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冥界急行ナラカエクスプレス(第3回/全3回)

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冥界急行ナラカエクスプレス(第3回/全3回)
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第1章 チャンドラマハルの死闘【突入編】(3)



「ここがふんばりどころだ……、アストレイア!」
「御意。主よ、共に道を切り開きましょうぞ……!」
 魔鎧アストレイア・ロストチャイルド(あすとれいあ・ろすとちゃいるど)は白銀のロングコートと化し主を守る。
 主たる御剣紫音は2丁の曙光銃エルドリッジを構え、一団の前面に躍り出た。
 前方には見晴台、根元で道は枝分かれしているようだが……、その前にズラリと死人戦士が立ち並んでいる。
「行くぞ……、風花、アルス!」
 放った殺気看破にあらゆる方向から殺意が返る。
「俺も随分人気者になったもんだな……」
 銃舞で迫る攻撃をかわし、死人戦士を迎え討つ。
 しかし、光線はわずかに狙いが逸れた。傷の所為もあるが、2丁拳銃の扱いに不慣れなのも大きい。
 まるで内蔵を鷲掴まれたような激痛。
「主……?」
「心配すんな、アストレイア。これぐらいの傷で……!」
 食いしばる彼の目に、見晴台の上にいる弓兵の姿が飛び込んだ。
「しまっ……」
 刹那、彼を目がけて飛来した矢は空中で止まった。
「相手が奈落人じゃないからと言って油断しとったらいかんどすぇ」
 パートナーの綾小路 風花(あやのこうじ・ふうか)が手をかざし、サイコキネシスで矢を空中に縫い付けている。
 すかさずもう一人のパートナー、アルス・ノトリア(あるす・のとりあ)が天に魔力を集中。
 ゴロゴロと雷鳴轟く雲間から、一筋の光線を描いて天のいかづちを見晴台に落とす。
 バリバリと空間を斬り裂く轟音。白くそびえ立つ見晴台は半壊し、上からポロポロと弓兵達が落下してくる。
「お、おまえら……」
 窮地を救われた紫音はきょとんとして相棒達を見る。
「主よ、そう無理をするものではないぞ。貴公には我らや仲間がついておるのじゃからな」
「仲間……」
 アルスの言葉を反芻していると、頭上を幾つもの影が通り抜けていった。
 飛んでいったのは死人戦士達だ。左側の通路を守っていた連中のようだが、武器や鎧を打ち砕かれブクブクと蟹のように泡を吹いている。何か鈍器のようなものでしこたま殴られたらしく、大きなたんこぶがとても痛々しい。
「私たち急いでるんですぅ〜! お願いだからどいてくださ〜い!」
 見れば、メイベル・ポーターがジェットハンマーで敵をバッタバッタと薙ぎ倒している。
 近付く死人戦士を蹴散らし道を切り開く姿は、清楚な外見とかけ離れ過ぎて目を疑いたくなるほどだ。
「はぁ、はぁ……、ようやく道が開けましたぁ。さあ、早く。時間がありません」
「ま、待て!」
 右の通路を守っていた死人戦士が慌てて襲いかかる。
 空を滑るクロガネの刃をひょいと越え、メイベルはハンマーのジェットを噴射させた。
「えーいですぅ!」
 使い手の身体ごと持っていく推進力で顔面にスタンプ。
「ぶおっ!!」
 ドッスンと巨体が地べたに大の字を作った。
 続いて、パートナーのセシリア・ライト(せしりあ・らいと)も大暴れを繰り広げる。
「いっくぞーっ! みんな吹っ飛んじゃえー!」
 こちらもジェットハンマーを手に、噴射される速力でくるくるとコマのようにフルスイング。
 まるでタイフーンかハリケーンか、暴発する暴虐な暴力、カトリーナに並ぶ勢いで場を蹂躙していく。
「うわああああ!」
「ひえええええ!!」
「こ、こっち来るな………どぅえーいいいいい!!」
 必殺のセシリアスピンに弾かれ、戦士は次々に星になった。
 更にフィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)も前線に出る。
 追いすがる死人戦士の前に立ちはだかり、ヒロイックアサルト『ガーターの誓い』を発動させる。女性を守る戦いにおいては通常の数倍の力を発揮すると言う秘技。この場合は環菜のために……と言ったところだろうか。
「ここから先には一歩も通しません……!」
 聖剣エクスカリバーの切っ先を戦士に突きつけると、さしもの彼らも気迫に押されてうむむ……と唸った。
「……今ですわ、ステラ様。見晴台に射撃をお願いいたします」
「了解です」
 機を窺っていたステラ・クリフトン(すてら・くりふとん)が機晶キャノンを放つ。
 半壊した見晴台をエネルギー弾が直撃、全壊した塔は雪崩を起こし、足下でまごまごする死人戦士を飲み込んだ。
 とは言え、この程度で引っ込むような敵ではないだろう。
「きっとすぐに這い出してきますぅ〜。ここは私たちが押さえておきますから〜、皆さんは早く〜」
 メイベルの言葉に、傷付いた紫音も気力を振り絞る。
「……メイベルの言う通りだ。ここは俺たちが引き受けた。早く行けよ、王子様はお姫様を救うことだけを考えてろ」
「……すまない!」
 救出隊の一行は礼を言うと、本殿を目指して通路を駆けていった。
「さて、こっからが俺たちの戦いだな、メイベル……!」
「そうですねぇ、紫音さん。でも、傷が酷かったら無理はしないでくださいよ〜?」
「悪いがそいつは聞けない。ここで無理しなくちゃ、背中を任せてくれたあいつらに顔向け出来ないからな……!」
 瓦礫が崩れ、ゆっくりと冥界の戦士が起き上がる。
 この道は未来に続く道、この道を守ることこそ、彼らに出来る最大の戦いなのだ。