーが答えた。
「へえ、それで解析しとるんか。詳しいんやのう」
 大久保泰輔が感心する。
「たが、さっぱりなのでな。もし分かるなら、助言してくれると助かるのであるが」
 リリ・スノーウォーカーが答えた。
 どれどれと、大久保泰輔たちが集まってくる。
「何か、ちかちかと動いていますが?」
「データの送受信をしているみたいですね」
 眼鏡の位置をなおしながら画面を見つめるフランツ・シューベルトに、レイチェル・ロートランドが説明した。
「ちょっと待ってくれないか、このマシン、オンラインだったりしてないであろうな?」
 嫌な予感がして、讃岐院顕仁がリリ・スノーウォーカーに訊ねた。
「もちろん繋がっている。でなければ、解析などできよう……」
 その言葉が終わらないうちに、讃岐院顕仁がリリ・スノーウォーカーが操作していたコンピュータのLANケーブルを引き千切った。
「何をするのだ!」
 さすがに、リリ・スノーウォーカーが怒鳴る。
「得体の知れないプログラムを調べるときは、孤立したコンピュータでやるのが常識であろう!」
 讃岐院顕仁が叫んだとき、突然コンピュータのスロットから煙が吹き出した。
「データカードが……」
 唖然とする一同の前で、役目を終えたデータカードが灰になる。
「ブービートラップでしょうか」
「これは、やられたかもしれへんな」
 レイチェル・ロートランドの言葉に、大久保泰輔が苦々しげに答える。
「ボクが倒したメカ小ババ様はすべてデータカードなど残っていませんでしたから、君の倒したメカ小ババ様だけデータカードが残っていたというのは不自然でしたね」
 やれやれというふうに、フランツ・シューベルトが言う。
「とにかく、ここのコンピュータを至急ウイルスチェックしましょう。LANケーブルはすべて抜いて、外部と遮断してください」
 大久保泰輔の指示で、リリ・スノーウォーカーを含めた全員であわてて対処を始める。
 メモリカードに仕掛けられていたトラップが、中のデータを敵に転送する物であれば、すでに蒼空学園のデータは敵の手に渡っているので意味はないが、もし、何らかのウイルスを感染させる物だとしたら取り返しのつかなことになっているかもしれなかった。
 
    ★    ★    ★
 
「いたいた!」
 ひよこの着ぐるみを着たメカ小ババ様を見つけた毒島大佐が、さっきラルク・クローディスから手渡された携帯ジャマーのスイッチを入れた。本来は、コンサート会場などで携帯電話を使えなくする機械だが、メカ小ババ様が携帯電話と同じ周波数帯でコントロールされたりデータ通信を行っていたりするのであれば有効なはずだった。
 キランと、メカ小ババ様が立ち止まって目を輝かせた。
 それが合図でもあったかのように、キャンパスのあちこちに潜んでいたメカ小ババ様たちの目が輝く。
「逃がすかあ!」
 八つ当たりのパワーを込めて、毒島大佐がメカ小ババ様を破壊した。そのとたん、他のメカ小ババ様たちが連鎖して、一斉に自爆する。
「何、これ。今のが親玉だったのか?」
 きょとんとして、毒島大佐はその場に立ちすくんだ。
 
    ★    ★    ★
 
「やあ、お帰りなさい」
 喫茶店でのんびりとフルーツパフェを食べていたアクアマリンは、戻ってきたタヌキの着ぐるみを着たメカ小ババ様の頭をなでて言った。
「ゴパ。べー……」
 メカ小ババ様が、空京大学から収拾してきたデータの詰まった赤いカードを吐き出した。
「どれどれ……」
 持っていたモバイルパソコンにデータカードを差し込むと、アクアマリンが首尾を確認する。
 そこには、空京の詳細なサイトマップがハッキングされていた。
 これを見れば、空京の情報伝達路は一目瞭然だ。
 サイバーテロを仕掛けようと思えば、どのプロバイダサーバーを潰せばどこの情報網をストップさせられるのかが明確に分かる。
「さすがに、若い人たちも馬鹿じゃないですね。ジャミングしてきましたか。でも、赤外線通信にまでは考えが至らなかったようですね。こんなこともあろうかと、ボクのメカ小ババ様は予備回路やプログラムがてんこ盛りなんですから。おや、トラップにかかった人もいましたか。よかったあ、手間が省けました」
 ダミーのデータカードに仕掛けておいたトロイの木馬が空京大学のルーターに感染したことを示す記録を見つけて、アクアマリンはほくそ笑んだ。
「これで、空京大学のルーターを経由したすべてのサーバーにトロイの木馬が広まりますね。よかったよかった。どのみち、発動は一回きりですから、事前に発見されることもないでしょう」
 単純なトロイの木馬なので、普通に考えればセキュリティソフトに発見されそうなものだ。だが、被害がでていなければ、そのファイルがウイルスかどうかは判別しにくい。
「どちらにしろ、空京はソフト的にも物理的にもおしまいです」
 無邪気な笑顔で、アクアマリンはつぶやいた。