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第四師団 コンロン出兵篇(第1回)

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第四師団 コンロン出兵篇(第1回)

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 賊どもを前に、語るミューレリア。
「勿論勝算はあるぜ!
 すでに私の仲間が空の滝に向かっている。樹月刀真といって、私と同等以上の実力者だ。
 もしおまえら(雲賊団)に勇気があるなら私と一緒に空の滝へ来い!
 空の滝の魔物を倒し、私の言葉が嘘じゃないことを見せてやる!」
 
 空の滝に流れ着いたが、溢れてくる魔物を避けて一旦その場を退いた樹月ら。ミューレリアは先ほど見たようにヒクーロの雲賊のもとを訪れたのだが、刀真はどうしていただろうか。
 一行は、巨大な空の滝の飛沫に体を濡らしたまま、街明かりの方を目指して行った。明かりはまだ随分遠い。休憩しながら向かう。
 漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)に、刀真がコートをかけてくれる。彼のブラックコートだ。寒いな、と思っていたところだった。
 玉藻 前(たまもの・まえ)はそれを見て、少々面白くない顔をする。確かに少し寒いし、我の着物ではコートを着ることができないので仕方ないのだが……と。ここは別の方法で寒さをしのごうか。玉藻はそう思った。
「刀真」
「?」
 刀真に両膝を立てて座ってもらい、脚の間に背を預ける格好で体を滑りこませる。そして、後ろから刀真に抱きしめてもらう。
 あ〜! 玉ちゃんが刀真に甘えてる!? 月夜はすぐにそれに反応を示す。私はコートをもらったけど……それとこれは別! ……と目で訴えているつもりなのだが。聞いてくれない、仕方ない、だから玉ちゃんに甘える、と月夜は玉藻の尻尾を取り出す。「む〜玉ちゃん尻尾出して!」「こら、我の尾は枕ではないよ……全く仕方のない」
「ふかふか〜、柔らかくて気持ちいいし良い匂いがする」
 刀真はそれにふっと微笑み、ミューレリアも「何だかいいなー」と思うのだった。
 カカオ・カフェイン(かかお・かふぇいん)が走ってくる。少し先の方を見に行ってくれていたのだ。
「にゃぁ。あっちに民家があるにゃ」
「本当か。街に着いたかな」
「ううん。まだ街は先にゃ。小さな村みたいにゃ」
 村は、ヒクーロ郊外の村で、旅人をあたたかく迎えてくれた。
 刀真、ミューレリアを泊めてくれた家の夫婦は、子どもを魔物で亡くした、という。
「何。あの、空の滝の魔物か?」
「ええ。私たちだけじゃないんです。近年は、被害が大きくて……滝に近づく人はいなくなりましたけど、村の近くにまで、魔物が彷徨ってきて……」
 ヒクーロ軍閥の兵も巡回に来て、守ってくれてはいるというが。
 最近は、彼らでさえ、街の上空に現れる空の魔物に困り果てているという。
 刀真は優しくしてくれた村の人たちに対し、このままでいいのだろうかという思いが起こった。こんな中、戦争になるかもしれない空気も漂っている。ヒクーロやクィクモらいがみ合う軍閥。教導団はクィクモに、もう到着しているだろうが、クィクモとヒクーロはこれまでに争ったことがあり今でも仲が良くない。
「シェルダメルダ……俺はどうすればいいでしょうね。戦争になれば、こういう人一人一人のことは、教導団は考えないのかもしれない。でもあなたはもともと、民の側についてきた湖賊だった。
 でも、今、俺たちが、ヒクーロで活動することで、シェルダメルダの力になれるかもしれない。ヒクーロを助けることになれば。それで、民も助けられるなら」
 このあと、ミューレリアは、更に街を探りに行ったカカオの情報で、さきの戦いで雲海に屯した雲賊がヒクーロに関わっているらしいことを聞き、彼らの力を利用できないかと向かったのであった。
 刀真は再び、空の滝へ向かった。
 とめどなく、溢れてくる魔物の群れを、斬る。
「刀真、後ろ!」
 月夜が撃ち、近くで前に立ち戦う玉藻が気遣う。
「大丈夫か?」
「はぁ、はぁ。ええ、まだまだ」
 しかし、斬りつつ、思ってもいた。このとめどなさを断ち切るには、その根元を断ち切らねば。話が通じる相手ではない。魔物の頭か、あるいは操っている者でもいるのか、そうでなければそもそもどこから流れ出してくるのか。魔物を噴き出しながら空に流れ出す滝の音が、耳に響き続けている。