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まほろば大奥譚 第四回/全四回(最終回)

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まほろば大奥譚 第四回/全四回(最終回)

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第三章 龍騎士シオメンの襲撃5

「よう、あんた。将軍の血を引く子を探してんだってな。俺も手伝ってやろうか?」
 蒼空学園トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)が、気さくな感じで声をかける。
「あ、俺は……日数谷と一緒にいたんだ。奴と一緒に戦ったりな。俺は、別に怪しいもんじゃないぜ」
「仮面をつけたままの人間が、そういうときは大抵怪しいものだよ」
 シオメンはそういいながらも大寺院への攻撃を続けている。
 持っていた槍をトライブの顔に突きつけた。
「目的を言え。場合によっては、この場で首が飛ぶぞ」
「……は。んなわけ、ねえって」
 トライブは大人しく身を引くふりをして、身を翻した。
 持っていたしびれ粉をシオメンにめがけて投げつける。
 龍騎士は一瞬ひるみ、目を閉じた。
「……む!」
「ハハハ、悪いな! アンタは将来の瑞穂藩の為にならない。命を張って明日のマホロバを作ろうとしている連中に、横から割り込むんじねぇよ!」
「貴様……!」
 シオメンは目を閉じたまま、槍を振るう。
 トライブが地面にたたきつけられた。
「あらやだ、強いじゃないの。ドキドキしやがるわあ!」
 強化人間王城 綾瀬(おうじょう・あやせ)が様子を伺っていた。
 彼女は幻影を作り出し、龍騎士をかく乱する。
「名高いエリュシオン龍騎士にドコまでやれるのか……まあ、命の奪い合いを楽しむとしましょうか!」
 トライブを援護しながら、綾瀬が仕掛ける。
 龍騎士は難なく、それを受け止めていた。
「下層が! だから、帝国龍騎士には勝てんというのだ」
「それでしたら、礼は尽くさせていただきます。お初にお目にかかりまして、私は……アノニマスと名乗りましょうか」
 アルコリアはスカートの端をつまみ、恭しくお辞儀をした。
 続いて魔鎧ラズンが、暗い表情のまま、アルコリアに纏われた。
「私は……魔鎧ジェーン・ドゥ。殺し殺されて、終わりない苦痛を望むもの……遊ぼうよ。キャハハ!」
「ふふ、神ですって。さぞかし重い魂でしょうね。マイロードへの供物にして差し上げますわ。果てるがいいですわ!」
 魔道書のナコトが魔法を唱えている。
 シオメンはしびれ粉から立ち直ると、彼女たちに向かって槍を乱れついた。
「ちゃんと挨拶をしてるのに、その態度はなかろう!」
 機晶姫シーマが、防御支援を行っていく。
 彼女たちの防御がさらに強化された。
 アルコリアは不敵な笑みを浮かべていた。
「龍騎士様とこうして対峙出来るなんて、ああ、嬉しい。他の方では、最近もの足りなくって。でも神ですものねえ? お強いのよねえ?」
「なるほど、お前たちはそれほど神に、ユグドラシルに興味があるのだな!」
 シオメンは急に顔を輝かした。
「帝国龍騎士がなぜ優れるか、それは規律と統制になる。無駄がなく、洗練されているということだ。ひとつの芸術だ。私は七龍騎士の一人ではない。しかし、龍騎士として、帝国の誇りをかけて戦おう……いざ!」
 シオメンが急降下し、アルコリアに向かって特攻をかける。
 アルコリアは高笑いをあげながら、魔道銃を打ち込んでいた。
 シオメンは銃弾を真正面から受けながら、アルコリアの肩に、えぐりこむように槍を突いた。
 血が吹き、彼女の白い肌や髪を濡らす。
「ああ、楽しい! 楽しい!」
 彼女の叫びに応えるように、シオメンは槍を深く刺す。
 魔鎧ラズンがけらけらと声とかける。
「ねえ? 龍騎士! 殺すの、殺されるの? どっちでも素敵!」
「ふふ……逃さない」
 アルコリアは笑いながら、彼の槍を掴んだ。
「……放せ」
「嫌です……このまま、ひとつとなりましょう? あなたの魂を馳走になりたいわ」
 彼女は槍を掴んだまま、彼の心臓に向けて龍の波動を叩き込んだ。
 シオメンは呻きながら、彼女を抱えたまま上昇し、一気に地面に叩きつけた。
 蛙がつぶれたようなうめき声のあと、シオメンもアルコリアも動かなくなった。
「へ……俺ができることは、瑞穂の連中のために泥かぶってやるくらいのことさ。あいつらには、現示には情のひとつもないわけじゃないからな」
 トライブは倒れたシオメンたちの傍に立ち、横にシーマたちがいる。
 皆、其々の武器を構えていた。
 ゆっくりと、それらがシオメンの頭上に振り下ろされる。



 つかさは、空を見上げていた。
 この空の続く向こうに、将軍が居る。
「貞継様、厄災はひとつ去りました。どうぞ無事に、早くお戻りくださいませ。必ず生きて、この子を、父親の愛情の知らない子にさせないように、どうぞ。お帰りをお待ちしています……」